【インサイト】JPモルガン同窓会バークレイズ支部にイエスマンの影

英銀バークレイズの上級幹部職に就きたいとしよう。その場合、セオリーとされる正しい靴とネクタイの合わせ方を知っていれば、関門をクリアするのに役立つかもしれない。しかし、JPモルガン・チェースの経歴が記載された履歴書ほど、採用を決定付ける切り札はなさそうだ。

  直近の例では、ティム・スロスビー氏が、ジェイミー・ダイモン氏のフォートレス(要塞)からバークレイズに亡命した。JPモルガンの株式グローバル責任者を辞め、バークレイズの法人・国際部門の責任者に就任する。投資銀行だけでなく、ウェルスマネジメント(富裕層向け資産運用)やクレジットカード業務も統括する役職で、大きな飛躍となる。

  スロスビー氏の移籍によって、「JPモルガン同窓会バークレイズ支部」さながらの印象を既に与えている集団はさらに大きくなり、バークレイズ内部の人材の層がそこまで薄く見える訳を行員や株主らは知りたいと考えるだろう。

JPモルガン・チェース

Photographer: Scott Eells/Bloomberg

  JPモルガンで30年余り勤務し、昨年12月からバークレイズで最高経営責任者(CEO)を務めるジェス・ステーリー氏は、今年に入り早々に周囲を元同僚で固める採用を進め、C・S・ベンカタクリシュナン氏を最高リスク責任者(CRO)、ポール・コンプトン氏を最高執行責任者(COO)にそれぞれ起用した。銀行業界で望み得る最高の人材だから採用されたのか、それともJPモルガンの同窓生人脈のおかげなのか。

  肥沃(ひよく)な大地に人材を求めようとするステーリー氏を責めるのは気の毒だ。欧州の銀行が米銀との利益の格差を埋めるための新たなアイデアを求める状況で、JPモルガンは層の厚い人材プールを提供している。だが、利益の押し上げとバランスシートの強化、行員の士気向上を実現する手段を各行が懸命に探っている今、バークレイズの経営陣が十分な多様性とバランスを備えた構成になるのか疑問を持つことは、正しいだろう。

  スロスビー氏のようなエクイティバンカーが、コスト圧縮やテクノロジー投資に役立つ経験を持っていることは確かだが、バークレイズは報酬・人員の削減にとどまらない複雑な課題を抱えている。同行は467億ポンド(約6兆3300億円)相当の「非中核」資産の処分を目指し、アフリカ部門の売却に動いている。さらに英国へのエクスポージャーも大きく、収入全体の半分以上を占めているが、欧州連合(EU)離脱の選択に伴う衝撃はこれからが本番となる恐れがある。また、減配の長期化で株主の忍耐も試されている。

  ジェス・ステーリー氏の新たなチームが同行を立て直すことができる確信を得たいと投資家は考えるだろうが、「同じようなやり方」では、やはりうまくいくまい。ステーリー氏には彼に異議を唱える補佐役が必要だ。自らが信頼する能力ある人材を同氏が招き入れていることは明らかであり、それは理にかなっている。しかし、「ジェスメン(ジェスの息のかかった人材)」が「イエスメン(イエスマン)」になるとすれば、好ましいことではなかろう。

  JPモルガン出身者の威光に実際どの程度の価値があるか、バークレイズはもうすぐ知ることになるだろう。

  (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:Barclays Must Watch that Jes Men Don’t Become Yes Men: Gadfly(抜粋)

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