なお長期国債買い入れを主張する向きも、日銀内で次の一手に-関係者

  • 異次元緩和の柱だった長期国債買い入れ、政策委員会内で増額に賛否
  • 黒田総裁の講演では、マイナス金利の功罪を指摘

日本銀行内では、20、21の両日開かれる金融政策決定会合で行うマイナス金利付き量的・質的金融緩和の総括的な検証後の次の一手として、長期国債の買い入れを望む向きが引き続き存在することが、事情に詳しい関係者への取材で分かった。

  こうした声が根強く残っていることから、検証後に示される追加緩和の選択肢は、マイナス金利の深掘り、長期国債の買い入れ、リスク資産の買い入れのうち、どれか1つを重視する内容にはならない公算が大きい。

  複数の関係者によると、量、質、金利の3次元の追加緩和のうち、どのような手段、組み合わせが最も適切かについて、政策委員の見解が分かれている。このため、検証後に追加緩和が行われるか否か、行われるとすればどのような手段が取られるか、不透明感が増している。

日銀本店

Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg

  黒田東彦総裁は5日の講演で、総括的な検証は2%の物価目標を「できるだけ早期に実現するために何をすべきか」を議論するもので、「緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べた。さらに、「量、質、金利の各次元での拡大は、まだ十分可能だと考えているし、それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)から外すべきではない」と述べている。

  一方で、マイナス金利について「金融仲介機能に与える影響についても考慮する必要がある」としたほか、「マインド面で、人々の間に広い意味での金融機能の持続性に対する不安をもたらし、経済活動に悪影響を及ぼす可能性には留意する必要がある」との認識も示していた。

過半数が追加緩和を予想

  ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に7-12日に実施した調査で、来週の決定会合で追加緩和を行うとの予想が23人(54%)と過半数に達した。9月会合での緩和を予想した23人はその手段(複数回答)として、マイナス金利拡大(14人、61%)と長期国債買い入れ増(13人、57%)を挙げた。

  長期国債の買い入れについては、持続可能性への懸念などから7人がレンジ化の可能性を指摘している。9月会合以降も含めると、想定される手段はマイナス金利拡大(23人)が長期国債の買い入れ増(15人)を大きく引き離した。

ブルームバーグが実施した調査結果はこちら

  複数の関係者によると、来週の決定会合で行う総括的な検証の一環として、現在7-12年としている長期国債買い入れの平均残存期間を撤廃を含めて柔軟化することを検討している。年限が長い国債と短い国債の利回りの差が縮まり、フラット化し過ぎたイールドカーブ(利回り曲線)を調整する手段の1つとすることが狙い。

既に発行額の3分の1を保有

  複数の関係者によると、引き続き長期国債の買い入れ増額を志向する向きは、こうした買い入れの柔軟化には反対していないものの、買い入れ増額を次の一手の選択肢から外すことには反対している。日銀は現在、長期国債について保有残高が年間80兆円ペースで増加するよう買い入れており、保有残高は既に発行額のおよそ3分の1に達している。

  日銀内では、現在80兆円ペースの長期国債買い入れについて、70-90兆円など下限が80兆円を下回るレンジにすると市場から金融緩和の縮小と受け取られるリスクがあるとの声も出ている。

  株価連動型上場投資信託(ETF)の買い入れを年間6兆円にほぼ倍増した7月28、29日の金融政策決定会合の「主な意見」によると、ある委員は「金融緩和の『量』の限界は、国債の発行残高である」と主張。金融緩和の出口で、金利の上昇により日銀の収益がマイナスに なりうることが金融緩和の制約になるという議論があるが、「そのような制約はない」と述べている。

  一方で、同じ会合では、「生保の資産・負債のマッチング行動等を背景に、超長期国債は需給がひっ迫するもとで流動性は大きく低下しており、先行きボ ラティリティが高まるリスクがある。これは国債買い入れの困難度の高まりを象徴しており、国債市場全体の将来の姿を先取りしている」という意見も出た。

  複数の関係者によると、日銀内では、巨額の長期国債を買い続ける現在の量的・質的金融緩和の持続可能性について懸念を示す意見が増えつつあり、政策運営はより慎重に効果とコストを見極めるべき局面に来ているとの見方が広がっている。

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