【インサイト】賭け金をつり上げる黒田日銀-「総括的検証」で

日本銀行の黒田東彦総裁が、20、21日の金融政策決定会合で「総括的検証」を行うと言明したことで、日銀の政策見通しに関する思惑が交錯している。

黒田日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  物価上昇率が伸び悩む中、金融政策の限界や総裁任期終了が視野に入り、黒田総裁は3年前に提示した2%のインフレ率目標の達成に向け重圧にさらされている。中央銀行による猛烈な国債・株式などの金融資産購入が続く中で、どのような政策変更も債券・株式・通貨市場に影響を及ぼすだろう。

  こうした背景の中、ブルームバーグ・インテリジェンスでは、不確実性は依然高いものの、9月の会合では主要な政策枠組みの変更がない可能性が高いと考えている。主な論点は以下の通りである。

  • 黒田総裁が総括的検証の実施を決めたことで政策見通しは大きく分かれた
  • 日銀の現行の政策枠組みでは追加的な効果の減衰を避けられない
  • 総括的検証の結果、9月の会合で主要な枠組みについては現状維持の可能性が高い
  • ただし、黒田総裁の任期中のインフレ目標達成にこだわるなら、マイナス金利の深掘りと購入対象債券の種類の拡大がサブシナリオになる
  • 超長期債やドル建て債券の買い入れは将来の選択肢か

• 原文の英語記事:BI Primer: BOJ’s Review Raises Stakes for Global Markets BI Primer: BOJ’s Review Raises Stakes for Global Markets

  • 主要な政策手段とその効果の検証を日銀視線で行うと、量・金利・質のいずれの主要な政策ツールも効果を発揮しており、現行の政策を追認する可能性が高い
  • 円高・資源安の効果が一巡し、ヘッドラインのインフレ率がプラスの水準に戻る2017年初めのタイミングで柔軟なインフレ・資産買い入れの目標に移行するとみる
  • 従って、総括的検証の結果、9月の会合では「2年以内」の文言の削除など細かな変更はあるとみられるが、主要な枠組みについては現状維持の可能性が高い
  • もし、黒田総裁が任期中に達成することを至上目標とするなら、追加的な緩和のコストとベネフィットを比較衡量した上で、マイナス金利の深掘りと、購入対象債券を地方債や財投債、格付けが低い社債も含めて拡大することが選択肢となる
  • ただ、賭けによる副作用も大きく、現状ではサブシナリオとして考えている
  • 例えば、政策金利をマイナス1.25%まで引き下げているスウェーデンでは、住宅価格の高騰などの副作用もみられている
  • 超長期債や外債の購入は政府との調整が必要なため、将来の政策オプションだろう
  • 政府からの直接引き受けによる狭義のヘリコプターマネーはあり得ない
  • 賃金や名目GDPの目標は労働生産性など日銀が直接影響を与えられないものがターゲットとなり、現状では現実的でない

(増島雄樹氏はブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の日本担当チーフエコノミスト)

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