緩和予想がなお半数超、手段はマイナス金利拡大が最多-日銀サーベイ

  • マイナス金利に懐疑論も-緩和なしも前回ゼロから14%に増加
  • 長期国債の買い入れはレンジ化か、為替円高リスクあり疑問の声も

日本銀行が来週開く金融政策決定会合で、追加緩和を予想するエコノミストがわずかながら半数を上回っていることが、ブルームバーグが実施した調査で明らかになった。緩和手段としてはマイナス金利の深掘りが引き続き有力な一方で、黒田東彦総裁がそのコストに言及したことで慎重論も根強い。

  エコノミスト43人を対象に7-12日に実施した調査で、20、21両日の決定会合で追加緩和を行うとの予想が23人(54%)、11月は7人(16%)、12月は1人(2%)、来年1月以降が6人(14%)。一方で、追加緩和なしは6人(14%)とゼロだった前回7月会合前の調査から増えた。

  9月会合での緩和を予想した23人はその手段(複数回答)として、マイナス金利拡大(14人、61%)、長期国債買い入れ増(13人、57%)、マネタリーベース拡大(12人、52%)、不動産投資信託(J-REIT)買い入れ増(7人、30%)、指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れ増(2人、9%)を挙げた。

日銀本店

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  9月会合以降も含めるとマイナス金利拡大(23人)が長期国債の買い入れ増(15人)を大きく引き離した。長期国債買い入れについては目標にレンジを設けると予想する回答が増えたのも特徴だ。

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コストとベネフィットに言及

  日銀は9月会合で、マイナス金利付き量的・質的金融緩和について総括的な検証を行う。黒田総裁は5日の講演で、2%の物価目標を「できるだけ早期に実現するために何をすべきか」を議論するのであり、「緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べた。一方で、大規模緩和のベネフィットだけでなくコストについても言及。マイナス金利の副作用も紙幅を割いて説明した。

  明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「『2%の早期達成には何が必要か議論する』としている以上、追加緩和は避けられない流れだ」と指摘。市場に「日銀が白旗を掲げた」と思われないようにする必要もあり、追加緩和の可能性は70%以上を見込む。手段は「マイナス金利の深掘り」が有力とみる。

  JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストも、総括的な検証では金融機関の収益や金融システム面への潜在的な悪影響があることは認めつつも、金利低下が実体経済を刺激する効果の方が大きいとして、「従来の政策をポジティブに評価するだろう」と指摘。日銀は検証で説明責任を果たしたとして、9月会合でマイナス金利の深掘りを軸とした追加緩和に踏み切るとみる。

3次元以外のアイデアとは

  黒田総裁は5日の講演で、3次元以外のアイデアも「議論の俎上(そじょう)から外すべきではない」と述べた。そうした中、マイナス金利が金融機関の収益に与える悪影響を少しでも緩和するための措置として、日銀が金融機関に対して資金を貸し出している貸出支援基金にマイナス金利を適用するとの見方も増えつつある。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「9月会合での追加緩和の可能性は3割程度」とした上で、追加緩和があるとすればマイナス金利の深掘りのほか、「貸出支援基金を通したマイナス金利での資金供給の開始」といった可能性が考えられるという。

  河野氏以外にも、明治安田生命の小玉氏、ジャパンマクロアドバイザーズの大久保琢史チーフエコノミスト、野村証券の松沢中チーフ金利ストラテジスト、RBS証券の劔崎仁シニアエコノミストが貸出支援基金のマイナス金利化の可能性を指摘している。三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は財投機関債や地方債などの買い入れの可能性があるとみる。

マイナス金利深掘りに懐疑的な声も

  9月会合でのマイナス金利の深掘りには懐疑的な見方も強い。シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは総括的な検証について「現行の枠組みは正当化し、その下で金利、量、質の3次元で政策を最適、柔軟に運営する方向性を示すのが落としどころではないか」という。マイナス金利という選択肢を捨てる可能性は低い一方で、「すぐに深掘りを行うことも考えにくい」とみる。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストも「マイナス金利の深掘りは、相当のベネフィットが説明できないと闇雲(やみくも)には踏み切らないだろう」とみる。追加緩和の時期については、六車氏は11月、村嶋氏は来年1月以降と予想している。

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストも「実際にはマイナス金利が今後の緩和策の主軸を担うことになるだろう」としながらも、9月は検証結果を見せるにとどまり、「実際の緩和は11月の展望リポート以降に持ち越し」とみる。

国債買い入れはレンジ化か

  長期国債買い入れについては、持続可能性への懸念などから7人がレンジ化の可能性を指摘している。明治安田生命の小玉氏は残高目標をレンジで示す形に変更し、事実上のテーパリング(買い入れペースの縮小)の世界に入ると予想。いずれ限界に突き当たることを考えれば、総括的な検証を行う今回が「軌道修正の絶好のチャンス」であり、これを逃すと「変更の機会を失ってしまう恐れがある」という。

  ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストも、国債の買い入れ額を現行の年80兆円程度から「70-90兆円程度といった幅を持たせる形に変更し、買い入れオペをより柔軟にし、持続性を高めようとする可能性はある」とみる。

  東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「先行き行き詰まる恐れがあることを考慮すると、レンジ化することが望ましいが、足元で為替相場に円高圧力がある中では厳しそうだ」と指摘。「なお書き」のような形で、「債券市場を過度にゆがませる恐れがあるときは柔軟に対処するといった表現がなされるのではないか」とみる。

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