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日銀の次の大いなる実験、それは「ヘリコプターマネー」-モビアス氏

  • テンプルトンのモビアス会長は1ドル=90円で日銀行動と予想
  • 日銀がヘリコプターマネーに来月にも踏み込む可能性を指摘

米金融当局が利上げへの慎重姿勢を示す。円が1ドル=90円に上昇する。日本銀行の黒田東彦総裁は行動を決意する。こうして、来月にも「ヘリコプターマネー」が日本にやってくる。テンプ ルトン・エマージング・マーケッツ・グループのマーク・モビアス執行会長がこのように予言した。

  ベテラン投資家のモビアス氏(80)は今週、東京都内でインタビューに応じ、経済成長の弱さに対する世界の中央銀行の対応策について自身の見通しを語った。伝統的な金融緩和策は消費や借り入れを促す代わりに人々を貯蓄に駆り立てたと同氏は指摘。これに円高が加わり、黒田総裁はこれまで繰り返し否定してきた政策に踏み込むことを余儀なくされるとの見方を示した。

  日銀は「手元にどんな弾薬が残っているだろうかと真剣に考え始めている。最初に浮かぶのは、ヘリコプターマネーを使おう、消費者の手に直接現金を送り込もう、という考えだろう」とモビアス氏は話した。「それが日銀の次の一手になると思う」と述べた。

Templeton Emerging Markets Group Chairman Mark Mobius Interview

マーク・モビアス執行会長

Photographer: Razan Alzayani/Bloomberg *** Local Caption *** Mark Mobius

  世界の金融危機以降、中銀当局者らは8年間にわたって経済をマネーで溢れさせてきた。株式など資産の価格は上昇したが、世界の経済成長テコ入れには苦戦。日銀のマイナス金利の試みは円急騰と株価下落を招き、銀行の利益を縮小させた。

  非伝統的な金融政策の中の最後の手段とも言えるヘリコプターマネーには、幾つかの形式があり得る。最も単純な方式は紙幣を印刷して国民に配るというものだ。これが消費に回ることを期待し、それを促す措置も取るかもしれない。財政支出を直接支える形、つまりそれによって企業に資金が流れるようにするやり方もある。

  アジアを含め世界の新興市場と貿易関係が深い日本の経済を注視しているモビアス氏は、ヘリコプターマネー政策の副作用への懸念が政策失敗の原因になると考える。「当局はヘリコプターマネーを採用する場合、極めて慎重に、後ろ向きな姿勢で進めていくだろう。そしてもちろん、慎重にやったのでは望んだ効果は得られない」と同氏は指摘した。「当局は恐らく、円が1ドル90円になるまでは行動しないだろう」とも述べた。

  日銀は9月会合でこれまでの政策の総括的検証を行うとし、黒田総裁は既にその準備を指示している。マイナス金利にしても円安につながらなかったほか、量的緩和(QE)で購入する債券も尽きつつあるが、総裁はヘリコプターマネーは議論されていないと述べている。

  モビアス氏はヘリコプターマネー政策について、インフレ高進を促す懸念のほか、税収増に効果があるのかという疑問があると指摘する。日本の債務は国内総生産(GDP)の250%前後だ。「日銀はヘリコプターマネー政策を取りたいと考えるだろうが、同時に財政状況を考慮する必要もある。政策が税収増につながるとは限らない」と同氏は語った。

  投資家は黒田総裁の次の行動のヒントを得ようと発言の行間を読むのに余念がない。モビアス氏は、黒田総裁がどのような措置を打ち出すかにかかわらず、日銀と他の中銀のこれまでの理論には「幾分の勘違い」があると考えている。同氏は世界各国政府の経済改革の取り組み不足も指摘した。

  世界の中銀と政府への低い評価にもかかわらず、アジアで自身が弱気に感じている株式市場はないとも語った。日本株については強弱両方で、金融政策よりも為替相場の問題だという。「円建てでは日本株はさえないが、ドル建てでは素晴らしい」と同氏は述べた。TOPIXは円建てで年初から16%下落しているが、ドル建てでは1.5%上昇。円がドルに対して20%上昇したからだ。モビアス氏は「円上昇が近いうちに止まるようには見えない」と述べた。 
 

大違い

  

原題:Mobius Says Helicopter Money Will Be Japan’s Next Big Experiment(抜粋)

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