トヨタ、スズキが新技術対応で提携へ-首脳会談翌週にスピード発表

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自動車業界で環境対応車や自動運転、情報通信をめぐる技術変革が急速に進む中、トヨタ自動車は新たなパートナーとして、スズキと業務提携に向けた検討を開始する。両社経営トップが会談した翌週のスピード発表となった。

  「将来が危ういことを理解していた」-。スズキの鈴木修会長は12日の発表会見の冒頭、提携交渉に至る過程について述べた。9月にトヨタの豊田章一郎名誉会長に思いを打ち明けたところ、トヨタと協議してみても良いのではないかと勧められ、先週、豊田章男社長に会ったと話した。

トヨタ社長とスズキ会長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  トヨタの豊田章男社長も、技術競争がこれまでにないスピードで進んでいるとの認識を示した上で、「生き抜くために必要なのは変化に対応する力だ」とし、スズキに学ぶ点が多いと考えていると語った。水素社会やロボティクスなどへの取り組みについても「1社では限界。他社との連携が重要な要素」と述べ、「将来を見据えて取り組みを進める」と話した。

  両社は発表資料で、環境や安全、情報技術などの業務提携に向けた検討を開始するとした。資本提携の可能性など具体的な内容について、両社経営トップは、先週会談を始めたばかりで、これから検討すると述べるにとどめた。

  三菱UFJモルガンスタンレー証券の杉本浩一アナリストは、スズキにとってトヨタのように幅広い先進技術を深掘りする国内企業は理想的な提携相手と指摘する一方、提携内容が固まったわけでなく当面の業績への効果は限定的との見方を示した。野村証券の桾本将隆アナリストは、両社の中期成長にポジティブな印象とコメントした。

独禁法も踏まえ提携検討

  スズキは国内の軽自動車市場で、トヨタが完全子会社化したダイハツ工業と競合関係にある。今年1ー9月の軽自動車市場の占有率は首位のダイハツが33.5%、次いでスズキが30.5%となっており、激しい首位争いを展開してきた。国内では軽自動車が市場の約4割を占めている。

  トヨタは今夏にダイハツを完全子会社とし、2017年1月をめどに新興国小型車カンパニーを設置する。新興国小型車カンパニーは両社にまたがるもので、開発・調達・生産準備は基本的にダイハツへ一本化する。

  トヨタの豊田社長は、スズキとの提携について「法規制を踏まえながら検討する」と述べ、独占禁止法の観点も踏まえ対応していく考えを示した。一方、スズキの鈴木会長は「独立した企業として経営していく覚悟に変わりない」と話した。

インド市場

  今後も着実な成長が見込まれ、スズキが圧倒的な強さを持つインド市場について、トヨタの豊田社長は「誰よりも早くインドに出て、汗をかいてチャレンジをしてきたスズキに敬意を持っている」と述べた上で、「インドでスズキを活用するという考えは、スズキに対して失礼だと思っている」と語った。

  スズキは現地子会社マルチ・スズキ・インディアを通じて乗用車の生産や販売ネットワークを拡大しており、現地シェアは約4割に上る。一方、トヨタは小型専用車「エティオス」などを投入しててこ入れを図ってきたが、15年のシェアは4%程度にとどまっている。

  スズキは長年にわたり提携関係にあった米ゼネラル・モーターズ(GM)と資本関係を解消後、09年12月に独フォルクスワーゲン(VW)との包括提携を発表。しかし、期待した成果が得られなかったことから、国際仲裁裁判所での手続きを経て15年に提携を解消していた。

  トヨタは今期(17年3月期)の研究開発費で1兆700億円を計画し、スズキの約7.6倍の規模となっている。IHSオートモーティブの川野義昭アナリストは、中堅以下の自動車メーカーは既存のエンジン技術だけでなく自動運転技術などへの対応で中長期的な競争環境が厳しいと感じていると指摘。その上で、将来へ向け大手自動車メーカーと提携を進めるとみられるとコメントした。

  国内自動車業界では、燃費不正問題で販売が低迷する三菱自動車に対して、仏ルノーと提携する日産自動車が議決権比率で34%を取得する方向で資本・業務提携を進めている。ホンダは燃料電池車(FCV)が20年代に本格普及期を迎えるのを視野に、GMと次世代燃料電池システムの共同開発で合意マツダは昨年5月、トヨタと業務提携に向けて基本合意している。

  提携検討開始の発表を受けた13日のスズキ株は一時、前日比5%高の3605円となり、8月4日以来の日中上昇率となった。トヨタ株は一時、同1.3%高の6037円まで上昇した。

(第5段落にアナリストコメント、最終段落に株価情報を追加しました.)
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