大災害なければ高リターン、マイナス金利でCAT債に年金から需要

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  • 台風リスク債のクーポン:損保J2.95%、三井住友海上火災3.24%
  • 株式・債券相場に左右されないが、大災害時には元本減少のリスク

日米欧など主要先進国が超低金利に陥る中、年金基金など日本の投資家は、台風や自然災害などのリスクを証券化した大災害(カタストロフィー)債券(CAT債)に投資機会を見いだしている。株式や債券などの値動きに左右されず、災害が発生しない限りは高いリターンが期待できるのが利点だ。

  CAT債は、損害保険契約を証券化した保険リンク証券(ILS)。格付けが同じ発行体の普通社債より金利上乗せ幅(スプレッド)が大きい代わりに、大きな自然災害が発生の際には、投資家への償還元本が減少する仕組み。リスクの数値化が難しく自己資本規制の厳しい銀行や保険会社は投資しにくい。

  スイス再保険が算出しているグローバルCAT債指数の総合リターンは7月までの1年間で6.36%となっている。国内損保が今年3月に発行した台風のリスクを引き受ける米ドル建て債(年限4年)の表面利率は、損害保険ジャパン日本興亜が2.95%、三井住友海上火災保険は3.24%。一方、同時期の残存4年の日本国債の流通利回りはマイナス0.2%前後、5年物米国債は1.2-1.4%だった。

  大西洋に浮かぶバミューダ諸島でILSファンドを運用するイーストポイントアセットマネジメントの北出公英・最高経営責任者(CEO)は、ILSの運用は安定的に金利収入が得られ、「伝統的なマーケット商品とは相関性が低いため、分散運用の観点から投資家が継続的に増えてきている」と話す。同社は1年以内に運用額を約倍増の100億円を目指す。

  イーストポイントに運用委託している、あすかアセットマネジメントの三浦英二常務によると、年金運用では3-4年前から取り組み始めたところもある。同氏は「1つのアセットクラスとして確立している」とし、年金からの需要があると見込んでいる。

資金流入

  イーストポイントが運用するファンドは、CAT債を中心とする約40銘柄に投資している。年間収益率5%、同リスク2ー2.5%を目指しており、現在の運用額は5200万ドル(約53億円)。7月末までの1年間の収益率は5.18%だった。一方、ユーリカヘッジによるとILSを中心に投資するファンドの同期間の平均収益率は4.93%。

ハリケーン・サンディに備えて土嚢を積む(2012年)

Photographer: Peter Foley/Bloomberg

  北出氏によると、12年に米東部に上陸したハリケーン・サンディ以降、CAT債に損失が発生するような大きな災害は少なく、CAT債のスプレッドは縮小(価格は上昇)し、ファンドの収益は上昇傾向にある。また、各国の超低金利環境で、政府系ファンドやヘッジファンドなども保険リスクを引き受けようと、ILS市場に資金が流入しスプレッドは一段とタイト化している。

  一方、スプレッドがある程度タイト化すると保険会社は英ロイズ市場で再保険に出すよりも、CAT債発行でリスクヘッジする方がコストが安くなるため、発行が増加。CAT債をめぐる需給バランス次第でスプレッドは変化する可能性があるという。

  北出氏は国内外の損保で引き受け業務などを経験した後、三菱商事で日本企業初の総合ILSファンドを設立・運用。三菱商事と海外企業との合弁でILS運用会社を立ち上げ、バミューダで運用、経営に従事した。12年からはあすかアセットマネジメントから再委託を受け、オルタナティブ運用会社AIFAMでILSファンドを立ち上げた新原輝久氏、浅利賢太郎氏の3人で運用している。