元米原子力規制委員会委員長のデール・クライン氏は、福島第一原子力発電所から出る汚染水のうち除去が困難なトリチウムを含んだ汚染水については、他の放射性物質を除去したうえで海洋に放出すべきだとの考えを示した。東京電力ホールディングスは増え続けるトリチウム汚染水の管理をタンク増設で対応しており、最終的な処理方法については判断を国に委ねている。

  国内外の専門家で構成される東電HDの原子力改革監視委員会で委員長を務めるクライン氏が、ブルームバーグのインタビューに応じた。「1000基ものタンクに汚染水をためていることに不安を覚える」とし、タンクをつなぐ配管や弁などが損傷して汚染水が外部に漏えいしてしまうよりも、水で薄めるなど濃度をきちんと管理したうえで放出する方が「ずっと良い」との認識を示した。この問題の解決に向け、海洋放出を認める政府の決定が望まれるとの見解を明らかにした。

デール・クライン氏
デール・クライン氏
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  東電HDによると、現在1日当たり300トンの地下水が原子炉建屋に流れ込んでおり、新たな汚染水となっている。多核種除去設備など複数の浄化装置でトリチウム以外の放射性物質を取り除いた汚染水は3月末時点で62万立方メートルにのぼり、約1000基のタンクに保管されている。トリチウムは一般的に健康への影響が小さいとの認識があることに加え、フランスでは許容できるコストでの除去技術はなく導入不可能との結論に至り、環境中への放出が続けられている。

  トリチウム汚染水への対処方法を検討するよう国際原子力機関に迫られた日本政府は6月、海洋放出や水蒸気放出など11の選択肢について技術的評価をまとめたが、最終的な処分方法については決断に至っていない。東電HDは3月に運用を開始した凍土壁で流れ込む地下水の量を減らすことで汚染水発生の低減を目指しているが、いまだ水量の低下には結びついていない。

  クライン氏は、「骨に蓄積するセシウムやストロンチウムと異なり、トリチウムは水のように体外に排出される」と述べ、トリチウム汚染水の放出に対する懸念は「感情的な問題」にすぎないとの見方を示した。政府の資料によるとトリチウムの半減期は約12年で、体内に入ったトリチウムは40日程度で半分が体外に排出されるという。そのうえで「東電や政府、研究機関などは、懸念を払しょくするための国民の教育が必要」と指摘した。

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