日銀の保有長期国債の償却負担が8.7兆円に-マイナス金利後に急拡大

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  • 営業毎旬報告と銘柄別保有残高で大きく異なる保有長期国債の額
  • 総括的検証で日銀財務への影響も真剣に議論を-日本総研・河村氏

マイナス金利政策の導入以降、日本銀行が額面を大幅に上回る価格(オーバーパー)で長期国債を購入していることを受けて、将来の償却負担が急拡大していることがブルームバーグの調査で分かった。

  日銀が発表している「営業毎旬報告」によると、日銀が8月20日時点で保有している長期国債は335兆3600億円(100億円以下は四捨五入、以下同じ)。一方、19日時点で「日銀が保有する国債の銘柄別残高」を合計すると326兆6700億円と、営業毎旬報告とは8兆6900億円の差がある。

  日銀は保有国債について償却原価法という会計基準を採用しており、元本を上回る価格で購入した分を償還までに毎年均等に償却している。償還時には元本しか戻ってこないため、損失を平準化させるための措置だ。営業毎旬報告はこの償却を行った後の数字で、会計上は簿価、銘柄別残高は償還時に戻ってくる価格で、会計上は額面に当たる。

  この簿価と額面の差額が8兆6900億円で、日銀が保有国債の償還までに必要な償却額の合計だ。マイナス金利の導入を決定する直前の1月20日時点の両者の差額は6兆1100億円、3月31日時点で6兆4100億円だったので、足元にかけて急激に拡大していることが分かる。

  日銀の熊谷任明広報課長は、「決算については上半期・年度決算を公表しているところであり、コメントすることは差し控えたい」と述べた。

日銀本店

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  日本総研の河村小百合上席主任研究員は「日銀が現在行っているマイナス金利付き量的・質的金融緩和のゆがみがこの数字に現われている」と語る。毎年の償却負担が拡大することで、「日銀の収益が食われてしまい、将来の財務基盤が揺らいでしまうリスクが高まっている」と指摘。日銀が9月に行う総括的な検証では「こうした政策が日銀の財務に及ぼす影響についても真剣に議論すべきだ」という。

  ユーロパシフィカ・コンサルティングのナオミ・フィンク最高経営責任者(CEO)は、日銀保有国債の簿価と額面の差額が拡大していることをみると、今年度の要償却額は前年度より拡大するとみるのが妥当だろうと指摘。償却額がさらに拡大し、日銀の利益を食いつぶして赤字に転落する時期について、シナリオとしてはいくつかあり得るが、今年度にそうなる可能性はあるとみている。

15年度の償却額は8700億円

  日銀がブルームバーグに開示した決算データによると、2015年度の償却額は8700億円に上った。12年度は3400億円だったが、量的・質的金融緩和を導入した13年度は4600億円、14年度は6400億円と拡大し続けている。

  日銀の「2015年度の金融市場調節」によると、保有長期国債の平均残存期間は16年3月31日時点で7.2年。15年度中に買い入れた長期国債だけをみれば8.8年。日銀は保有国債の償還までに8兆6900億円を償却しなければならないが、長期金利の大幅なマイナス、つまり元本を大幅に上回る価格が今後も続けば、これがさらに拡大していくことになる。

  日銀の1月末のマイナス金利導入決定後、長期金利はマイナスに転じている。日銀は金融緩和時には長期国債をオーバーパーで購入しているが、マイナス金利はその価格差に拍車を掛けている。日銀は量的・質的緩和の下、年間の保有残高が80兆円増加するペースで長期国債を買い入れる方針で、今年は年内に償還される保有国債の買い換えを含め総額120兆円を買い入れる。

出口以前に相当危うい状態

  日銀は過去に購入した比較的高利回りの国債を保有しており、直ちに全体の収支が赤字になるわけではないが、長期国債の利息収入が今後も同じペースで増え続ける保証はない一方で、マイナス金利の下で日銀が今後、大幅なオーバーパーの長期国債を買い続ければ、毎年の償却負担は増大する。

  日本総研の河村氏は「日銀は出口をにらみ、昨年度から債券取引損失引当金の積み立てを行っているが、毎年の収益が減ればその積み立てすらできなくなってしまう可能性もある」と指摘。「出口以前に相当危うい状態にあり、現在の政策を安定的に続けられる状態ではなくなっている」としている。

(第5段落に日銀のコメント、第7段落に外部コメントを追加します.)
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