MUFG:日本株調査で新たな試みへ、アナリストへの規制強化受け

更新日時
  • 決算見通しなど「早耳情報」から長期的な深堀調査へ-潮流に変化
  • 欧州での新規制MiFIDⅡもリサーチリポートの質向上を後押し

三菱UFJフィナンシャル・グループが日本株調査でビッグデータを活用した新たな試みに乗り出す。金融規制の強化で、決算に関するアナリストの企業への事前取材が禁止される中、先を見通すことが難しい産業分野などで独自の長期的視点に立った調査を進めるのが狙いだ。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の塩原邦彦エクイティリサーチ部長は、月内にも一部の産業に関する機関投資家向けリポートを発行する計画を明らかにした。日本や米国、欧州での100万件超の特許情報をクラスター分析し、10年後に特定の技術分野で競争優位に立つ企業を探り出すなど長期的に業界を予測する内容だ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  日本証券業協会が未公表の決算に関するアナリスト取材を原則禁止するガイドラインを取りまとめる中、国内外の証券各社は業績予想などの「早耳情報」から、中長期的な観点に基づく企業分析にシフトしつつある。ドイツ証券クレディ・スイス証券は法人関係情報の不適切な管理体制で2016年4月までに金融庁から行政処分を受けている。

  塩原部長はブルームバーグの取材で「予測が難しい中長期の見方をどう提案していくかにフォーカスは移っていく」と指摘。特許情報の解析により「10年後にその産業がどんな方向に向かっているのか、どんな商品が売れるのか、どの企業が先行開発に一番積極的に取り組み、中心的な技術を将来誰が握るのか」などを予測可能にすると述べた。

  MUFG株価の9日終値は前日比2.2円(0.4%)高の546.2円となっている。

ビッグデータへの支出、64億ドル

  グローバルに展開する金融機関は、リアルタイムに変化する膨大で複雑なデータをより良いサービスや迅速な意思決定に役立てようとしている。アクセンチュアのリポートによると、金融機関はこうしたビッグデータ関連に15年には64億ドルを費やしているが、その額は19年までに毎年26%ずつ増加するとみている。

  MUFGでは今回の特許情報のクラスター分析はビッグデータを扱う国内ベンチャー企業と共同で実施した。塩原部長は法令順守の観点から、今月にも発行するリポートの詳細についてコメントを控えた。共同で解析を行った企業についても非開示だという。

  いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「技術革新のロードマップなどが示されている長期的で深い分析は、決算プレビューができなくなる中、非常に重要になってくる」とみている。長期の観点で見れば四半期決算は「ノイズ」だったとし、「今後アナリストは公開情報に基づきいかに深く鋭く分析できるかで評価が決まるだろう」と語った。

監視体制の強化

  金融庁はアナリストの取材や情報伝達について、透明・公正性の観点から監視体制を強化している。昨年12月にはドイツ証が行政処分を受け、4月にはクレディS証に業務改善命令が出された。同社は毎年4月と10月に都内で開催していた機関投資家向けプレビューマーケティングを中止。決算プレビューのためのアナリストの企業訪問も止めた。

  野村ホールディングスは12月から企業への取材に基づいた決算予想は行っていない。ただ、アナリストの独自分析によるプレビューは引き続き発信していくという。みずほ証券では決算プレビューの発行を停止、アナリストによる取材も現在はしていない。大和証券グループ本社も今年に入り企業取材に基づく予想を止めた。

  ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真最高経営責任者(CEO)は、「アナリストリポートで一番重要視しているのは向こう3年間でこうなるというよりも、今走っている期の業績動向だ」と指摘した。その上で「決算プレビューが減ったのは仕方ないが、上期や下期の業績予想を主軸から外してほしくない」と述べた。

欧州での新規制

  三菱UFJモルガンの塩原部長は、18年から欧州で施行される第2次金融商品市場指令(MiFID Ⅱ)も証券各社の株式調査のあり方に影響を及ぼす可能性があるとみている。この新規制ではリサーチ費用をアンバンドリング(分離明確化)し、トレーディングに払うコミッションと区別することが求められる。

  塩原氏は「これまではどちらかが良ければブローカーとして付き合ってもらえたが、これからはリポートにいくらコミッションを払いますということになる」と指摘。「競争の中で勝ち残っていく」ためには、三菱UFJの比較優位なトレーディングプラットフォームにリサーチが追い付く必要があるとの見方を示した。

  三菱UFJモルガンが現在カバーしている日本企業は487社。年度内には500社まで増やす計画で、589社をカバレッジする業界トップの野村との差を縮めたい考えだ。同社は将来活躍できるアナリストの育成を目的に、過去1年半でジュニアアナリストを18人増やしている。

AIの導入を検討

  塩原部長はゴールドマン・サックスの元パートナーで、12年にクレディS証から移籍した。同氏によれば、移籍直後の三菱モルガンの海外投資家からのブローカー評価は15位前後だったが、現在は5位近辺まで改善してきたという。

  三菱UFJモルガンではビッグデータ活用のほか、企業の決算リポートに人工知能(AI)を導入することも検討している。塩原氏は「重要なことは新しいことをやること。新しいことをやることがブランディングだ」と語った。

英語記事:Crackdown Prompts Mitsubishi UFJ Rethink on Stock Research (1)

(第5段落に株価の終値を追加しました.)
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