証券監視委:インサイダー監視を強化へ、医療・創薬・バイオ株で

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証券取引等監視委員会が医療・創薬企業の株式についてインサイダー取引への監視を強化する方針であることが分かった。ここ最近、投資家の投資判断に著しい影響を与えるような重要事実の漏えいが増加傾向にあることから、当局はこの分野でのモニタリングを強化する考えだ。

  証券監視委は、企業情報の漏えいでは、これまで多かった企業の合併・買収(M&A)や業績修正、自社株買いなどに加え、今後は開発中の薬品の効果を実証する治験結果などについても重視、企業による情報開示前後の株価動向などを注視していく。佐々木清隆事務局長がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。

証券取引等監視委員会の佐々木清隆事務局長

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  日本では治験や新薬開発などの成否が株価に影響を与える医療・創薬ベンチャーの上場が増加傾向にあり、金融当局は市場の公正性の確保に努めている。監視委は昨年11月、創薬ベンチャーアールテック・ウエノの臨床試験を担当していた宮崎大学医学部の教職員が治験中止の公表前に同社株を売却したとして摘発。日本取引所グループは6月、治験結果の公表前日に急落したアキュセラ・インク株の調査に入ったことを明らかにした。

  監視委の佐々木事務局長は「治験、創薬、IPS細胞などの医療・新薬関係企業で重要事実の漏えいが増えている」と指摘。また、こうした業界では大学の教職員や医師など多くの関係者が関与することから、「コンプライアンス、ガバナンスの問題」も内包されているとの認識を示した。

  佐々木事務局長は、アキュセラ株に関して現在監視委が調査しているかどうかについてコメントを控えた。また、シアトルに本拠を置くアキュセラ社が現在不正などを指摘されているという事実はない。

  アキュセラ社の日本拠点のジェネラルマネージャー、マイケル長谷川氏は「アキュセラは当局による調査に対して真摯(しんし)に協力してまいります」とコメントした。ただ、現在調査が入っているかどうかについてはコメントを控えた。

  監視委によると、同委がインサイダー取引で2015年3月末までの1年間に審査した事案は978件とその3年前から2割増加、告発や課徴金納付命令勧告に至ったのは32件だった。15年度も12月までの9カ月で721件の審査を行っており、内部者取引では16事案で告発や勧告を行っている。

  佐々木氏は昨年7月に事務局長に就任。直後のインタビューでは時代の変化に合った罰則強化の必要性を示唆した。証券会社のアナリストによる企業情報の取り扱いなどをめぐり監視体制を強化、ドイツ証券とクレディ・スイス証券に法人関係情報の不適切な管理体制で行政処分を勧告するに至った。

空売りファンド

  このほか佐々木事務局長は最近、日本での活動が目立つ海外の空売りファンドについて「われわれは今、こういう問題に大変関心を持って見ている」と言及、実態の把握に努めていることを明らかにした。過去の摘発事例に当てはまらない出来事が増える中、事後チェックではなく、リアルタイムな監視に取り組む方針だ。

  今夏、グラウカス・リサーチ・グループとシトロン・リサーチが初めて日本企業に関するリポートを公表した。グラウカスは伊藤忠の会計手法に問題があるとして同社株を強く売り推奨。シトロンは医療機器の研究開発を手掛けるサイバーダインのいずれの製品も効果的に商業化するには至っていないとして投資家に「細心の注意を払うこと」を勧めた。

  また、佐々木氏は知見、経験のある海外当局と連携、情報収集にあたっていると述べている。

英語記事:Japan Securities Watchdog to Boost Monitoring of Biotech Stocks

(第9段落以降に空売りファンドについて追加しました.)
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