日銀政策転換は銀行収益と無関係、「10年だけ急上昇は意味ない」

更新日時

銀行は一息ついた。しかし、それ以上のものではなかった-。日本銀行の新たな政策枠組みによる影響の評価をめぐり、専門家の見方はおおむね一致しているようだ。マイナス金利の深掘りが見送られ、銀行は収益の一段の悪化は避けられそうだが、恩恵も今のところあまり見えてこない。

  日銀は21日の金融政策決定会合で、政策目標の枠組みを量から金利に変更。政策金利はマイナス0.1%に据え置いた一方で、マイナスに落ち込んでいた10年国債金利を0%程度に誘導する方針だ。「短期調達・長期運用」の銀行にとって、長短金利差拡大による収益機会創出につながる可能性がある。金融政策の「総括的な検証」でも、マイナス金利による貸出金利の低下は金融機関の収益を圧迫しているなどと配慮を見せた。

日本銀行

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  貸出金利が低下する半面、預金にはマイナス金利を適用できず、銀行の預貸金利差は記録的水準まで縮小していた。今回の日銀の決定を受けて、全国地方銀行協会の中西勝則会長(静岡銀行頭取)は、「金融機関に生じているマイナス金利の副作用を緩和するものと期待している」とのコメントを発表した。

  しかし、10年債の金利誘導効果には懐疑的な見方がある。日本郵政の長門正貢社長は23日の記者会見で、銀行経営の収益改善は利回り曲線の形状次第だとし、「銀行融資の中心は3-5年であり、金利が底を這う形で10年で急上昇したのではメリットはない」と述べた。BNPパリバ証券の鮫島豊喜シニアアナリストも21日付のリポートで、銀行資産の平均残存期間は2ー3年だとし、「10 年国債の利回りと銀行の資産利回りは直結しない。収益にはあまり関係ない」と指摘した。

深掘りの懸念残る

  ひとまず安堵した銀行業界だが、日銀は21日の発表文で「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる」と明記した。マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは、量的緩和より金利操作の優先順位が高まったことで「マイナス金利深掘りの可能性が高まった」とみる。短期金利の一段の低下があれば、銀行が海外事業や中小企業融資に向かうインセンティブがさらに高まると分析している。

  また、長期金利操作が奏功して10年超の超長期国債の利回りが上昇していけば、「銀行融資の貸出年限の長期化はありうる」と大槻氏は話し、20年など超長期ローンや資本性のある劣後ローンが増えるとの見通しを明らかにした。ただ、収益には貢献する半面、「20年後の企業の健全性を予測するのは難しく、リスクがある」と懸念を示した。

  米バンク・オブ・アメリカの佐々木太アナリストは、「新しい政策が出たからすごく良くなるという感じでもない。まだ利ざやは縮小していく方向にある」と述べた。貸出金利の指標となる3カ月物TIBOR(東京銀行間取引金利)は21日、0.05909%に低下、ブルームバーグのデータに記録の残る1995年以降で最低の水準となった。  

利回り曲線

  年限1年ー3年の国債利回りは26日午前、日銀が政策決定した前日の20日に比べ2-4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度上昇した一方、20年債は3bp、40年債は8bp程度下落しており、長短金利差は縮小。現時点では必ずしも日銀の意図する方向とはなっていない。

  みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストは、「このイールドカーブが続く限り、なかなか銀行は大変だ」と指摘する。日銀がマイナス金利の深掘りを見送ったことで銀行のコア収益へのさらなる悪影響は避けられたとしつつも、「今年の1月ごろに比べて引き続き環境は悪い。時間がたてばたつほど、収益の悪化が顕在化していくだけだと思う」と懸念を示した。

(第8、9段落を追加して、更新しました.)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE