日銀ETF購入、日本株の流動性問題つながらず-ブラックロック

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  • 時価総額全体に占めるETF割合は3%程度、米国に比べ小さい
  • 「最適化」投資で流動性低下時にも対処可能

日本銀行が進める指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ策は、日本株市場における流動性問題を引き起こしてはいない。世界最大の資産運用会社である米ブラックロックの見解だ。

  ブルームバーグの集計では、日銀が現在のペースでETFの購入を続けると、日経平均株価を構成する225銘柄のうち、2017年末には55銘柄で間接的に筆頭株主となる見通し。市場関係者の間では、浮動株の少ない個別銘柄の流動性が低下すれば、値動きが荒くなる可能性があり、将来的に指数への影響が大きくなりかねないとの懸念が出ている。

  ゴールドマン・サックス証券の試算(8月4日時点)では、日銀によるTOPIXの間接保有比率は発行済み株式総数ベースで2%、浮動株調整済みの時価総額ベースで3.2%となっている。ETF買い入れの増額により、1年後には3.2%、5.1%へそれぞれ上昇する見通し。時価総額1000億円以上の個別銘柄で最も間接保有比率が高いアドバンテストのケースでは、時価総額の13%を日銀が保有(8月1日時点)し、1年後には20%を超す計算だ。2位のファーストリテイリングの場合、12%から19%へと高まる見込み。

日銀前通りを行く歩行者

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  ブラックロックのiシェアーズ事業部門で日本ヘッドを務めるジェイソン・ミラー氏は、日本株の時価総額487兆円に対し、ETFの占める割合は3%程度に過ぎないと指摘。「1、2銘柄については大きなインパクトはあるが、市場全体でみれば、ごく一部に過ぎない。日本は、米国や中国に次ぐ世界3位の株式市場で、ETF市場もまだ導入から早期の段階にある」と話す。

  ミラー氏によると、米国では時価総額全体に占めるETFの比率は8%。これに対し日本はETFの持ち分がまだ少なく、複数の銘柄では浮動株占有率の高さが問題になる可能性はあるが、日本株市場全体で捉えれば、浮動株枯渇への懸念は行き過ぎとみる。

  さらにミラー氏は、仮に流動性が低くなったとしても、ETF運用者には対処法があると言う。低流動性銘柄を含む全ての指数構成銘柄の代わりに、相関性が高い銘柄群で置き換えることができるためだ。「最適化」として知られるこうした手法は、ある銘柄が売買停止となった際などによく使われる。

  もっとも、市場関係者の間ではETFの買い入れ額を増やしてきた日銀の動きについて、否定的な見方もある。三井住友アセットマネジメントの平川康彦シニアファンドマネジャーは、「ファーストリテイリングやミツミ電機などの銘柄は時価総額に対し、浮動株が少ないのは間違いない」とし、東証1部の時価総額に対するETF全体のウエートが低くても、「浮動株が少ない銘柄を買い続けると、日経平均のみ異様な形で上がっていくことになる」と懸念を示す。

  日銀は20ー21日開く金融政策決定会合で、異次元緩和に関する総括的な検証をまとめる。黒田東彦総裁は5日の都内での講演で、検証については「あくまで2%の早期実現のために行う検証なので、市場の一部で言われているような緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べた。

  米ノースウッド証券(ニューヨーク)のジェームズ・レーランダー最高経営責任者(CEO)は、日銀は近い将来に持ち株を売却する投資家ではないとし、「本当の問題点は政府のポジションが長期にわたること。それが浮動株比率にインパクトを与える」と指摘した。

ブラックロックのiシェアーズ日経225ETF受益権と日経平均株価の推移

  日銀は7月29日の会合で、ETFの保有残高を年間約3兆3000億円から約6兆円に増やすペースで買い入れることを決定。同決定後の8月は従来型ETFを347億円で2回、707億円で4回買い入れた。9月は14日までの時点で733億円を5回買い入れている。

7月会合での決定内容についてはこちらをクリックして下さい

  東京証券取引所が15日発表した投資部門別売買動向(東京・名古屋2市場の1、2部等合計)によると、売買ウエートの最も大きな海外投資家は9月1週に現物株を3338億円売り越し、2週連続の売り越しとなった。個人は2週連続で売り越し、信託銀行も8週ぶり売り越しに転換。積極的な買い手が不在の中で、日銀の継続的なETF買いは日本株の下値を支える役目を果たしている。

(最終段落に投資部門別の動向を追記します.)
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