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野村HD:米州に再び熱視線、バンカー採用で投資銀行業務拡大へ

更新日時
  • 米国にはM&Aなど「非常に多くのビジネス機会」-尾﨑COO
  • 日本でも企業情報部で10-15%の人員増強、クロスボーダー強化で

野村ホールディングスの尾﨑哲最高執行責任者(COO)はブルームバーグの取材に応じ、米州で投資銀行業務を拡大する方針を明らかにした。同社は4月、欧州を中心に赤字が続く海外で7億ドルのリストラに着手、コスト削減効果が出始める中、収益拡大を目指して経営資源を再配置する。

  野村は米国のテクノロジー、消費・小売り、ヘルスケアなど複数の産業分野で、企業の合併・買収(M&A)案件などを発掘するカバレッジバンカーを外部から積極的に採用していく考えだ。具体的な人数や時期については言及しなかったが、20人規模でも受け入れる余地があるという。

  野村HDの第1四半期(4月ー6月)決算では、赤字続きだった海外拠点がこれまでになく存在感を示した。トレーディング業務が好調だったことやリストラ効果で過去7年間で四半期ベースでは最大の税前利益を計上、大きく落ち込んだリテールなど国内ビジネスの不振を補うなど、これまで存在意義さえ問われていた海外ビジネスの重要性が顕在化した。

  4月にグループCOOに就任した尾﨑氏(58)は15日のブルームバーグとのインタビューで、「アメリカは世界最大のマーケット。非常に多くのビジネスオポテュニティーがある」と述べた上で、「ドルという基軸通貨と先進国の中でも数少ない意味のある金利をまだ持っている国で、M&Aでも投資先という点でも日本を含むアジアから熱い視線が注がれている」と語った。

  尾﨑COOは長崎県出身。東京大学経済学部を卒業後、1982年に野村証券に入社。東京とロンドンで18年間債券業務に従事した。04年に執行役としてグローバル・エクイティを担当、その後経営企画や企業金融など経て、12年に野村証の副社長に就任した。  

「大きなミッション」

  野村は4月、欧州の投資銀行業務の共同責任者だった武村努氏を米州地域の共同責任者として送り込んだ。尾﨑COOによれば、武村氏は入社年次ベースでは同社の最年少執行役員で、インベストメントバンキング業務で優秀な人材を確保することが「大きなミッション」だという。

  また、同社は米州部門のデイビッド・フィンドレーCEOに、保証していた報酬パッケージの一部である500万ドル(約5億円)を支払ったことが複数の関係者への取材で明らかになっている。野村HDの永井浩二最高経営責任者(CEO)の昨年度の報酬の合計は、基本給や変動報酬を含め2億4400万円で、同社がいかに米国でのトップライン増強に期待を寄せているかが分かる。

  尾﨑COOは時価総額で100億ドル以下のアメリカ企業関連のM&Aや公募増資などの案件に加え、買収の際の為替ヘッジなどのサービスを強化していく考えだ。日本企業やアジア企業による米国での買収やジョイントベンチャーの設立ニーズが高まってきているという。テクノロジーや消費・小売り、ヘルスケア産業などは「活況」だという。

企業情報部、大幅増員

  また、尾﨑COOは日本でクロスボーダーのM&A案件をより多く助言するため、企業情報部のバンカーの人数を4月から8月にかけて10-15%程度増やしたことを明らかにした。具体的な人数については言及を控えたが、同社ウェブサイトによれば、企業情報部では東京・大阪・名古屋に100人以上を擁しており、現在、中途採用を実施中だ。

  野村はアメリカでは投資銀行業務で昨年6人のバンカーを起用、ニューヨークでは若手も30人以上、採用した。14年はシニアバンカー15人程度が外部から入社している。

  「アメリカはM&Aという意味でも、投資先の通貨、金利という意味でも多くの視線が再び集まってきている。これから5年から10年もっと強くなっていくだろう」と尾﨑COOは見通している。

潮目の変化

  同社は昨年まで米国の投資銀行業務でシニアな人材を他社から積極的に採用していく考えを示していたが、永井CEOは今年2月のブルームバーグの取材に対し、経営環境が「暴風雨」にさらされているとの認識を示し、目標に掲げていた海外での黒字化の達成を見送ることを明らかにした。2016年3月期決算は海外では6年連続の通期赤字になり、第4四半期は11年以来の連結赤字を計上した。

  こうした潮目の変化により、野村はヨーロッパでの欧州株のリサーチやリサーチ営業、デリバティブ、引き受け業務など中核ビジネスを閉鎖、アメリカでは米国株の企業調査や投資銀行業務を一部縮小、大規模な人員削減を実施した。しかしその後、損益分岐点の引き下げが奏功し、第1四半期には海外で169億円の税前利益を計上、コスト削減が喫緊の課題だった野村は現在、どのように経営資源を活かし、収益を上げるかに焦点が移りつつある。

「飽くなき改善」

  ブルームバーグのデータによれば、16年6月末までの半年間の日本企業絡みのM&A助言ランキングで、野村HDは3位だった。12年以降首位に就いたことはなく、日本と米国との間のクロスボーダー案件で三菱UFJモルガン・スタンレー証券などの競合他社に後塵を拝していることが主な要因だ。日本と海外の国際間取引では同社は14位と振るわない。

  米国でのランキングは今年上半期で55位と、15年通年の42位から下落している。昨年は東京海上ホールディングス、明治安田生命保険、住友生命保険などのクロスボーダー案件に、14年はサントリーホールディングスによる米ビーム社の買収などに携わることができなかった。

  「リーグテーブルは長期的には信頼の証、常に意識している、日本のM&Aに関しては特に」と尾﨑COO。そしてこう続けた。「お客様の満足度を上げるため、飽くなき改善をやり続けるしかない」ー。

英文記事:Nomura Back in Hiring Mode for U.S. Bankers After Cutting Cost (1)

(第9段落にM&Aチームについての情報を追加しました.)
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