消えては浮かぶ日銀外債購入、サマーズ氏排除せず-首相真意も容認か

  • 行き過ぎた円高時などに「可能な選択肢」とサマーズ元米財務長官
  • 安倍首相の否定発言も「必要ならやるべきだ」が真意-中原氏

日本銀行が金融政策の一環として外債を買うべきだという声が消えかかっては浮上している。先月の20カ国・地域(G20)首脳会議後、安倍晋三首相が会見で為替目的の外債購入を否定したが、金融政策としては可能との見方は根強い。

  先週は来日したサマーズ元米財務長官が「あらゆる手段を検討するのは適当だ」と述べ、安倍首相と長年にわたりパイプを持つ元日銀審議委員の中原伸之氏も選択肢として有効との見解だ。事情に詳しい関係者によると、日銀政策委員会でも共感を示す委員が少なくとも1人はいるという。

黒田日銀総裁とサマーズ元米財務長官(9月30日、日銀)

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  日銀主催のフォーラムに出席するため来日していたサマーズ氏は9月30日、記者会見で質問に答え、現在の国際情勢の中では通貨安競争へ大きなリスクがあるので、非常に慎重になる必要があるとしながらも、「あまりに行き過ぎた円高が起きた時などには、可能な選択肢として持っておくべきだ」と述べた。ただ「今が適当なタイミングだということではないと思う」とも指摘した。

  中原氏は審議委員時代の2001年10月29日の金融政策決定会合で「日銀法33条に掲げている通常業務の範囲内で毎月定額の買い切りオペを外債についても行う」ことを提案。当時は1対8の反対多数で否決されたものの、「いまだに有効なやり方だ」と指摘する。

  日銀は7月29日の金融政策決定会合で、それまでの政策の総括的な検証を行うと表明。黒田東彦日銀総裁は9月5日の講演で、従来の枠組み内で量、質、金利の拡大は「まだ十分可能」ながら、「それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)から外すべきではない」と語ったことで、外債購入も選択肢との見方が浮上した。

首相会見の真意

  こうした中、安倍首相は9月6日、中国・杭州で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合後の記者会見で自ら外債購入に言及し、「為替介入を目的とする場合は日銀法上、日銀が自ら行うことは認められていない」と臆測を打ち消した。しかしその後も、質問になかった外債購入に首相が言及したことについて、金融政策目的であれば可能であることを示唆した、との見方は残った。

  黒田総裁自身は9月21日の会見で、外債購入が今後の検討対象に入るか聞かれ、「日銀法上、外国為替相場の安定を目的とする外国為替の売買は国の事務の取り扱いをする者として行うものとされている。従ってそうした外国為替の売買については法律上、財務大臣が一元的に所管されている」と制度を説明するにとどめた。

  中原氏は9月30日のインタビューで、首相のG20会見での発言は金融政策目的の外債購入は可能と解釈できる余地が「十分ある」と語った。首相の発言は「安倍首相が事態を正確に理解していたから」であり、「日銀が必要ならやるべきだということだ」と述べた。「安倍首相はもともと量的緩和派であり、金利派ではない」とも語った。

共感

  中原氏が審議委員時代に外債購入を提案した2001年10月29日の金融政策決定会合の議事録によると、植田和男、中原真、三木利夫、須田美矢子ら複数の審議委員が同氏の主張に共感を示していたことが分かっている。

  SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは9月6日付リポートで、G20参加中の安倍首相が会見で言及した外債購入を「市場ではどうしても意識することになろう」と指摘。「従来なら財務省が容認するとは思えなかったが、現在のように経済政策の決定権が首相官邸に集中してきている状況では、何らかの政治判断が下される可能性が全くないとはいえなくなってきている」と分析している。

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