7&iHD:新社長の再建策を待つ市場、「石」を取り除く方法は

  • 就任後100日めどに改革案策定と発言、この期間に株価は7%下落
  • 重石の詰まったリュック背負っては泳げない-野村証

経営トップ交代騒動から半年余りがすぎた。セブン&アイ・ホールディングスのかじ取りを任された井阪隆一氏は、5月の社長就任時に100日で重要課題を洗い出し、新たな改革案を打ち出すと明らかにした。公表は10月6日の中間期決算発表に合わせる予定で、株主や投資家からは不採算事業の改革を期待する声が上がっている。

  野村証券の正田雅史アナリストは、採算性が低い事業や赤字事業を石に例え、「石の詰まったリュックサックを背負って泳いだら絶対に沈む。まずはリュックサックの中から石を取り除く作業をしないと」ならないと指摘する。

井阪社長

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  井阪社長は8月、傘下の通販事業で3期連続赤字のニッセンホールディングスの抜本的な事業構造改革を目指して完全子会社化を発表したほか、低採算にあえぐそごう・西武の百貨店事業では一部店舗の閉鎖を決めた。しかし、市場はまだリュックサックに石が残っているとみている。井阪社長の就任以来、7&iHD株は7%下落した一方、経営統合で国内コンビニ店舗数2位に浮上したユニー・ファミリーマートホールディングスは17%上昇している。ブルームバーグは井阪社長にインタビューを申し入れたが実現していない。

利益貢献度

  前期(2016年2月期)実績を見ると、事業別売上高で総合スーパー事業はコンビニに次ぐ34%を占める一方、営業利益では2%にとどまる。事業の多角化を目的に進出し、売上高の15%を占める百貨店は営業利益への貢献度はわずか1%。営業利益の8割超をたたき出すコンビニ事業への依存度が高い。

  野村証の正田アナリストは、不採算の一部百貨店やスーパーは「切り離すしかない」と言う。井阪社長は5月の就任会見で、傘下会社について経営陣と毎月会合を持つ考えを示し、「店舗ごとに地域社会での役割、存在意義を吟味しながら精査したい」と述べていた。

  運用資産額が1兆円を超えるしんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、成長戦略では「スクラップ・アンド・ビルドのスピード感」が重要で、「どれくらいのスピード感を持って懸案の課題に取り組んでいくのか」が成否を見極める材料になるという。

  7&iHDの松本稔広報担当は電話取材に、改革案は発表に向けて精査中で、コメントを控えると述べた。

コンビニ社長

  7&iHDでは今年4月、鈴木敏文前会長兼最高経営責任者(CEO)が、当時子会社のセブン-イレブン・ジャパンの社長だった井阪氏を退任させる人事案が取締役で否決され、これをきっかけに、自身の退任を決めた。井阪氏は同コンビニチェーンを率いて消費増税などの逆風を乗り切り、43カ月にわたって売上高を伸ばしてきた実績などが社内外で評価され、7&iHD全体を社長として率いる役割を託された。

  鈴木氏退任をめぐっては、物言う株主として知られるダニエル・ローブ氏が示した懸念も背景にあった。ローブ氏は書簡を通じ、鈴木氏が自らの次男を後継に据えようとする世襲の動きに警告を発し、井阪氏が7&iHDを率いる候補者の最右翼であるべきだと主張していた。鈴木氏は退任の意向を明らかにした会見の場で、7&iHDの取締役を務める次男の康弘氏を後継に据える考えを否定した。

  ローブ氏率いる米ヘッジファンド運営会社、サード・ポイントに対し、ブルームバーグは井阪社長の課題について取材を試みたが、これまでに回答を得られていない。

「弱いリーダー」の印象も

  井阪社長の「就任後の数カ月間の印象は極めて重要」だと国際経営開発研究所(IMD)の兪昊教授は話す。井阪氏が示した改革案を打ち出すまでの100日という日数と、実際の「発表時期が大きくずれると、井阪氏は弱いリーダーだという印象を与えてしまう」と指摘する。9月15日で就任からは112日となった。

  アバディーン投信投資顧問の岡村慧アシスタント・インベストメント・マネジャーは「ニッセンや総合スーパーなど、取り組みが必要な課題はいろいろある」と指摘。「最も重要なことは、国内事業が中長期的に持続的な成長を遂げられる存在であることだ」と英語による電話取材で語り、時間をかけて改革案を練ることには理解を示した。ブルームバーグの集計データによると、7月末時点でアバディーンは7&iHD株を500万株以上保有する。

  セブン-イレブンを世界最大の小売りチェーンに育て上げた鈴木前会長が経営の第一線から身を引いた後、井阪氏はグループ経営で成果を出せるのか。野村証の正田氏は、「みんな今はお手並み拝見」だと話す。井阪氏には鈴木氏が持っていたカリスマ性はないが、それは「世の中に関係ない。資本主義は利益誘導」だと話し、業績で結果を出すことが求められていると述べた。

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