米国債市場の最大の買い手が異例のペースで売り、相場の転換点か

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  • 海外中銀は米国債保有を3四半期連続で縮小
  • 低利回り環境の終わりに近づいていることを意味-M&G

米国債市場の需要の源泉として、最も頼りになる存在の一つだった外国の中央銀行がこのところ、投資家にとって新たな不安要因になりつつある。

  米連邦準備制度が保管している外国中銀の米国債保有残高によると、中国や日本などの中銀は3四半期連続で保有を縮小している。これは過去最長の圧縮。縮小ペースはここ3カ月で加速しており、米国債利回りも同時に上向きつつある。

米財務省

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  M&Gインベストメンツのジム・リービス氏にとって、こうした動きは懸念材料だ。歯止めが掛からなければ、既に高すぎるという声も聞かれる米国債相場に大きな痛手になりかねないからだ。ただ、もっと重要なのは米国の財政への影響だろう。米国の財政赤字計上で米国債発行残高は向こう10年に10兆ドル(約1010兆円)の増加が見込まれる中、海外からの需要は米国の借り入れコストの抑制で極めて重要になる。近い将来の利上げを連邦準備制度が示唆し続けているだけに、なおさらだ。

  リービス氏は外国中銀からの売り圧力について、「念頭に置いておく必要がある」と述べ、「これは米金融当局のスタンスとともに全て、低利回り環境の終わりに近づいていることを意味している」と指摘。同氏の顧客を利回り上昇の影響から守るため、M&Gは長期の米国債投資を減らし、短期証券を有望視しているという。

  金融危機後の経済再建に向けて米政府が多額の借り入れを行った際には、海外勢がそのファイナンスで重要な役割を果たし、2008年以降、海外勢の米国債投資は2倍強に拡大。現在は約6兆2500億ドルを保有している。しかし、この状況は変化し始めており、連邦準備制度が保管する海外中銀の米国債は今四半期に780億ドル、今年1-6月期に1000億ドル近く減少した。当局のデータでは、年初来の減少は少なくとも02年以来のハイペース。

  連邦準備制度の保管データは海外中銀の保有縮小が一度限りの現象ではないことを裏付けている。米財務省の統計でも、中国は7月に米国債保有を1兆2200億ドルと、約3年ぶりの低水準に減らしたことが示された。日本やサウジアラビアなども今年、米国債保有を減らしている。

  米国債の大口保有者が売却する理由はさまざまだが、いずれも各国の経済的困難に関係する。中国では景気減速による資本流出を受け、中銀が人民元相場を防衛するために米国債を売却。海外勢の米国債保有で2位の日本は、長引くマイナス金利で邦銀のドル需要が高まる中、米国債を現金や米財務省短期証券(TB)と交換している。

  サウジアラビアのような産油国は、原油安による財政赤字の穴埋めのため米国債を売却している。サウジの保有は6カ月連続で減少し、965億ドルと14年11月以来の低水準。ナショナルオーストラリア銀行(NAB)の市場調査責任者ピーター・ジョリー氏は、原油安で産油国の「貿易収支は著しく悪化している」と述べ、これらの国の「米国債購入ニーズが大きく減っている」という意味だと指摘した。

  中銀の米国債需要は10年物米国債利回りを0.4ポイント押し下げていると試算するモデルもあるだけに、その需要減少は7月に過去最低の1.318%を付けた米国の借り入れコストがようやく上向きつつある理由の1つを示している。

原題:Treasury Market’s Biggest Buyers Are Selling as Never Before (1)(抜粋)

(6段落以降を追加して更新します.)
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