もんじゅの廃炉含め抜本見直し、年内に結論-核燃料サイクルは維持

  • 開発投資1兆円超-相次ぐトラブルで実稼働過去22年間で250日
  • 再稼働には10年間、5000億円超の追加費用必要との試算も

政府は21日、発電しながら利用した以上の核燃料を生み出すことができる高速増殖炉の技術確立や経済性の評価を担ってきた原型炉「もんじゅ」の廃炉も含めた抜本的な見直しを行うことを決定した。増殖炉を含めた高速炉研究は継続し、使用済みの核燃料を再処理することでもう一度燃料として利用するという核燃料サイクル計画は維持する方針だ。

高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  菅義偉官房長官やもんじゅを所管する松野博一文部科学相、エネルギー政策を担う世耕弘成経済産業相らが21日に原子力関係閣僚会議を開き、「廃炉を含め抜本的な見直しを行う」との方針を取りまとめた。原発事故以降の新規制基準への対応や国際高速炉研究の進捗(しんちょく)など環境変化を踏まえ、もんじゅの存廃も含めた高速炉開発方針案を年内にまとめる。高速炉開発会議を設置し、経産相主体で原型炉の次の段階の実証炉の開発目標を明確化する。

  日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営するもんじゅは研究開発に1兆円以上、維持費に毎年約200億円を費やしているのにもかかわらず、ナトリウム漏えい事故や点検漏れなど相次ぐトラブルで1994年の稼働開始から250日しか稼働していない。松野文科相は21日、東日本大震災以降に厳格化された規制基準を満たして再稼働させるためには10年間の時間と少なくとも5000億円の追加費用がかかると指摘した。

  相次ぐトラブルを受けて原子力規制委員会は2015年11月、もんじゅの在り方を抜本的に見直すよう文科相に勧告。規制委の求めた半年の回答期限を過ぎてもJAEAに代わる運営主体を選定できず、廃炉も含めた抜本的な見直しという結論に至った。

ナトリウム炉

  JAEAに代わる受け皿をめぐる議論では、もんじゅの最大の特徴であるナトリウム冷却高速炉という構造が大きなネックとなった。現在、商業運転している原発は軽水炉と呼ばれ、燃料の冷却に水を使う。これに対し、高速炉は核分裂のスピードを上げるために冷却にナトリウムを使用するが、水に触れると爆発的な反応をするため、軽水炉に知見のある電力会社でも、取扱いが難しい。ただ核分裂の際に出てきた高速の中性子を燃料にあてることで、ウランとプルトニウムの配合次第では理論上、発電しながら消費した以上の核燃料物質を生み出すことができるメリットがある。

  原子力資料情報室の伴英幸共同代表は、政府は核燃料サイクル政策を維持するために、原型炉もんじゅの前段階にあたる実験炉「常陽」を再稼働させるとともに、フランスの高速炉開発に協力して技術や成果を共有していくことになるだろうとの見方を示した。経産相主導ので実証炉については福島原発事故以降、「実証炉を作る場所を探すのはますます難しい」と指摘。さらに高速増殖炉は机上の空論に近いとし、将来的には核燃料サイクル政策自体も見直しの方向に進む可能性があると述べた。

  一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荻野零児シニアアナリストは14日付のリポートで、もんじゅの廃炉措置によって使用済み燃料からプルトニウムなどを取り出して再利用する核燃料サイクル政策を見直すことになれば、「電力会社の原発運営に影響を与えるリスクがある」と指摘している。

核燃料サイクル

  政府の目指す核燃料サイクルは、使用済みの核燃料を再処理したウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を通常の原発で再利用するという軽水炉サイクルと、通常の原発よりも長期間利用できるよう加工した再処理燃料を利用する高速炉サイクルの両輪で成り立っている。政府は、天然ウランから作られる燃料よりも高いMOX燃料を使う軽水炉から将来的には高速炉に移行するためとして、使用済み核燃料を再処理する意義を説明してきた。

  原子力資料情報室の伴氏は、高速炉の計画を断念するとMOX燃料を使ったプルサーマル発電をやる「説明がつかなくなる」と指摘する。大手電力などが出資する日本原燃の再処理工場は規制委による安全審査の大詰めに差し掛かっており、MOX燃料工場も建設中だ。そのような状況で「政府は再処理を見直す英断はできない」とし、次に課題となる使用済みMOX燃料の再処理を断念し、直接処分という政策転換を図るのではないかと述べた。

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