IMF:世界の景気回復は低調、政治的不協和音が主要なリスク

  • 関税引き上げ合戦なら長期的に世界の成長率低下へ-世界経済見通し
  • 日本とユーロ圏の見通しを引き上げ、米国は大幅下方修正

国際通貨基金(IMF)は4日公表した最新の世界経済見通し(WEO)で、信頼できる成長エンジンを必要としている世界経済の回復が、グローバル化をめぐる政治的緊張の高まりで頓挫しかねないと警告した。

  IMFはWEOで今年の世界経済成長率見通しを3.1%、来年を3.4%とし、7月時点の予測水準に据え置いた。IMFチーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏は、先進国は引き続き「期待外れの低い成長軌道」にとどまる一方、主要新興国はリセッション(景気後退)を脱して安定化しつつあるようだとの認識を示した。

IMFのモーリス・オブストフェルド氏

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg *** Local Caption *** Maurice Obstfeld

  リスクについては政治的不協和音と保護主義の脅威などから引き続き下向きだと指摘。6月の英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択や米大統領選挙のムードは「国境を越えた経済統合の恩恵に関するコンセンサスのほころびを鮮明にしている」と分析した。

  各国は報復的な関税引き上げに踏み切り、まだ脆弱(ぜいじゃく)な景気回復を損なう恐れがある。輸入物価が10%上昇するシナリオでは、世界の生産は長期的に2%近くカットされるとIMFは試算した。

低成長

  WEOでは世界経済が勢いを増すことができずにいるとし、オブストフェルド氏は「世界経済は全般的に横ばい状態にある」とみる。

  オブストフェルド氏は「経済成長はあまりにも長期にわたって低過ぎる水準にあり、多くの国でその恩恵にあずかったのはあまりにも少数で、それは世界の成長をさらに圧迫しかねない政治的影響を伴うものだ」と予想。裕福な国における低所得者にとっての利益の伸び悩みは、「グローバル化を全ての苦悩の原因と批判し、外国と協調的に関与するよりも、世界的潮流から経済を遮断しようとする政治的運動」を生み出していると論じた。

  IMFは今回、ユーロ圏の見通しを上方修正しつつも、英国とEUとの新たな貿易協定交渉の結果がどうなるかは依然として不透明だと指摘。日本の見通しも引き上げ、安倍晋三政権が発表した消費増税の延期や経済対策に言及した。

  新興市場国の中では、インドが引き続き明るい部分だとし、今年と来年の成長率見通しを引き上げた。原油価格がやや持ち直したことから、ロシア経済の縮小は7月時点の予測よりも小幅になるとの見方も示した。中国経済については、今年の成長率が6.6%となった後、17年は6.2%に減速するとした7月時点の予想を据え置いた。

  一方で米国の成長率見通しは大幅に引き下げた。今年の成長率は1.6%と、7月時点の予想より0.6ポイント下方修正。来年は2.2%(7月時点の予測は2.5%)に回復するとした。

原題:IMF Sees Political Discord as Major Risk to Weak Global Recovery(抜粋)

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