狩られる側に回った日本国債の利回りハンター、超長期債9%損失

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  • 日銀のメッセージを素直にイールドカーブに反映-JPモルガン証
  • 新発20年債利回りは0.475%と3月16日以来の高水準に

日本銀行による前例のない金融緩和策の「総括的な検証」まで、あと1週間余り。国債市場では検証結果を想定して超長期債の利回り上昇に拍車が掛かり、年央までわずかな利回りの争奪戦を繰り広げていた投資家は苦境に陥っている。

  新発20年債利回りは12日に0.475%と3月16日以来の水準に上昇。ブルームバーグのデータによると、残存期間20年以上の日本国債は7-9月期の収益率がマイナス8.7%。国債利回りは7月までに全ての年限で0.1%未満に下げて過去最低を更新したが、同月末からは金融緩和の先行き不透明感から上昇傾向に転じている。

  JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは「マイナス金利の深掘りはあり得るが、超長期債の利回りがあまり下がるのは望ましくないという日銀のメッセージを素直にイールドカーブに反映する動きだ」と指摘。ただ、「日銀にとって心地良い水準がどの辺りなのかは分からないので、疑心暗鬼な状態だ。20年債入札を控え、警戒感が高まっている」と言う。

日銀本店

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  黒田東彦総裁によるマイナス金利政策の導入で、今年前半は国内外の金利低下と利回り曲線の平たん化を先導した日本の国債市場。しかし、足元では世界的な債券売りの震源地になるのではないかとの懸念が浮上している。先週は米連邦準備制度理事会(FRB)幹部が追加利上げの必要性を訴える一方、欧州中央銀行(ECB)は追加緩和を見送った。米ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高投資責任者(CIO)も、金利上昇とインフレ高進に備える時が来たと警告を発した。

  20年債利回りは7月上旬に初めてゼロ%を割り込み、マイナス0.005%まで低下。30年債が0.015%、40年債は0.045%、10年債もマイナス0.30%と過去最低を更新した。短めの債券利回りが円を有利な条件で調達できる海外勢や日銀オペへの転売目的の買いにより、マイナス圏に定着する中、プラスの利回りを求める年金基金や保険会社などの資金が超長期債に集中した。

  ところが、日銀が9月20、21日の決定会合で黒田緩和を検証すると7月末に表明すると、20年債利回りは8月9日の0.335%まで2週間足らずで2倍超に上昇。先週半ばからは再び上げが加速した。米バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの指数では、残存10年を超える日本国債は7-9月期の収益率がマイナス4.1%と2004年以来の水準に低迷している。

国債購入額を加減

  日銀が超長期債利回りの過度な低下を懸念しているという市場の思惑に拍車を掛けたのが、今月2日の国債買い入れオペだ。残存10年超25年以下と25年超の合計3200億円程度が通知されるとの見方があったが、ふたを開けてみると同10年以下までの3区分だけだった。  

  日銀は市場の動向に応じて国債購入額を加減してきた。昨年12月には買い入れの平均残存期間を7-10年程度から7-12年程度に長期化すると発表。10年超を1回当たり3800億円から4400億円程度に増やした。マイナス金利導入後は大幅な利回り低下を背景に、4月からは4000億円、6月は3600億円、7月以降は3200億円程度と減額を重ねてきた。

  新発2年物国債と30年債の利回り格差は6月29日に33ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と過去最低を記録したが、12日には約81bpと3月17日以来の水準に急拡大している。ブルームバーグのデータによれば、30年債利回りが過去最低の0.015%を付けた7月6日に購入した投資家は足元までの金利上昇で、税引き前ベースで約12%の損失を被った計算となる。

  黒田総裁は5日の講演で、マイナス金利政策と国債購入の組み合わせはイールドカーブ全体の低下に大きな効果をもたらしたと指摘。その一方で、金利低下や長短金利差の縮小が金融機関の収益に悪影響を及ぼし、長期・超長期金利の大幅な低下は保険や年金の運用利回り低下を通じた金融商品の販売停止や退職給付債務の負担増につながっているとの認識も示した。

  ロイター通信は9日、日銀が景気刺激効果の高い中期金利などの抑制を重視し、金融機関の収益減や生保・年金の運用難といった副作用をもたらしているイールドカーブのフラット化の修正策を検討すると報じた。

金利は底打ち

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、マイナス金利の深掘りにイールドカーブをフラット化させる効果があるのは確かだと指摘。イールドカーブの自然なスティープ化を促す方がよほど容易だろうとみている。

  主力ファンド「ダブルライン・トータル・リターン・ファンド」の運用資産が617億ドルに上るガンドラック氏は8日、「金利は底打ちした。ここ数年話してきたように短期的には上昇しないかもしれない。しかし、何かが始まりつつあると思う。守りの構えを取るべきだ」と主張。保有資産のデュレーション(平均回収期間)短縮や現金化などでボラティリティに対処するよう勧めた。

  財務省は9日に開いた主要な国債投資家との意見交換会で、インフレ率の低迷で不振が続く物価連動債を今年度4000億円減らし、40年債を同額増やす案を提示した。財務省幹部によると、投資家からは増発額の一部を20年債や30年債にも回してほしいとの要望があった一方、市場の関心は日銀の検証に集中しており、運用方針も検証結果を受けたイールドカーブの動向を見極めてからとの意見が出た。

  マシュー・ホーンバック氏率いるモルガン・スタンレーのアナリストは顧客向けリポートで「日本の投資家は日銀がイールドカーブのスティープ化を望んでいると、すっかり信じ切っている」と指摘。こうした認識が売買行動を通じて現実化しており、市場のコンセンサスと今、闘うのは賢明ではないと語った。

(第9段落以降を追加して更新します.)
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