【インサイト】ビッグショートが進行中-米ジャンク債市場の水面下

今年はリスクが高めの債券保有に絶好の1年となっている。

  米国のハイイールド(高利回り)債は年初来リターンがプラス14.7%と、年間ベースで2009年以来の高さとなるペース。しかも、この相場上昇は継続するというのがウォール街の大方の予想で、JPモルガンのアナリストらは年間のトータルリターン予想を当初のプラス12%から17%に上方修正したばかりだ。

A Good Year

U.S. high-yield bond investors have done well this year, reaping the biggest gain since 2009

Source: The BofA Merrill Lynch US High Yield Index

  だが、誰かが弱気派となって売りに回っている。

  ジャンク債の上場投資信託(ETF)として最大、ブラックロックが提供する164億ドル(約1兆6630億円)のiシェアーズiBoxxハイイールド社債ETFの空売り残を見てみよう。実は、過去最大に膨らんでいる。

The Big Short

An increasing number of traders are using the biggest junk-bond ETF to short-sell the market

Source: IHS Markit

Data pertains to iShares iBoxx High Yield Corporate Bond ETF

  しかも、空売りするために借りられる分のほぼ全て借りている。借り入れが許される上限に対するその比率は96%に達したと、IHSマークイットのデータは示している。これはビッグショートだ。

Maxed Out

Traders are borrowing almost all this high-yield bond ETF's shares they can for shorting activity

Source: IHS Markit

The data pertains to iShares iBoxx High Yield Corporate Bond ETF, which trades under the ticker HYG

  この空売りは安くない。銘柄を借り入れるのにコストがかかるし、空売りの継続期間に利払いも発生する。しかも、これらの費用を利益実現の前に負担しなければならない。

  通常、このような動きは混乱発生時か、何らかの混乱を引き起こす大きな出来事の前に見られる。今のところ、この出来事が何を示しているのかを把握するのは難しい。

  中央銀行は波風を立てたくないし、中国も爆発寸前ではなさそうだ。目立った企業倒産も今のところなく、米大統領選挙もまだ1カ月以上先だ。

  もちろん、複数の著名投資家から世界の終わりを告げる声は強まっているというか、株・債券相場の上昇が悲惨な結末を迎えるとの予想は聞かれる。けれど、債券がバブルとの見方は特に目新しくない。

  では、このビッグショートは何か。最も有力は推測は、オプションあるいはもっと複雑な何かに関係する大型取引の一部というものだ。とはいえ、この空売り急増から2つの結論を導くことができる。

1) 複雑な取引への対応でクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のような伝統的な手段ではなく、ETFに目を向ける投資家が増えている。

2) 1兆4000億ドル規模の米ハイイールド債市場で価格形成に力を持つ勢力の一つとなったETFが、時に理解し難いテクニカル要因の影響を受けやすくなっている。

  今年これまでの相場上昇を多くの投資家が信じられず、あくまで中銀の政策の産物にすぎないと考えている。この見方に大きく賭けると決めた人物がいるのかもしれない。

  理由はどうあれ、明らかなのはこのところ落ち着いた市場の水面下では、多くの動きがあるということだ。それは、どこかの時点で姿を現す。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:A Massive Junk-Bond Short Sparks a Bear Hunt: Gadfly(抜粋)

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