米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は、雇用者数の増加を確認した上で利上げに踏み切りたい意向だが、こうした方針に不安を覚える当局者もいる。労働市場が過熱し当局がより急ピッチな利上げを余儀なくされ、米経済を再びリセッション(景気後退)に陥れかねないと懸念しているためだ。

  どちらの見方が正しいかを最終的に決めるのはインフレだろう。複数の指標では物価は上昇している。

  米金融当局が物価圧力の指標として重視するコア個人消費支出(PCE)価格指数は、8月に前年比で1.7%上昇した。当局が目標とする2%を依然下回るものの、過去2年では最高の水準にある。消費者物価指数(CPI)のコア指数は同2.3%上昇で、いずれも緩やかながらはっきりと上昇傾向を示している。

  JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は顧客向けリポートで、「コアPCEインフレの上昇は、雇用とインフレの両方の目標に近づきつつあるという連邦公開市場委員会(FOMC)内の中道派とタカ派の主張を裏付けるだろう」と指摘した。

タカ派のラッカー総裁
タカ派のラッカー総裁
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  クリーブランド連銀の調査責任者エリス・トールマン氏が注目する「ミーディアンCPI」と同中銀の「トリムド・ミーンCPI」という2つの指標はこのトレンドがもっと明瞭だ。トリムド・ミーンCPIでは、歴史的に変動の激しい項目を除くのではなく、物価変動率が最大だった項目を除いて算出したもので、中心的なトレンドに近いものを示すとされる。

  トールマン氏は「インフレが顕在化するとは見ていないものの、中期的にはインフレ率が2%に向かうと見込んでいる」と述べた。

  しかし、失業率が過去6年に急低下し、さらに当局が金利変更を見送っているにもかかわらず、インフレ率の上昇は不可解なほど鈍い。これについてパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のファンドマネジャー、ジェレミー・バネット氏は「金利据え置きという状況にもかかわらず、賃金が実際にはさほど力強く伸びていない」ことが一因だと説明する。

  バネット氏と同僚は賃金動向のシグナルを見極めるためCPIの数値を掘り下げて分析。非製造業に焦点を絞り、賃料や同等物、エネルギーを除いて算出した「コア・サービス(除く住居)」指数は8月に前年比3%強上昇し、労働統計局が発表する平均時給を大幅に上回る結果になったという。

  バネット氏は、物価上昇が賃金よりも速いペースで上昇していることを示すこの証拠がヒントだとみる。企業は生産性が高い時期には賃金を上げるが、現在は生産性が低いため「賃金が期待されるほど伸びていない理由が説明できよう」と同氏は述べた。

  これが事実で生産性が依然として弱ければ、利上げに引き続き辛抱強い姿勢を見せるイエレン議長の判断を支持することになる。

原題:Fed Hawks’ Inflation Scare Depends on Long-Awaited Rise in Wages(抜粋)

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