マイナス金利深掘り、日銀合わせ技でも円安トレンド回帰は期待薄

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  • 国内債利回り曲線の傾斜化観測
  • 大量持続的な円安フロー発生させるトリガーになり得ない-ドイツ証

約2カ月にわたり金融市場でさまざまな憶測を呼んだ日本銀行の「総括的な検証」の結果がいよいよ21日明らかになる。有力視されているのがマイナス金利の深掘りと利回り曲線のスティープ化の合わせ技だが、円高傾向が続く為替相場の転換点になると見る向きは少ない。

  円は14日に約1週間ぶりとなる1ドル=103円台前半まで一時下落した。きっかけは、日本経済新聞の報道。日銀がマイナス金利政策の深掘りを今後の金融緩和の軸とし、それによる副作用を抑えるため、超長期国債の購入を抑えて長短金利差の拡大を促すことも検討するという。

黒田日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  実際、日銀の黒田東彦総裁や中曽宏副総裁は今月の講演でマイナス金利の副作用について相次いで言及した。市場では日銀が金融機関の収益圧迫や機関投資家の運用悪化に配慮して、利回り曲線の傾斜化を図るとの観測が広がっている。

  JPモルガン・チェース銀の佐々木融市場調査本部長は、「イールドカーブがスティープ化した場合のインプリケーションは、金利差縮小で円高圧力だが、銀行株にとってはプラスなので円にとっては少しネガティブになってくる」と指摘。結局、影響は相殺されるため、ドル・円が100-104円のレンジは抜けることはないとみている。

  JPモルガンは先週、今回の会合で予想する日銀緩和の内容を一部修正した。マネタリーベース増加のターゲットを年80兆円から90兆円に増額するとの予想について、国債の買い入れ額は80兆円に据え置き、社債、地方債、財投機関債などの買い入れで増額を行うと変更。マイナス金利については引き続き20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の深掘りを予想するが、銀行収益への悪影響を懸念するなら10bpにとどまる可能性もあるとみている。

  佐々木氏は、「個人的にはマイナス金利の深堀りは不安定な時にしかやらないと思う」と述べ、「マイナス金利の深堀りをすると円安になるかというと、たぶん逆だ」と話す。

  20日午後0時36分現在のドル・円は101円90銭前後で推移。1月末に日銀によるマイナス金利政策の導入以降、円は17%上昇。6月末の終値は103円20銭で、このままいけば2011年以来の3四半期連続の円高となる。 

  黒田総裁は5日の講演で、金利のマイナス幅を現在の0.1%から拡大する十分な余地があるとの認識を示したが、同時に国債利回りと貸出金利の低下が銀行の収益や年金などの運用利回りに悪影響を及ぼすことを認めた。

  ドイツ証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジストは14日付のリポートで、利回り曲線のスティープ化による金融機関などのコスト改善を通じた超金融緩和の持続性の補強、マイナス金利深掘りによる日米短期金利差拡大などは「ドル・円へのベア圧力を減らす効果」が期待されるが、「大量かつ持続的な円安フローを発生させるトリガーにはなり得ない」と指摘。100-105円水準のサポートは一時補強されうるが、それ以上の効果は期待しがたいと分析した。
  
  一方、三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの内田稔チーフアナリストは、長期金利は期待潜在成長率や期待インフレ率、財政のリスクプレミアム、海外債券市場動向などさまざまな要因で決まるため、日銀がコントロールするのは難しいと指摘する。

  内田氏は、日銀が影響を及ぼせるのは日銀が買うかどうかという需給だけで、狙い通りにイールドカーブが立たないならば、副作用は結局消えないことになり、「そうした中でマイナス金利だけが深掘りされるとすると、銀行株がさらに下がり、リスクオフが助長されて円高という経路がどうしても出る」と語る。  

  内田氏はまた、ドルの調達コストの上昇でヘッジ外債が機能しにくくなっている状況で、日本の投資家が日本国債に回帰すれば金利は上がらなくなると指摘する。三菱東京UFJ銀は年末のドル・円を98円と予想。ただ、一時的にはもう少し円高に行く可能性もあるという。

  3カ月物のドル・円フォワードを基に算出した為替ヘッジコストを差し引いた米10年債利回りは足元ほぼゼロ%で、7月以降はマイナスに転じる場面があった。日本の新発20年債利回りは先週、0.495%と3月以来の水準まで上昇。同30年債と40年債の利回りもそれぞれ0.605%と0.67%と半年ぶりの高水準を付けた。

  ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に実施した調査では、23人が20、21日の決定会合での追加緩和を予想し、14人が11月以降の緩和を予想した。9月緩和を予想した23人のうち、14人がその手段としてマイナス金利の拡大を挙げた。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は、日銀の会合結果が判明した後の現地時間21日午後に金融政策を発表する。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長らの当局者発言を受けて一時高まっていた早期利上げ観測は、その後に発表された米経済指標の不振で後退。ブルームバーグが金利先物を基に算出した9月利上げの予想確率は19日時点で20%、年内の確率も56%となっている。

  三井住友銀行の佐藤慎介為替トレーディンググループ長は、そもそも米国の利上げが年内1回程度ならドル高トレンドへの回帰は見込めないと指摘。日銀がマイナス金利の深掘りをやってもやらなくても、「カーブが立って円安トレンドに回帰していくということはない」とみている。

(第8段落以降を追加して更新します.)
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