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「ビッグ・ショート」アイズマン氏、次の標的はヘッジファンド手数料

スティーブ・アイズマン氏はサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローンの崩壊に賭けた投資で資産を築き、名をはせた。今度はウォール街の別のマネーマシンの値崩れに賭ける。ヘッジファンドの手数料が劇的に下がるとみているのだ。

  自身のヘッジファンドを2年前に閉鎖し、今は資産運用会社ニューバーガー・バーマンで働くアイズマン氏の投資手法は、典型的なヘッジファンドスタイル。値上がりが見込める株式を買う一方、下がると思う銘柄は空売りする。この投資で顧客から徴収する料金は資産100万ドル(約1億円)当たり年1.25%。買いに専念する投資信託ではもっと低いので、この手数料は必ずしも安いとは言えないが、それでもヘッジファンド業界とは雲泥の差だ。同業界では年間手数料2%に加え、運用報酬として利益の20%を徴収する。

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アイズマン氏

Photographer: Daniel Acker/Bloomberg *** Local Caption *** Steve Eisman

  アイズマン氏は一律1.25%の徴収について、「10年後の手数料はこうなっていると思う」と語った。マイケル・ルイス氏の著作「ザ・ビッグ・ショート」(邦題:世紀の空売り)で取り上げられ、映画版では俳優のスティーブ・カレルが演じたアイズマン氏だが、投資家が募らせている不満に目をつけているのかもしれない。

公的基金

  ヘッジファンドの高い手数料については、年金基金を含む機関投資家がここ何年もぼやいてきた。それでも支払ってきたのは、それだけ印象的なリターンを多くの運用担当者が上げてきたからだ。

  しかし、2009年に始まった強気相場では、多くのファンドが苦戦。プライベートエクイティ(PE、未公開株)や不動産、株式、はたまた債券への投資にまで後れを取るほどだった。この先を考えれば、多くの資産でリターンのベースとなる債券利回りが非常に低い。控えめな利益しか得られない公算が大きい状況で投資家が比較的簡単に利益を保持する方法は、資産運用会社への支払いを減らすことだ。

  世界のヘッジファンドからの資金引き揚げは過去3四半期で250億ドル近い。業界全体の運用資産約3兆ドルの1%にも満たないが、これだけ長く資産流出が続くのは金融危機以来。今月に入ると、米ニュージャージー州投資協議会がヘッジファンドへの割り当て資産90億ドルを50%減らすと発表。残す部分については、手数料率を半分にして事前合意の水準を超える利益を上げられなければ報酬を受け取らない条件を受け入れるファンドに任せる方針を示した。

  同協議会のトム・バーン会長は投資削減を承認した会合で、「ヘッジファンド業界には世界が変わったというメッセージを伝えることになる」と述べ、「公的基金は徴収される手数料をただ黙って支払うということにはならない」と付け加えた。

  アイズマン氏や業界関係者は手数料はすぐには下がらないと指摘する。業界ではカスピアン・キャピタルが長期契約の投資家を対象に手数料割引を7月から提供している一方、一部の有名ファンドはプレミアム付きの手数料を引き続き求める。著名運用者ポール・チューダー・ジョーンズ氏は5月に一部ファンドの手数料引き下げを明らかにした。手数料を資産の2.75%相当から2.25%に、運用報酬を利益の27%から25%に引き下げるとしているが、依然としていずれも業界で典型的な水準を上回っている。

口座サービス

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Steve Carell

Photographer: Steve Sands/Getty Images

  アイズマン氏が新たに提供するのはヘッジファンドとは異なり、同氏が選ぶ銘柄を顧客が直接保有する口座サービスとなる。このため、投資家はいつでも資金を引き揚げることができるので、ヘッジファンドと違って流動性の低い資産の活用は難しい。レバレッジ活用もしない。

  もちろん、ヘッジファンドのようなサービスを安く提供する運用者はアイズマン氏に限らない。だが、業界出身者である同氏がそこでのビジネスモデルを拒否しようとしている。09年に約20億ドルを運用したフロントポイント・パートナーズでは、サブプライム住宅ローンの崩壊に賭ける取引がうまくいった。12年から14年にかけては金融株に特化するエムリス・パートナーズを運用。当初2年のリターンはプラスだったが、成績はセクター全体を下回り、結局閉鎖した。

  今回成功するかどうかは、アイズマン氏が選択する銘柄が利益を生むかにかかる。アルファ・キャピタル・マネジメントのブラッド・アルフォード最高投資責任者(CIO)は「今はどんなヘッジファンドにとっても厳しい」とし、「パフォーマンスが全てだ。それが良くなければ、どんなに手数料が低くても投資家は去って行く」と述べた。

原題:Eisman’s Next Big Short Is the 2-and-20 Hedge-Fund Fee Structure(抜粋)

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