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【インサイト】ソロス氏は08年危機再来を透視か、プット大幅積み増し

富豪ジョージ・ソロス氏の一族の資産を管理するファミリーオフィスは4-6月(第2四半期)末に、株式相場が崩れれば利益を上げるオプションを大量に保有していた。興味深いポジションではあるが、その詳細をあまり分析しないほうがいい。

  まず、これはソロス・ファンド・マネジメントの同四半期ポートフォリオにおいて「最大」のポジションではなかった。2013年もそうではない。米証券取引委員会(SEC)が機関投資家に義務付ける四半期報告書の株式デリバティブ(金融派生商品)の記載方法のせいで混乱が生じたものだ。同四半期末にソロス・ファンドはS&P500種株価指数に連動する最大の上場投資信託(ETF)の約400万株相当を売る権利(プット)を保有していた。この400万株の6月末の時価総額は8億3900万ドル(約843億円)のため、この数字が報告書に記載される。15日の市場取引終了時点では8億7700万ドル前後だった。

  言うまでもなく、これらのプット購入でソロス氏が8億3900万ドル近くを支払ったこともなければ、プットの価値がその額になることもない。その水準に近くなるのは、S&P500種が文字通りゼロに下がった場合のみだ。ブルームバーグが把握する同指数関連プットで15日時点で最も価格が高かったのは、ETFを11月18日までに235ドルで売る権利を付与するもので、1株当たり17.05ドルだった。最も安かったのは同1セント。

Put Off

Despite the rally in stocks, George Soros remains bearish

Source: Bloomberg

  つまり理論的には、ソロス氏のプットの値段は4万ドル以上6800万ドル未満となる。そして、第2四半期中に積み増した190万株相当のプットにいくら払おうが、その価値は現在では下がった公算が大きい。相場が今四半期に入って上昇してきたからだ。一方、ソロス・ファンドが最大の買い持ちとした銘柄は米リバティー・ブロードバンドで5億3350万ドル相当。 

  それでもS&P指数のプットは取るに足りないポジションではないし、相場が荒れれば価値が増す可能性はある。しかも、市場のセンチメントがリスクオフに戻った際にソロス氏に利益をもたらすのは、これだけではない。小型株ラッセル2000指数に連動するETFの180万株とジャンク債連動ETFの82万株をそれぞれ対象とするプットも保有している。 

  ソロス氏が今年「大規模な弱気ポジション」をとっているとの報道にも合致する動きだ。しかも、四半期報告書を見れば一目瞭然のやり方でヘッジしているのは注目に値する。報告義務のないポートフォリオの片隅では一体どんな弱気ポジションになっているのかと考えてしまう。

  ソロス氏は08年の時のような危機に備えるか、そうした危機再来に積極的に賭ける必要があると確信しているようにみえる。これまでの公式表明からは、後者のように思える。ただ、危機を起こす起爆剤はその時々で変わる。4月には中国が08年当時をほうふつとさせ、6月の要因は欧州連合(EU)離脱を選択した英国民投票だった。

  ソロス氏の読みは過去に当たっているので、同氏の見方は常に注目される。そして、バブルの兆候が垣間見える米国株は特に、それが英国民投票のような短期的要因であっても、ちょっとした危機の気配に影響を受けやすい。ソロス氏は近く、新たな危機に向けた物色を始める必要があるかもしれない。 

Key Speakers At The World Economic Forum (WEF) 2016

ソロス氏

Photographer: Matthew Lloyd/Bloomberg

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:For George Soros, Clock Is Always About to Strike 2008: Gadfly(抜粋)

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