日銀会合注目点:総括検証と同時に追加緩和か、見送りなら円高株安も

  • エコノミスト調査で5割超が緩和を予想-マイナス金利拡大を有力視
  • 「最近では最も重要な金融政策決定会合」-みずほ銀・唐鎌氏

日本銀行は21日の金融政策決定会合で政策運営方針を決定する。市場は今後の政策運営を方向付ける総括的な検証の結果を固唾(かたず)を飲んで見守っている。

  最大の注目は、日銀がマイナス金利深掘り、または長期国債の買い入れ拡大に動くかだ。物価上昇率が目標の2%から遠く離れた水準で低迷する中、ここ数回の金融政策決定会合ではそのいずれも手付かずで、黒田東彦総裁のバズーカは弾切れになりつつあるとの観測が強まっている。今回も追加緩和見送りか小出しに終われば、そうした見方をますます強めかねない。

  ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に7-12日に実施した調査で、今会合の追加緩和予想は23人(54%)と過半数に達した。11月は7人(16%)、12月は1人(2%)、来年1月以降が6人(14%)。追加緩和なしは6人(14%)とゼロだった前回7月会合前の調査から増えたが、依然少数派だ。日銀が2%の早期達成のコミットメントを少しでも緩めれば、円高・株安が進行する可能性もある。

黒田日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「今回は最近では最も重要な金融政策決定会合になる。市場から少しでも失望されれば、円が上昇し、2%物価目標の実現がますます難しくなる」と指摘する。

  金融政策決定会合は従来、おおむね正午から午後1時の間に終了し、それから間もなく結果が発表される。黒田総裁は午後3時半に記者会見を行う。

マイナス金利

  ブルームバーグ調査で、今会合の緩和を予想した23人はその手段(複数回答)として、マイナス金利拡大(14人、61%)と長期国債買い入れ増(13人、57%)を挙げた。9月会合以降も含めると、想定される手段はマイナス金利拡大(23人)が長期国債の買い入れ増(15人)を大きく引き離した。

  黒田総裁は5日の講演で、マイナス金利により「国債や貸し出し・社債などの金利は大きく低下し、その面で顕著な効果を発揮している」と同時に、「金融市場の流動性や金融機関の収益などにも影響を及ぼしている」と述べ、これまでのように効果だけでなくコスト面についても言及した。一方で、マイナス金利の深掘りは「まだ十分可能」との見解をあらためて示した。

長期国債の買い入れ

  事情に詳しい複数の関係者によると、次の一手として長期国債の買い入れを望む向きが日銀内に引き続き存在しており、量、質、金利の3次元の追加緩和のうち、どのような手段、組み合わせが最も適切かについて、政策委員の見解が分かれている。

  市場で限界説が指摘される長期国債の買い入れについて、目標額をレンジにするなど柔軟化するとの見方も一部にある。ブルームバーグ調査でも、今会合で長期国債の買い入れ増額を予想した13人のうち7人がレンジ化の可能性を指摘した。しかし、複数の関係者によると、日銀内では70兆-90兆円など下限が80兆円を下回るレンジにすると、市場から金融緩和の縮小と受け取られるリスクがあるとの声も出ている。

  複数の関係者によると、国債購入柔軟化の一環として、現在7-12年としている保有国債の平均残存期間の見直しも選択肢として浮上している。

  総括的な検証や政策運営について、反対票が増えるかどうかも、今後の政策運営を占う上で注目される。木内登英、佐藤健裕両審議委員は1月のマイナス金利導入に反対票を投じて以来、政策運営方針に反対を続けている。新たな追加緩和措置に対して、この2人以外から反対票が出れば、黒田総裁の指導力に疑問符が付きかねない。

総括的な検証

  黒田総裁は最近の講演で政策運営の予見可能性を重視する姿勢を示しており、日銀はこれまでのサプライズ路線から転換したという見方も出ている。7月の決定会合で総括的な検証を行うことを明らかにしたこともその一環である可能性はあるが、次の一手が緩和路線の加速なのか修正なのか、市場では見方が分かれており、政策の先行き不透明感はむしろ一段と強まっている。

  総括的な検証とともに追加緩和に踏み切るのか、総括的な検証が金融市場で消化される時間を待った上で行動に出るのか、いくつかの選択肢は残されている。日銀の政策決定と同じ日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定が行われることから、日銀決定の市場への影響がFOMC次第でかき消されてしまう可能性もある。

フォワードガイダンス

  エコノミストの間では、日銀が「2%の物価目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する」という現在のフォワードガイダンスを強化するとの見方もある。中曽宏副総裁は8日の講演後に記者団に対し、当初「2年程度を念頭に」物価目標を達成するとしたコミットメントについて「既に2年経過しているので、その論点はあまり意味のある議論ではないのではないか」と述べた。

  クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは15日付のリポートで、年間80兆円ペースで長期国債保有残高を増加させる現在の政策には「やがて物理的な限界が訪れる」と指摘。量的緩和の方向性は基本的にはテーパリング(買い入れの縮小)だとした上で、それが長期金利の過度な上昇を招かないよう、「マイナス金利拡大と時間軸効果の強化を組み合わせていく必要がある」という。

質の強化

  日銀は7月会合で指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れを6兆円とほぼ倍増する決定を行った。ETF以外のリスク資産が今後増額される可能性も捨て切れない。候補としては地方債、財投機関債などが挙げられているほか、外債なども取り沙汰されている。

  安倍首相は5日、中国・杭州で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合後の記者会見で、為替介入が目的の日銀による外債購入は日銀法上認められていないと述べた。しかし、安倍首相のアドバイザーである浜田宏一内閣官房参与は5日のインタビューで、米国が利上げにちゅうちょすれば、日本は財務省の為替介入や日銀の外債購入によって投機的な為替投資家に対し、より真剣に対抗すべきだ、と述べている。

  

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