トランプ氏、不動産債務免除が個人税控除に化けたのか-税専門家

  • 950億円もの損失が発生した謎、税務専門家が解明を試みる
  • 不動産投資に許された優遇税制、米議会が廃止する前に活用か

米大統領選挙の共和党候補、ドナルド・トランプ氏がニューヨーク州に提出したとされる1995年の税務書類が出現したことをきっかけに、同氏のビジネスをめぐって新たな謎が渦巻いている。経営難に陥った同氏の事業は債権者に回収不能の不良債権を抱えさせたが、トランプ氏個人には9億1600万ドル(約943億円)の損失となった。どうすればそんなことが可能なのだろうか。

  税務の専門家や学者がはじき出した答えはこうだ;不動産投資で苦しむ投資家は当時、未払いの債務を個人の税控除に変身させることが許されていた。トランプ氏はこの戦略を活用した可能性がある。

  問題があるとして議論を呼んだこの戦略は、2002年に議会で廃止が決まった。まだこの戦略が使えた1995年、トランプ氏は税務書類に記された損失の90%以上にこれを適用した可能性があると、税務の専門家3人は分析している。トランプ氏が個人的に保証した債務8億ドル超を、銀行団は1990年代初期に免除している。

  シカゴの会計事務所、ベーカー&マッケンジーで不動産取引に関連した税務を専門とするリチャード・リプトン弁護士は、「1995年の申告書の1ページ分しか目にしていないが、それでも何が起きたのかだいたい分かったと思う」と話した。リプトン氏の分析に、他の税務弁護士2人も同意したが、政治的に慎重さを要する話題だという理由で名前を伏せた。

債務免除は通常、課税可能な所得として扱われる

  通常では納税者は債務免除を受けた場合、それを課税可能な所得として扱わなくてはならない。つまり債権者から資金を与えられたと同等の扱いになる。しかし今は廃止されたルールに基づくと、問題を抱えた投資家は免除された債務に対する課税を逃れるだけでなく、それを損失として扱い税負担をさらに減らすことが認めらるケースがかつてはあった。

  トランプ氏がこの手法を用いたかどうかは、1995年やその他の年の連邦税申告書など、さらなる情報がない限り、確実なことは言えない。トランプ氏陣営にこの記事についてのコメントを求めたが、返信はない。

  トランプ氏は税法を「巧妙に」活用して、1990年代初期の経営的な困難を抜け出したと自負する。同氏はまた、米国の税法を知り尽くしている自分こそ税制改革に適した人材だと主張している。

  「税法の不公正さは信じられないほどだ」とトランプ氏は先週、コロラド州での遊説で語った。「ずっと前から言い続けていることだ。率直にいって私はこの法律のお陰でずいぶんと得をしたのだが、今はあなたたちのために働いているのだ」と述べた。

「税法を知り尽くしている」と豪語

  トランプ氏が税法を知り尽くしているかどうかについて、かつて同氏を担当した税務弁護士で公認会計士のジャック・ミトニック氏は異論を唱える。今は引退している同氏はCNNのインタビューで、1995年の納税申告書の作成におけるトランプ氏の関与は「まったくのゼロ」だと話した。トランプ氏が税法を深く理解していることが見て取れたことがあったかとの質問に対し、ミトニック氏は「それは私とのやりとりではなかった」と答えた。

   南カリフォルニア大学(ロサンゼルス)法学部のエドワード・クラインバード教授によると、トランプ氏が具体的に使った手法はまだ明確ではない。「他人のお金を大量になくしておきながら、それを自分の税金資産に化けさせた男だ」と、かつて米議会の上下合同税制委員会のチーフオブスタッフを務めた同教授は話す。どのようにやってのけたか知る方法はただ一つ、「トランプ氏が納税申告書を公開するしかない」と述べた。

原題:Trump’s Tax Strategy Seen Turning Unpaid Debt Into Benefit(抜粋)

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