ベンチャー目線で8万人企業操る、経営幹部半減-リクシルG社長

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  • 工具ネット通販のMonotaROトップから転身
  • 国内の住宅改修・リフォーム市場にビジネスチャンス

住宅設備最大手のLIXILグループのかじ取りを担う瀬戸欣哉社長(56)が就任早々着手したのは経営幹部人員のスリム化だ。統合や相次ぐ買収で事業規模が肥大化する中、効率的組織が新たな企業価値の創造につながるとみており、その考えはベンチャー企業の経営で培った経験に裏打ちされている。

  瀬戸社長はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、「どんな日本の会社でも、統合されるとマネジメントの上層部は非効率的になる。だからこそ私は再編しようとした」と説明。今のリクシルGは国内外の事業価値を一層高めることが求められており、「新しい価値やビジネスを創造できる私のような起業家を雇う必要があった」と述べた。

  瀬戸社長は、住友商事を経て工具・資材のインターネット通販会社であるMonotaROを創業、東証1部上場企業にまで育てた。同社会長を兼任しながら、6月に全世界で約8万人の従業員を抱えるリクシルGのトップに就任。7月から新たな経営管理体制に移行した巨大企業は、執行役員を廃止し、経営幹部の数を114人から53人と半分以下に減らした。また、同月には木材や建材のプレカット製品を扱う子会社ハイビックの投資会社への売却も決めた。

瀬戸欣哉社長

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  「不要な階層や組織を一掃し、シンプルな組織にしていかなくてはいけない」と話す瀬戸社長は、新しいトップとしてまず取り組むべきは「日本でより良いバリューをつくっていくこと、買収した海外企業の価値を上げていくことだ」とみている。

  リクシルGの中核事業会社であるLIXILは2011年に旧トステム、INAXなど住宅建材・設備機器メーカー5社が統合して誕生。人口減少で国内の新築住宅市場が縮小する中、前社長時代に米国最大の衛生陶器メーカーのアメリカン・スタンダード・ブランズ、ドイツの水栓金具大手のグローエを相次ぎ買収、グローバル企業への転換を図った。一方、昨年5月には海外子会社の不適切な会計処理が発覚、関連損失の計上などで16年3月期は6期ぶりの最終赤字に転落した。

  瀬戸社長は、「バランスシートに比べ効果的に利益を生み出していないことは事実」と認めつつ、現段階で一段の事業売却の必要性は「必ずしもない」と発言。コスト削減と新しい価値創造の「2つを同時に行っていく」と意気込みを語る。

  同社長が国内で潜在需要が高いとみるのは、住宅の改修・リフォーム市場だ。野村総合研究所の予測では、2030年度の日本の新築住宅着工戸数は約54万戸と16年度推定の88万戸から3割強減る半面、リフォーム市場は6.5兆円とほぼ横ばいの見通し。請負業者の不足からリフォーム需要は拡大し切れておらず、「最も良いストラテジーの1つは複雑な施工、組立が不要な製品を作ること。3日かかっていたドアの設置が1日でできるようになれば、施工にかかる人数が同じでも売上高を3倍に伸ばすことができる」と言う。

  また、海外事業との親和性を高める点では、衛生陶器を製造する榎戸工場(愛知県常滑市)にマザー工場としての機能を持たせ、海外子会社社員が技術習得に訪れている。水栓金具が主力の独グローエとも共同で、欧州向けの新しい温水洗浄便座を開発した。

LIXIL工場に並ぶ衛生陶器群

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  国際会計基準(IFRS)の任意適用を開始した17年3月期の純損益は、280億円の黒字化を計画している。8月に公表した4ー6月期(第1四半期)決算は、工事進捗(しんちょく)の遅れなどで7%減収となった一方、前年同期の一過性損失の剥落や為替差損益の好転で純損益は116億円の黒字に浮上した。

  株価は4年ぶり安値となった7月6日の1593円を底に、直近で一時2200円台にまで回復したが、14日時点の年初来騰落率はマイナス22%とリクシルGが属する東証金属製品株指数のマイナス16%をアンダーパフォームする。15日のリクシルG株は、一時0.4%安まで下げた後、0.7%高まで切り返すなど2100円付近でのもみ合い。

  クレディ・スイス証券の望月政広アナリストはリクシルG株について、海外企業の買収価格が高く、「収益性が出ないと将来の減損リスクになる可能性があり、非常に難しい局面」と分析。立花証券の入沢健アナリストは、瀬戸社長に対する期待感はあるが、「経営者が変わったので買いという見方はしていない。新しいビジネスを立ち上げるより、今あるものをうまく整理することが課題」との認識だ。

  リクシルGは9月末に、日本政策投資銀行が保有する独グローエの議決権付き優先株を取得し、完全子会社化する。取得価額は3億8500万ユーロ(約445億円)。会社側は、普通社債を通じた調達と借入金、手元資金を充てる予定としている。

東証金属製品株指数とリクシルG株の年初来パフォーマンス比較

(10段落にLIXILグループ株の15日の推移を追記.)
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