「プラチナカード」も困った、金価格下回る異例事態-投資家は歓迎

  • 田中貴金属の1-8月の直営7店舗でのプラチナ地金販売は17%増
  • 金よりも安い価格の状態が続きプラチナ投資への関心は継続

ゴールドカードよりも上位に位置するクレジットカードと言えばプラチナカード。金よりも希少性が高いことが背景にあるが、実際の貴金属市場ではその価値が逆転するという異例の事態が続いている。価格は割安との判断から日本では個人投資家によるプラチナ地金への投資が高水準で推移している。

プラチナ地金

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg News

  環境関連の会社を経営する中嶋亨さん(70)は今月、プラチナ地金500グラムを購入した。「プラチナの方が希少性が高いのに金価格と逆転現象が起きている」と注目。資産分散のため今春初めて金地金を購入したというが、それ以降プラチナ価格の方が安い状況に関心を持ち続け購入を決めた。

  中嶋さんのように価格逆転に注目する個人投資家は多い。「プラチナ生産がよく間に合ったな、というくらいの異常現象だった」。国内最大の地金商、田中貴金属工業・貴金属リテール部の加藤英一郎部長は昨年を振り返る。同社の2015年のプラチナ地金の販売量は前の年に比べて3.6倍の16.7トンと急増し、過去最高を記録。英貴金属調査・製錬会社のジョンソン・マッセイによると、田中貴金属は資産用のプラチナ販売で世界一の規模となった。生産工場での能力ぎりぎりの増産態勢で乗り切った。

  加藤部長は「金は世界的に資産用として認知されているが、その金よりも価格が安くなり、お得だということで爆発的に増えた」と説明。日本では結婚指輪などプラチナ製の宝飾品を好む傾向があることから「金もプラチナも投資対象にしているのは日本独自」という。16年1-8月の直営7店舗でのプラチナ地金の販売量は前年同期比17%増と引き続き投資家の関心は高い。

  プラチナの国際価格は過去、大半の期間において金価格を上回ってきた。14年末までの20年間では平均で1オンス当たり約250ドル上回っている。世界の金鉱山の生産量が年間約3000トンに対してプラチナは200トンに満たない。こうした希少性もあり、「プラチナ」はより格上のサービスを示す代名詞として広く使用されている。

  ところが、プラチナと金の価格逆転は15年1月から続いている。世界的な低金利や金融緩和などで資金の逃避先として金が注目される一方、自動車の排ガスを抑制する触媒に利用されるなど産業用途の比率も高いプラチナは中国での自動車販売動向などにも価格は影響される。昨年9月、独フォルクスワーゲンによる排ガス試験での不正発覚を機に同社の自動車販売が落ち込んだこともプラチナ価格下落に拍車を掛けた。

  貴金属調査会社の英トムソン・ロイターGFMSでは17年の金価格の平均を1オンス当たり1350ドル、プラチナは同1235ドル、18年の平均は金1400ドル、プラチナ1350ドルと予測。プラチナ価格が金を下回る状態が続くとの見方を示している。 

  かつて三菱商事でプラチナトレーダーとして活躍したコモディティーインテリジェンスの近藤雅世社長は「プラチナ取引の市場参加者が減少したことで価格は需給を正確には反映していない状況だが、これだけ長く金との価格逆転が続くのは珍しい」と指摘。ただ、プラチナの自動車向け需要は堅調な一方、価格低迷で鉱山での生産減が見込まれるとして「長期的にはプラチナ価格は強い」とみている。

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