日銀:「総括的な検証」で企画局にスポットライト-21日に提出へ

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  • 先入観なしに検証作業を行うよう関係部局に指示-関係者
  • 企画局の枢要ポストは異例の長期態勢に-幹部人事

日本銀行は20、21両日の金融政策決定会合で総括的な検証を提出するため、執行部内で精力的な取りまとめ作業に取り組んでいる。

  複数の関係者によると、取りまとめを主導しているのは、雨宮正佳企画担当理事を筆頭に、内田真一企画局長、正木一博政策企画課長など企画局の少数のライン。総括的な検証に関わっている調査統計局、金融市場局、金融機構局など各部署に対しては、先入観を持たずに取り組むよう作業に先んじて指示が出ているという。

  複数の関係者によると、決定会合まで2週間となったが、総括的な検証でどのような結論が導き出されるのか、なお不透明感が強いという。日銀内には、2%物価の達成時期がなかなか見通せない中、量的・質的緩和の持続可能性を確保するため枠組みの柔軟化に踏み出す絶好の機会にすべきだ、という声が根強い一方で、緩和度合いは一切緩めるべきではない、との声もある。

  関係者によれば、1月末のマイナス金利導入の決定以来、極端にフラット化したイールドカーブの効果と副作用、これまでの政策がインフレ期待に与えた影響、国債市場の流動性や機能度も主要なテーマになるという。

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  中曽宏副総裁は6月9日の講演で、国債市場は本来「市場参加者の経済成長率見通しや物価観を映し出す鏡だ」と指摘。過去に例のない大規模な金融緩和によって「そうした鏡が曇ることのないよう、国債市場の流動性や機能度がどのように変化するかという点については、引き続き注意深く点検していきたい」と語っていた。

出所:日銀

Bank of Japan

  日銀は7月29日の金融政策決定会合で、指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れペースを年間6兆円にほぼ倍増する追加緩和を行うとともに、マイナス金利付き量的・質的金融緩和の下での経済・物価動向や政策効果について、総括的な検証を行うと表明。政策委員会の議長である黒田東彦総裁がその準備を執行部に指示した。

2%の早期実現に

  黒田総裁は5日の講演で、総括的な検証について、「市場の一部で言われているような緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べた。その上で、量、質、金利の各次元での拡大は「まだ十分可能だ」と述べるとともに、「それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)から外すべきではない」とも語った。

黒田日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは2日付のリポートで、総括的な検証について、市場では、政策変更予想にとどまらず、最終目標や操作目標の見直し等々、幅広い予想が飛び交っていると指摘。「正直言って何が出てくるのか全く見当がつかない状況だ」という。

  こうした状況は、日銀がサプライズ戦略を続けた結果、「市場との対話が事実上崩壊したことの表れ」であり、金融政策をめぐる思惑が市場の「不確実性の原因」となっていると指摘する。その上で、コミュニケーション戦略の再構築には「総括的な検証」が不可欠だと思われるが、今や「総括」に対する思惑が「大きな不確実性を市場にもたらしている」という。

企画局幹部

  総括的な検証の取りまとめ責任者である雨宮氏は理事2期目。1期目の2010年10月には白川方明前総裁の下、「包括的な金融緩和策」を事務方トップとして主導した。日銀は同緩和策の下で、主要中央銀行では日銀だけが行っているETFの買い入れを開始した。正木政策企画課長は4年目、内田企画局長は5年目に突入。一般に2年程度で異動することが多い幹部人事では異例の長期態勢だ。

  三菱東京UFJ銀行の関戸孝洋ジャパンストラテジストは、こうした人事について、黒田総裁の異次元緩和路線が揺らいでいると受け取られるリスクを最小限にしたい日銀の意図が現れている、と指摘した。

  黒田総裁は5日の講演で、総括的検証のポイントとして、「何が2%の実現を阻害したのか」と、マイナス金利付き量的・質的緩和の「効果と影響」の2点を挙げ、「あくまで2%早期実現のために行う検証」であることを強調した。

   黒田総裁は講演でマイナス金利について、貸出金利低下に今後どの程度波及するか一概に言えないと述べ、金融機関の収益圧迫を通じて金融仲介機能に与える影響は「政策が継続する期間によって変わり得る」と指摘。マイナス金利がマインド面で広い意味での金融機能の持続性に不安をもたらし、経済活動に悪影響を及ぼす可能性には留意が必要とも語った。

黒田総裁の5日の講演内容の記事はこちらをクリック

  JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは8月22日のリポートで、「総括的な検証では、日銀の政策目的である2%インフレの早期達成のための議論が中心になり、これを踏まえて追加緩和を発表する可能性が高い」としている。

  中国・杭州での20カ国・地域(G20)首脳会議に出席した安倍晋三首相は5日夜、現地での記者会見で、日銀の外債購入について「為替介入を目的とする場合は、日銀法上、日銀が自ら行うことは認められていないと承知している」と述べた。その上で、金融政策の具体的手法は日銀に委ねるべきだと考えており、「私は黒田総裁の手腕を信頼している」と言明。引き続き2%の物価安定目標達成に向け「しっかりとした政策手段を取っていくものと考えている」と述べた。

(最終段落に安倍首相の杭州G20での記者会見の発言を追加します.)
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