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電子たばこで火花、JTがフィリップモリス追う-妻に遠慮不要と人気

  • 品切れで販売停止も、この分野で首位目指すとJT
  • 健康志向と規制強化で紙巻き離れ進む-煙の出ない加熱式たばこへ

たばこは吸いたいが、あまり周囲に迷惑を掛けたり健康を害しないものがいい-。そんなわがままな愛好者を狙った米フィリップモリスインターナショナル(PMI)と日本たばこ産業(JT)の戦いが過熱している。

  戦いの舞台は「加熱式たばこ」と呼ばれる電子たばこの一種だ。世界最大の上場たばこメーカー、フィリップモリスは2014年に「アイコス(iQOS)」を日本の一部地域で試験投入し、今年4月から全国販売を開始した。一方、JTは「プルーム・テック」で迎え撃つ。紙巻きたばこに比べて副流煙が出なくて臭いが少なく、健康リスクも抑えられる可能性のある加熱たばこへの関心は高く、低迷する国内たばこ市場の中で明るい材料となっている。

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「プルーム・テック」を吸う男性

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  調査会社の英ユーロモニター・インターナショナルによると、15年の日本で紙巻きたばこの売上高が前年比0.9%減の321億ドル(約3兆2700億円)となったのに対し、加熱式たばこは同約5倍の460万ドルと急増した。ユーロモニターのアナリスト、宇都宮あかり氏は、禁煙する人が増えるにつれて新しいたばこ需要が増える傾向は今後も続くとみている。

右肩下がり

日本の紙巻きたばこの販売見通し

禁煙失敗

  東京在住の山本哲夫さん(40)は「妻の前で吸っても臭いがつかないので文句を言われず、精神的に楽になった」と話す。山本さんは何度も禁煙を試みたものの成功したことがなく、アイコスを試すことにしたという。

  JTの「全国たばこ喫煙者率調査」によると、日本の成人の喫煙率は今年約19.3%と、15年の約19.9%、10年の23.9%から低下傾向にある。高齢化に伴い健康意識が高まっていることに加え、喫煙規制が強まっていることが理由という。「日本では清潔で健康にいいとみられることが大切」で、煙の出ない加熱式たばこは非常に衛生的と受け止められていると、宇都宮氏はみている。

  電子たばこにはニコチンを溶かした液体を利用するものもあるが、日本ではこうした液体タイプは医薬品・医療機器の扱いとなり規制も厳しい。これに対し本物のタバコ葉を使用する両社の商品は、財務省の分類ではパイプたばこの扱いとなる。

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「アイコス」

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  アイコス本体は1個9980円で、太めのボールペンのような形。そこにタバコ葉を詰めたヒートスティックを挿入する。スティックは普通のたばこの半分程度の長さで、1箱20本入りが460円。たばこに火を付けるのではなく、低温加熱してニコチン成分を吸引する。日本以外ではスイス、イタリアなど9カ国で販売されているが、売り上げの95%以上は日本市場からという。

競争を歓迎

  フィリップモリスインターナショナル日本法人のポール・ライリー社長はインタビューで、「日本での目標は、私たちのお客様をアイコスに移行させることだ」と述べた。「喫煙で死ぬことがあって、それに代わるものがあるなら、切り替えるにこしたことはない」と話す。

paul riley

ライリー社長

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  またアイコスが品不足になっていることに関してライリー社長は、できるだけ早期に需要を満たすよう生産能力を増強すると述べた。ライバルとの競争については、この市場分野を拡大することになると歓迎する考えを示した。

  一方、JTは10年ごろから新型たばこに力を入れ始めた。同年に無煙たばこを発売し、15年には電子たばこの米ロジック・テクノロジー・デベロップメントを買収した。今年3月から福岡県とオンラインでプルーム・テックのテスト販売を開始した。同じ加熱式でもプルームは、カートリッジ内の液体を加熱して水蒸気化し、その水蒸気をたばこカプセルを通過させて吸引する仕組み。本体価格は4000円で、メビウスたばこカプセルが5個入りで460円。

ゲームチェンジャー

  福岡市内のコンビニなど900店で発売したところ、需要に供給が追いつかず、わずか7日間で出荷停止する事態に。3月11日に販売を再開したところ、その後約15日間に10万件程度の注文があったとJTの宮崎秀樹副社長は8月の記者会見で明らかにした。「19年くらいまでに数百億円を新規投資してこの分野でのナンバーワン」を目指すとしているが、プルームの全国・海外展開については明言しなかった。

  また、同社たばこ事業本部マーケティング&セールスグループEPマーケティング部の高橋正尚次長はインタビューで、「多くのお客様が待っている状態なので生産体制をいち早く上げていく」と述べた。その上で「想定以上の需要がある」とし、アイコスが先行していたことでこの分野への理解が広まっていたのかもしれないと話した。

  クレディ・スイス証券の森将司アナリストは加熱式たばこについて「ゲームチェンジャー」だとし、現在はフィリップモリスがリードし、JTは依然様子見の状況だという。いずれ伝統的な紙巻きたばこと非伝統的なたばこが共存し、加熱式が10%程度のシェアを占めるようになる可能性もあるとの見通しを示した。

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