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ビットコイン取引で荒稼ぎも、ハッキング被害で損失補てんに直面

  • 香港のビットフィネックスが65億円相当を盗まれる
  • 最新技術でも被害防げず、何らかの規制必要との声も

仮想通貨ビットコインの取引所マウントゴックスから大量に顧客資金が消失し、破産に追い込まれた事件から2年余り。今度は香港で発生したハッキング事件でビットコイン市場が揺れている。

  香港に拠点を置く仮想通貨取引所、ビットフィネックスは8月2日に11万9756ビットコイン(約65億円相当)がハッカーによって盗まれたことを明らかにした。同取引所は事件発生前、ドル建てのビットコイン取引所としては最大手だった。

  ビットフィネックスの被害は約500億円相当の資金が盗まれたマウントゴックス事件に次ぐ規模となった。仮想通貨の取引プラットホームを提供するコインベースの共同創業者、フレッド・アーサム氏は電子メールで、「大きな被害だ。短期的には大きな影響があるだろう」としながらも、「ビットコインはこれまでにも同様の出来事から立ち直る強さを見せてきた」と指摘した。

Bitcoins And U.S. Dollar Notes As IMF Vouches For Virtual Currencies

ビットコインとドル紙幣

Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg

  事件発生を受けてビットコインの対ドル相場は7月末の660ドルから18日には572ドルに約13%下落した。マウントゴックス事件が発生した当時、同相場の1カ月の下落率は30%に達した。

  ビットフィネックスは経営破綻を回避し、被害から立ち直るための最善の策として預金者全員(直接被害に遭っていない人も含む)から預金額の36%を損失補てんとして徴収する案を打ちした。また盗まれた顧客のお金については、将来的に親会社の株式と交換できる権利を与えるとした。

700%

  顧客は怒っているが、うろたえているわけではないという。同取引所を利用していた北京在住のプログラマー、ティアン・ジア氏(29)は44万ドルを預けていたが「損失は当初予想していたほどではなかった」と言う。ただ盗まれたお金の将来の補償については「多くの疑問がある」と取材に話した。

  ティアン氏はビットフィネックス独特の信用取引で、ビットコイン取引をするトレーダーに高利で資金提供していた。場合によっては金利が年700%という高水準になることもあり、ティアン氏は一晩に1000ドル余り稼ぐこともあったという。

  マウントゴックスが事件発生後に取引閉鎖に追い込まれたのに対し、ビットフィネックスはトレーディングと預金、預金の引き出しを先週から再開した。ただ、実際に引き出せるのかは確認されていない。多くの顧客が預金を引き出した場合、取引所の再建計画に狂いが生じる恐れがある。

  ビットフィネックスが運営を再開し新たな攻撃を防御しようとしている姿勢を評価する向きもあるが、一部顧客は法的手段に訴えることを検討しているという。ただ問題は、香港当局がビットコイン取引の法的基盤を整備していない点にある。香港の中央銀行にあたる香港金融管理局は、ビットコインは管轄外との立場だ。

責任転嫁

  2009年にビットコインが誕生して以降、さまざまなハッカー攻撃を受けてきたにもかかわらず、業界として安全対策を確立できていない。コーネル大学でコンピューター科学を教えるエミン・シラー教授は電子メールで「ビットコイン関係者の間では伝統的に被害者を責める風潮がある」とした上で、6年間にわたり継続的にハッキングが起きていることを見れば「責任転嫁はそろそろやめるべきだ」との考えを示した。

  技術面での先進的対策として「マルチシグネチャー」方式がある。これは全てのビットコイン取引に複数の秘密鍵を付与するもので、鍵が分散保有されるためハッキングが難しくなる。ビットフィネックスも15年からこの技術を取り入れていた。当時ビットフィネックスは発表文書で、マウントゴックスのようなハッキングは不可能だと主張していたが、今回の被害については捜査が継続中だとして詳細を明らかにしていない。

  起こり得ないと思われていたハッキングが起きたことで、自主規制あるいは政府の支援を得た何らかの規制が必要ではないかとの声も出てきた。マサチューセッツ工科大学スローン校の元専任講師、トロンド・アンデイム氏は「ビットコインの熱烈な信奉者でも規制が必要だと徐々に考えるようになってきた」と指摘した。それがビットコインが存続する唯一の方法で、広く普及するための重要な鍵になるという。

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