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明日の2ドルよりきょうの1ドル、CEO報酬プランは行動学を無視

報酬コンサルタントを30年以上務めるフレッド・ウィトルジー氏は、人間の脳の奇妙な働き方を同業者らがもっと真面目に受け止めるべきだと考える。同氏は2009年の論文で、企業の取締役会は最高経営責任者(CEO)の報酬を決める際に行動経済学を参考にすべきだと主張した。金銭に関するデータに対し人間は非合理的に解釈し行動することが、行動経済学で説明できるという。

  ウィトルジー氏(58)ははっきりと論じた。既存の報酬プランの「正当性は実証されておらず」、「会計規則や税法、株主からの要求、法的配慮」への対応を寄せ集めしたにすぎない。欠けているのは、数百万ドルの現金と株式報酬が経営者のモチベーションにどう影響するかという視点だ。

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CEO報酬は行動学無視

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  論文から7年、ウィトルジー氏の理論はまだ実践されていない。状況はむしろ「悪化した」と、同氏はシアトルのオフィスで語った。「行動学に基づいた考え方はかつてないほどに軽視されている」という。

  CEOの報酬は規制と数十年続く大まかなトレンドによって決まる。1990年代に報酬専門家は株式報酬を推奨したが、株価高騰で報酬額は異様な規模に膨れ上がった。その後、権利発生までに時間的制限がある株式報酬が人気を集めるようになった。コンサルティング会社ヘイ・グループによれば、現在ではCEOの報酬の3分の1は成果目標を達成しなければ受け取れない仕組みになっている。そして、その目標は株価水準であるケースが増えている。

  投資家はこの仕組みを歓迎する。経営陣と株主の目標が一致するからだ。しかし行動と報酬に関してあまり知られていない人間の心理は、この期待を裏切る。例えば、3年以内に株価が一定水準に達したらCEOが500万ドル(約5億300万円)を受け取れるとしよう。行動経済学者によれば、CEOらはこの500万ドルの本当の価値を評価できない。「双曲割引」という概念で説明される心理的働きで、将来の2ドルより今日の1ドルを選ぶからだ。ということは、例えば3年より短い期間で300万ドルを支払えば、同程度のモチベーションを得られる可能性があるという理論だ。

  PwCのプリンシパル、スティーブン・スラツキー氏もこの理論に同意する。「CEOらに支払う金額から、思ったほどの効果は得られない。CEOらは将来の価値を頭の中で割り引くからだ。長期プランは人々が考えているほど効果的でないことは、当社の調査で証明済みだ」と話した。

原題:CEO Pay Plans Are Wrong Because They Ignore Science of Behavior(抜粋)

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