皆が買うには「もう少し欲しい」、外債からの逆流始まったばかり

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  • 20年債の利回りは約1%だった今年初めの半分未満
  • 国内勢の外債売り越しは2週連続、米国債利回りは上昇

国内の超低金利を嫌って海外に流出していた投資資金に国内回帰の兆しが出てきたが、日本国債への本格的な買いが入る水準には至っていないようだ。

  日本銀行の前例のない金融緩和策を自己点検する決定会合を控え、新発20年物国債利回りは先週に0.495%と半年ぶりの水準に上昇。政策金利見通しの影響を受けやすい2年債との利回り格差は71ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と6月末の2倍超に拡大し、長期保有で評価益を得られる見通しが強まった。円高時の為替差損の回避(ヘッジ)措置を講じた米10年物国債利回りは足元で0.12%程度にとどまっている。

1万円札と100ドル札

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  財務省の統計によると、国内勢は海外の中長期債を先月27日まで、昨年以降で最長となる10週連続で買い越した後、今月10日までの2週間は合計1兆9341億円の売り越しに転じた。20年債利回りが過去最低を記録した7月上旬には2兆5497億円とデータでさかのぼれる2005年以降で最大の買い越しを記録したが、超長期債利回りの急上昇を背景に投資資金が逆流した格好だ。

  三菱UFJ国際投信債券運用部の小口正之チーフファンドマネジャーは、20年債利回りは「だいぶ戻ってきたが、まだ投資家が安定的に喜んで買えるかは疑問な水準で、もう少し欲しいところだ」と指摘。「0.8-1%になれば皆が買いたいだろうが、ゆえに押し目買いに押され、0.5-0.8%のどこかで落ち着くかもしれない」と読む。日銀の決定会合を前に「今は主要な運用指標からデュレーションが外れないよう、ポジションを中立的に保っている」と言う。

  20年債利回りはマイナス金利政策の導入を発表した1月末から下げが加速。7月上旬には初めてゼロ%を割り込み、マイナス0.005%まで下げた。黒田東彦総裁の下で進めてきた金融緩和の総括的な検証を9月会合で行うと7月末に表明すると上昇に転じた。利回り曲線のスティープ(傾斜)化を促すような枠組み変更の観測を背景に、先月下旬からは上昇に拍車が掛かっているが、年初の0.99%と比べるとなお半分未満の水準だ。それでも今や為替ヘッジ付き米10年債の数倍に上る。

  国内勢が購入する外債に為替ヘッジを付けるには、円と外貨のロンドン銀行間取引金利(LIBOR)差に加え、クロス通貨ベーシススワップが映す両通貨の需要格差に基づく上乗せ金利が目安となる。ドルとの金利差は3カ月物で先週89bpと1年前の約3.5倍に拡大した。

  円をドルに交換するためのベーシススワップは3カ月物で70bpと、先月付けた11年11月以来の74.25bpに近い高水準。両者とも為替ヘッジコストの高止まりにつながっている。

兆しだけ、本格化していない

  国内勢は日本国債が全ての年限で0.1%を下回った7月には海外の中長期債を過去最大の5兆4494億円買い越し、8月は2兆2863億円と今年度で二番目に多かった。年初来の買越額は20兆9365億円と同時期としてはデータでさかのぼれる05年以降で最大。昨年1年間の買越額をすでに8割近く上回った。しかし、国内の超長期債利回りが大幅に上昇した先月下旬には売り越しに転じた。

  三井住友アセットマネジメントの深代潤債券運用グループ理事兼副ヘッドは、「円債の代替投資先として海外に出ていた分は、国内金利が上がれば戻ってくる可能性が高い。ただ、まだ兆しが見えているだけで、本格化はしていない」と指摘。超長期債の買いが本格化するにはイールドカーブに関する日銀の姿勢に加え、「投資家がボラティリティの高さも考慮した上で、どの水準から入ってくるか」が焦点だと言う。

  超長期債の利回りは30年物が7月に0.015%、40年物が0.045%と過去最低を更新した。新発10年物国債利回りが2月からゼロ%を下回る中で、プラスの利回りを求める資金が集中した。しかし、先週は30年債が0.605%、40年債は0.67%と、いずれも3月中旬以来の水準に上昇。今年度入り後の評価益は全て失われた。

もうひと波、ショック到来か

  マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長は、「海外に流れていた資金の一部は戻ってくるだろうが、超長期債にはまだスティープ化の要因が残っている。もうひと波、投げ売りのショックが来る気がするので、今はまだ買いではない」とみる。40年債は今年度の増発に加えて「来年度も1回6000億円に増発される可能性があり、日銀はオペで残存25年超を立ててくるだろう」と説明する。

  嶋村氏は「海外勢もスティープ化に賭けるとみられ、40年債利回りは0.75%まで上がるだろう。そこなら買いだ」と言う。「年初には1.5%程度だったので、政府としても1%程度までのスティープ化は容認できるだろう」と分析。20年債は「売り買いが交錯するので読みにくいが、0.5%前後で止まるのではないか」と読む。

  関係者によると、日銀は検証の一環として、イールドカーブの行き過ぎたフラット化の是正を狙い、長期国債購入で「7-12年程度」の平均残存期間の柔軟化を検討している。日銀が毎月末に公表している国債買い入れの運営方針について、平均残存期間を延ばした昨年12月には決定会合後に発表し、市場を驚かせた。三菱UFJ国際投信の小口氏とマスミューチュアル生命の嶋村氏は、今回も前倒し発表があり得ると警戒する。

  三井住友アセットの深代氏は「そもそも日銀が長期金利を操作するのは難しい。ボラティリティを高めるだけではないか」と指摘。日銀が資金量の調節で誘導できる短期市場金利とは異なり、「長いゾーンは投資家に任せた方が、長い目で見れば適正水準に落ち着きやすい」と言う。

  日銀は金融調節に関する解説で、金利は期間が長いほど経済・物価見通しや将来の不確実性に左右されるが「中央銀行は人々の予想や将来の不確実性を思いのままに動かすことはできない」と言明。金利動向から市場の予想を読み取るのも、金融経済の状況判断に非常に重要だと指摘。中銀の誘導に適しているのは「ごく短期の金利」で、長めの金利形成は「なるべく市場メカニズムに委ねることが望ましい」との見解を示している。

  三菱UFJ国際投信の小口氏は、「日銀がイールドカーブの両端を引っ張れば、その間の形状は市場がこなれてくるのを待つしかない」と指摘。日銀はマイナス金利で手前のゾーンに、事実上の買い入れ減額で超長期ゾーンに働き掛けることで「長期金利をコントロールするという新たな試みに足を踏み入れることになる」と予想した。

(第10段落以降を追加して更新します.)
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