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アルマゲドンから1年、米株式市場は様変わり-当局もVIXも控えめ

  • 1年前なら最大4回の利上げ見込まれる、今は年内1回の確率が50%
  • 米経済改善をデータは示すが、当局はハト派的で株が上昇基調

投資家にとって2015年8月は恐ろしい月だった。米利上げが迫っていたところに中国が人民元を切り下げ、株式相場は4年で最も乱高下した。あれから1年。市場は静かというしかない。

  1年前のこの売り局面で過去最大の日中上昇率を記録したシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティ指数(VIX)は現在、10年平均を40%下回る水準で、株式相場の荒れはすっかり収まっている。去年の今ごろは最大4回の利上げを織り込んでいた米金利先物動向によれば、今は年内に利上げが1回ある確率が50%程度だ。人民元は下げ続けているが、騒がれるほどではない。

  時間が古傷を癒やしてくれた面もあるが、現在の市場の落ち着きの元にあるのは昨年8月のストレスとも言えるかもしれない。市場崩壊の様相が米金融当局の動きを抑える力として働いたというわけだ。この皮肉な状況は、投資家側にも残っている。最高値更新を試す勢いは投資家の油断を示唆するとも受け止められるが、金融不安定化の兆しがあれば中央銀行がこれまで繰り返し対応してきたことを考えると、理にかなった動きにも見える。

Progress, But Not For Rate Hike Expectations

  コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのシニアポートフォリオマネジャー、アンウィティ・バフグナ氏は「米当局が大変慎重に育んできた回復はまだ脆弱(ぜいじゃく)で、これを危うくするようなことは一切したくないだろう」と電話インタビューで話した。「9カ月前に利上げ第1弾を目にしたわけだが、市場の話題は3、4回の利上げがあるというものから1回でさえあるのだろうかというものに大きく変化した」と指摘した。

Trading On The Floor Of The NYSE As U.S. Stocks Edge Lower From Records Following Lackluster Data

ニューヨーク証取近くのベンチに横たわる男性

Photographer: John Taggart/Bloomberg

  市場はどれだけ静かになったのだろう。VIXの今月これまでの平均は12.05と、8月としては1994年以来の低さだ。1年前は19.1。15を下回る日は35日連続で、これは2014年7月以降では最長だ。ブルームバーグのデータが示した。

調整リスク

  投機家はこの落ち着きが続くとみている。米商品先物取引委員会(CFTC)によれば、ヘッジファンドなど大口投資家はVIX先物のポジションを売り越し11万5000枚とし、これは13年以降で最大。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の分析によれば、大型株運用会社のS&P500種株価指数に対するレバレッジは08年以来の高さとなっている。値上がりしそうな銘柄を買うと同時に下がりそうな銘柄を空売りするロングショート戦略のアクティブ運用投資家は差し引きで約56%買い越しと、これは15年7月以降で最大の割合となっている。

  プライベート・クライアント・グループ・オブ・USバンクの地域運用担当者ジム・デービス 氏は「米金融当局は行動する方針だが、準備がまだ整っていない」と電話で述べた。「経済は恐らく良好な状態。ということは、投資家はそれほど守りの態勢に入る必要がない」との見方を示した。

  もちろん、ここまで静かだと突発的に目を覚まされる事態となることがあり得るとBofAは警告する。VIXが15を下回る期間が2年ぶりの長期に及び、空売り意欲は低下、資産運用会社が株式ポジションを増す中で、米国株は「非常に高い」調整リスクをはらんでいると同行のアナリストらは指摘。米連邦公開市場委員会(FOMC)は動かないと市場参加者が踏めば、このリスクはさらに高まる。

  同行ストラテジストのダン・スズキ氏は電話で、「当行では市場予想よりも急ピッチな利上げを見込んでいる。そこまで衝撃的ではない期待を米当局が市場に持たせる余地は幾分ある。いずれにせよ、市場はなかなか消化できない可能性がある」と語った。

原題:Armageddon’s Anniversary for S&P 500 With Defanged Fed, Numb VIX(抜粋)

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