スポティファイ:無料サービスで日本の音楽市場に揺さぶり

  • レコード会社に強い警戒感、日本はCD販売優勢
  • 基本無料は大きなアドバンテージ-識者の見方

定額料金で聴き放題というのが音楽を楽しむ新しいスタイルとして世界的に広がりを見せている。音楽配信最大手のスポティファイが日本でもサービスを開始したが、CD売り上げ比率の高い日本で成功するには時間がかかるとみられている。

  スポティファイはアプリをダウンロードしてスマートフォンなどで利用する。月額980円で聴き放題となるが、最大の特徴は広告付きながら音楽を無料で楽しめるフリープランが提供されていること。世界に1億人以上のユーザーがおり、有料利用者は9月時点で4000万人に達したという。29日、都内で記者会見したダニエル・エク最高経営責任者(CEO)は「夢がかなった」とし、世界の200万人のアーティストを日本に紹介し、日本のアーティストを世界に紹介したいと述べた。

Daniel Ek

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  同様のサービスを展開している米アップルやLINE(ライン)より1年余り遅れての市場参入となったが、日本ではこうした定額制の音楽配信に対するレコード会社の警戒心が強く十分な楽曲が提供されていない。京都精華大学で音楽マーケティングを教える榎本幹朗氏は「オリコンチャートの曲の半分くらいしかないのではないか」と話す。

  日本では音楽売り上げに占めるCDなどパッケージ商品の比率が高い。日本レコード協会の統計によると、日本の2015年の音楽市場全体の売上高は3015億円で、このうちデジタル配信の比率は16%にとどまった。08年の20%に比べても低下している。これに対し、世界全体の音楽市場ではデジタルが占める比率が08年の20%から15年の45%に大きく伸びている。

転機となったアイフォーン

  世界の音楽市場とギャップが生まれるきっかけとなったのが、アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の登場だった。08年にアイフォーンが日本で発売される以前、日本は世界で最も先進的なモバイル音楽市場だった。フィーチャーフォンのユーザーは高速通信環境の下で楽曲や着うたを直接端末にダウンロードして楽しんでいた。

  しかし、アイフォーンでは楽曲の直接ダウンロードは認められず、着うたも限定的なサポートしか得られなかった。日本のユーザーは優れた機能を備えたアイフォーンを受け入れたものの、デジタル音楽販売は大幅に落ち込み、いまだに回復していない。

  榎本氏は「アイフォーンの登場で着うたが崩れてしまい、売り上げが大幅に落ちてしまった」と話す。スポティファイが世界的に普及したのは基本無料だからで「これは大きなアドバンテージ」だが、無料モデルを嫌がるレコード会社は多いと指摘する。

  MMD研究所のシニアリサーチャー、妹尾亜紀子氏はスポティファイについて、ライバルに1年以上遅れての参入となったため、「出足は弱いかもしれない」が、無料体験やフェイスブックと連動した「口コミなどを介してユーザーは徐々に増えていくだろう」とみている。

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