日本銀行の黒田東彦総裁はブルームバーグテレビのインタビューで、日本経済の成長が来年は加速する見込みであっても、2%程度の物価目標達成時期の見通しは18年にずれ込む可能性があると、従来よりはっきりしたシグナルを発した。

  20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など国際会議出席のため米ワシントンを訪れた黒田総裁が8日、英語によるインタビューの収録に応じた。黒田総裁は「インフレが加速するには従来期待していたよりもう少し月数がかかるかもしれない」と指摘、「見通しを検証する前にあらゆる関連統計を注意深く精査する必要がある。変更するかもしれないし、変更しないかもしれない」と述べた。

黒田東彦総裁
黒田東彦総裁
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

 黒田総裁の任期は2018年4月までのため、現在2017年度中としている物価目標の達成時期がずれ込めば任期中に実現ができなくなる。その場合、黒田総裁が続投するのか、前例のない規模の金融緩和を続ける決意のある後任を選ぶか、という課題が浮上する。

  71歳になる黒田総裁自身は、日銀が金融緩和に長期戦で取り組む姿勢に一切の疑問の余地を残さなかった。物価上昇にさらに圧力を加えるため、中央銀行が消費や融資を刺激すると考えるさらなる措置を取るかもしれないとの姿勢を示している。
 
  黒田総裁は「2%の物価上昇を達成するため、今後何カ月も何年にもわたってわれわれの金融政策を続け、あるいは強化さえするつもりがある」と述べた。黒田総裁は、外債購入のアイデアには疑問を呈した。またイールドカーブを目標とした新たな政策の一環として、日本国債を売却するかは明言しなかった。

  黒田総裁は、原油価格下落や物価上昇期待の弱さが日本の物価上昇の妨げになったと指摘した。日銀は10月31、11月1の両日開く次回の金融政策決定会合で、経済や物価の新たな見通しをまとめ公表する。

  物価目標達成時期が先送りされれば、黒田総裁が2013年4月に前例のない金融緩和に踏み切って以来5回目となる。それでも黒田総裁は「経済は加速する可能性が高い」と指摘。安倍晋三政権による財政出動もあって、今年1%程度が見込まれる経済成長率は来年は1.5%程度になるとの見通しを示した。

  ワシントンで開かれた国際通貨基金(IMF)や世界銀行の会合では、金融政策の効果が薄れる兆しの中で、世界経済の活性化のため財政出動や改革実行の必要性が各国当局者らからあらためて指摘された。

  黒田総裁は9月の会合で採用した物価上昇へのオーバーシュートコミットメントや長短金利を操作目標とする「ユニーク」なアプローチを強調。日銀は1月には短期金利をマイナスとする予想外の政策を打ち出したが、黒田総裁は金融市場は現在、日銀のプログラムを理解しているようにみえると述べた。

  とはいえ、投資家は10年物国債の金利を目標の0%に維持するため日銀が国債を売却するかどうか気をもんでいる。黒田総裁は、日銀がイールドカーブをコントロールする中で、国債買い入れは増えたり減ったりする可能性あるが、これは「技術的なことだ」と説明。

  政策の意図は資産買い入れを通じてマネタリーベースの拡大を維持することだ述べた。本当の「テーパーリング」は出口戦略の一環であって、それは今考えていることではないとも述べ、「国債購入プログラムをすぐに縮小できるとは思わない」と語った。

利回りの操作

  総裁は、イールドカーブをコントロールする政策の成功を確信しているものの、目標から外れることはあるかもしれないと指摘。「10年債利回りを完全にコントロールできるとは言わない。しかし経験に基づけば、長期金利が0%近くにあるよう、基本的には影響を及ぼし、管理することはできる」と話した。

  総裁は金融緩和強化の手段として、日銀は長短金利をさらに引き下げることができるとあらためて語った。

  黒田総裁はインタビューの後、ブルッキングス研究所のイベントで日銀の信認は物価目標の実現だけに依存するものではないと指摘した。財政出動や構造改革と並ぶアベノミクスの一環である黒田総裁の努力は、日本経済の軌道を変えてきた。

  日本経済はもはや緩やかなデフレが続いているわけではない。金融機関の融資は増えており、失業率は過去20年で最低レベルに近く、強く求められている賃金の上昇を後押するかもしれない。名目成長率のトレンドは1990年代以降で最高だ。

  とはいえ、安倍首相に近い元日銀審議委員は、デフレ圧力が続く中で日銀が9月に決めた量的緩和拡大の変更は後退だと批判した。前内閣官房参与の本田悦朗氏は、日銀の新しいアプローチを評価した上で、次回の会合で追加緩和が必要だとの考えを示した。

  外国為替や株式相場は今年、政策当局者の意図に反して動き、金融緩和の恩恵が損なわれた。円相場は対ドルで年初から約17%上昇。TOPIXは同約13%下落し、2011年以来始めて値下がりする年になりそうだ。

  円相場は経済に影響を与えるため日銀も注視しているが、黒田総裁は政策は為替相場を誘導するために調整されるものではないとあらためて指摘した。外債購入のアイデアについては「日本では外債の売買は為替市場への介入」であって、それは日銀ではなく財務省が決めるものだと語った。為替に影響を与える以外では、そうした買い入れは海外の金利を引き下げるよう働くが、その場合日本にとって「その買い入れの目的は何か」という疑問が生じることになると黒田総裁は述べた。

原文の英語記事はこちらをクリック

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE