ウォール街の0.01%、超一流ヘッジファンドだけに24時間対応の助言者

  • ノルドビグ氏は為替ストラテジストとして5年連続で首位に選ばれた
  • 今年1月に野村ホールディングスを離れエクサンテ・データを創業

金融業界で相場見通しに定評のあるイェンス・ノルドビグ氏は、年3万ドル(約306万円)払ってくれる人なら誰にでもトレーディングに勝つ秘訣(ひけつ)を提供するつもりだ。

  しかし、資金力に富むヘッジファンドのように同氏から最善のアイデアを自由にもらい個人的なつながりも得たいのなら、その約20倍を支払う覚悟が必要だ。

  金融の調査・分析提供にこのような2段階方式が取られるのは、ウォール街の世界で今起きている著しい変化の一つを浮かび上がらせる。超高額料金を支払う顧客にのみ金融業が仕えるという階級システムの台頭だ。もちろん、この世界には昔から持つ者と持たざる者が存在してきたが、ウォール街の中では格差が拡大しており、1%の中の1%とでも言うべき新たな金融エリートが誕生している。

  そして、その0.01%にあなたが属していないのなら、次にできる最善策はそのエリート層にアイデアを売ることだ。

  マンハッタンのフラティロン地区にあるオフィスで最近インタビューに応じたノルドビグ氏(42)は、「投資家は誰か本当に信頼できる人物から個別にアドバイスを受けるか、データツールあるいはロボットの助言を受けるかどちらかで、この2つの価格は異なる」と語った。

  為替ストラテジストとして5年連続で首位に選ばれた後、今年1月に野村ホールディングスを離れた同氏にとって今の環境は、自身の強みを生かして超一流のヘッジファンドを顧客、それに出資者としてエクサンテ・データを創業することを意味した。

エクサンテのノルドビグCEO

Photographer: Christopher Goodney/Bloomberg

  エクサンテの顧客には、ジョージ・ソロス氏の秘蔵っ子スコット・ベセント氏のヘッジファンドであるキー・スクエアのほか、アダム・レビンソン氏のグラティキュールなどが含まれると、事情に詳しい投資家や関係者は話している。グラティキュールはコメント要請に応じなかった。

  ノルドビグ氏は具体的な会社名を挙げなかったが、起業コストのほとんどを大手「5ー7社」からの資金でカバーしたと説明。また、自らは新しい顧客を受け入れていないとも明かした。なぜならエクサンテの従業員6人は分析ツール投入に力を注いでいるが、同氏自身は既に大半の時間を「大切なお得意さま」向けの助言に充てているからだ。

  こうした顧客との連絡はほぼ毎日で、毎日24時間いつでも電話やメッセージでやりとりできるようにしている。ノルドビグ氏の調査・分析は顧客ごとのニーズに合わせた内容で、マクロ経済政策やトレード戦略などに関して1社と数時間討論を交わすこともしばしばだという。

円急騰

  7月下旬には顧客の1社であるアジアのヘッジファンドへの対応で真夜中まで起きていたが、これは日本銀行の金融政策決定会合で大方が予想するような追加刺激措置発表はないという持論の展開のためだった(この顧客は円を売るつもりだったが、ノルドビグ氏はそれをやめさせており、その読みの鋭さは日銀会合後の円急騰で証明された)。

  同氏の支援者もこれまでのところ、満足している。キー・スクエアのベセント氏はノルドビグ氏について、「市場の偉大な予言者の一人だ」と高く評価。その上で、同氏には顧客数を絞るよう促したとして、大量生産とは逆の「エルメス」のようなビジネス展開がなされていると語った。

  ノルドビグ氏のようなカスタムメードの調査・分析への需要が高まっている背景には、銀行が一連の規制強化の中でコストも人員を削減し、全ての顧客にとって万能の存在になるという野心を捨てつつある事情がある。金融危機以降の収入低迷が業界を襲い、銀行幹部は取引注文を受ける代わりに投資リサーチを無料で提供するビジネスモデルの再考を迫られた。これでアナリストや調査のための費用が削減され、顧客向けの特別仕様サービスの価値が上がった。

約束

  シタデルやブレバン・ハワードなどで資産運用担当者を務めた後、現在はセプター・パートナーズでコンサルタントをしているマシュー・フェルドマン氏は「風景が一変した」と語り、ノルドビグ氏のような人物が「超富裕層の顧客が数人いればいいニッチ市場を見つけた」と述べた。

ノルドビグ氏のような人物が「超富裕層の顧客が数人いればいいニッチ市場を見つけた」

Photographer: Christopher Goodney/Bloomberg

  だが、同氏の至れり尽くせりのサービスに大金を払ったり、自社でクオンツ分析をするために博士号取得者をたくさん雇う予算がないヘッジファンドにも、ノルドビグ氏のエクサンテは対応する方針だ(社名はラテン語のエクスとアンテを合わせたもので、事前を意味する)。データ事業の準備が完全に整えば、かつてなら大手クオンツ会社にしかなかったようなデータ分析ツールをウォール街で一般提供すると同氏は約束している。

原題:Wall Street’s 0.01%: The Guru Who Only Talks to Hedge-Fund Elite(抜粋)

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