株式投信設定額4年ぶり低水準、消えゆく脱デフレ期待-円高も

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  • 1-8月までの合計は19兆4685億円、前年同期の6割水準
  • 大手証券会社の収益に悪影響も、7-9月期もトレンド継続か

国内で投資信託の販売が落ち込み、特に株式投信の年初来設定額はアベノミクスが始まる前の2012年以来の低水準となっている。背景にあるのは、政策の手詰まりで日本のデフレ脱却に対する期待がしぼんでいる上、世界の景気や金融政策への不透明感による円高、株安の流れだ。

  投資信託協会がまとめる公募投信のデータによると、ことしの株式投信の設定額は8月までの合計で19兆4685億円。1カ月当たりの平均は2兆4336億円と前年同期の約6割の水準にとどまる。年間では13年の40兆円、14年の38兆円、15年の44兆円から大きく減り、12年の23兆8241億円以来の低水準となる可能性が高い。13年5月には、5兆2231億円と月間データの比較が可能な1989年以降で最高を記録した。

日米の紙幣

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  ドイチェ・アセット・マネジメント資産運用研究所の藤原延介所長は、「ここ2ー3年、今まで投資していなかった人たちが資金を動かし始めたが、ことしの4ー6月ごろから止まり始めている」と分析。個人投資家らがアベノミクスでインフレ率が2%にいくかもしれないと考えたため、投信人気が高まったが、「2%は無理ではないかという気持ちになり始めている」と言う。

  総務省が公表する全国消費者物価指数は、7月に生鮮食品を除くコアベースで前年比0.5%下落と5カ月連続で低下、下落幅は日本銀行が量的・質的金融緩和を始める直前の13年3月以来の落ち込みとなった。

  東証1部全体の値動きを示すTOPIXは、昨年8月に約8年ぶりに1700ポイントを回復したが、その後は調整。中国など新興国経済の減速や米国の経済・金融政策への不透明感、英国の欧州連合(EU)離脱選択、為替の円高進行など国内外で悪材料が重なり、ことし2月と6月には1200を割り込んだ。21日現在のTOPIXの年初来騰落率はマイナス13%。ドル・円相場は、昨年6月に付けた1ドル=125円86銭をピークにドル安・円高傾向が強まり、ことし6月以降は13年11月以来となる1ドル=99円台を付ける場面がみられる。

  投信の設定額同様、個人の証券投資人気に一役買ってきた少額投資非課税制度(NISA)ブームの陰りも顕著だ。14年1月の開始から順調に推移した月間総口座数の伸びは、ことし1ー8月の平均で前年同期比4割以上減った。

公募株式投信の設定額推移

The Investment Trusts Association,Japan

  投信の不振は、証券会社の収益にも悪影響を及ぼしている。野村ホールディングスのアセット・マネジメント部門の17年3月期第1四半期の投信ビジネス(ETF除く、MRFなど含む)は、3990億円の資金流出と2四半期連続のマイナス。大和証券グループ本社の第1四半期の株式投信販売額は、前年同期比41%減の3968億円だった。野村証券の大塚亘アナリストは、「個人投資家のリスクオフ状況を考慮すれば、第2四半期も減少が想定される」としている。

  ドイチェ・アセットの藤原氏は、投信購入層の中心は退職したシニア層であり、「デフレに向かっていくのであれば、預金というツールがある以上、あえて貯金から投資へ行く必要はない」と指摘。今後株式投信へ資金が回帰するには、「少なくとも数年単位で名目成長がプラスとなる見通しが必要」と言う。日銀によると、3月末の家計の金融資産残高は前年同期比0.6%減の1706兆円。うち現金・預金は全体の52%を占める894億円に上り、投信は5.4%の92兆円に過ぎない。

  23日の日本株は、TOPIXが一時21日の終値に対し0.8%安と軟調な値動き。米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利の据え置きを決め、日本が祝日だった22日の為替市場で一時1ドル=100円10銭と8月26日以来のドル安・円高水準に振れたことが重しとなっている。

(7段落以降に情報詳細、株式・為替市況を追記.)
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