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「ホームレスLNG」増加で商機-スポット市場拡大に備える

更新日時
  • 供給増加でアジアのLNG市場に流動性が高まる機会
  • 伊藤忠など商社は新たな物流の誕生に向けた体制を構築

米国や豪州からの新たな液化天然ガス(LNG)の供給が増えることで買い手側の価格交渉力が増しており、従来のLNG売買では契約期間20年といった長期の契約が中心だったが、スポットやより短期の契約を軸とする方向に変化し始めている。

  国内では公正取引委員会が、LNGの長期契約に課された第三者への転売を制限する「仕向け地制限条項」が市場での自由な競争を制限している恐れがあることから予備的な調査を開始。早ければ年内にも評価を明らかにする可能性がある。英国のコンサルタント会社BMIリサーチは、公取委が独占禁止法に違反すると判断すれば、欧州の過去の事例に倣って既存の契約の再交渉という結果につながる可能性もあるとしている。

  長期契約の再交渉や長期契約から短期契約への切り替えが進めば、スポット市場での取引が活発化し、仲介役として売り手と最終需要家を結ぶ機能を持つ商社がLNG市場で存在感を増すことになる。国際LNG輸入者協会(GIIGNL)の調べによると、2015年の世界のLNG取引量は前年比2.5%増の2億4520万トン。このうちスポット、あるは短期契約による取引量は28%を占め、その割合は10年の19パーセントから増加している。

  中部電力と東京電力フュエル&パワーが共同で出資した火力発電燃料調達会社JERAもスポットや短期契約での購入量増加を計画しており、今後は仕向け地条項が付与された契約を締結しない方針。米国のLNGの供給会社は買い手の転売を制限していないため、今後は買い手自身が市場で売り手に回る可能性もある。

ホームレスLNGの出現

  世界最大のLNG購入企業JERAの佐藤裕紀販売・調達部長は、20年には年間4000万から5000万トン規模の「どこに持って行ってもいい、決まった顧客がいないホームレスLNG」が現れると語る。輸出先に制限のない米国からの供給開始などによるホームレスLNGの登場は「全世界レベル、特にアジアでの市場流動性を高めるいいチャンス」とみている。

  伊藤忠商事の天然ガス事業開発部長代行の猪股和彦氏は、今後予想される豪州などからの供給の増加は大消費地であるアジアでも吸収しきれなくなってくると指摘する。そうなったとき、LNGがアジアから欧州へ向かう「今までになかった物流」が生まれると予想する。

  スポット市場での流動性向上の期待の高まりとともに国内外の商社などが体制を整えつつある。猪股氏によると、伊藤忠は在シンガポールのLNG担当を2年以内に2ー3人増やす方針。同社は韓国南部光陽港のLNG基地にタンクを借りており、この基地はアジアでも数少ない再輸出が可能な設備だという。再輸出できる基地では、一度タンカーから貯蔵タンクに受け入れたLNGを再度タンカーに積むことが可能だ。

  国際商品取引会社トラフィギュラもシンガポールに再輸出が可能なタンクを借りている。また、三井物産も今後1-2年で5-6人のLNG担当トレーダーをシンガポール子会社のミツイ・エナジー・トレーディング・シンガポール(METS)に置く方針だ。

  猪股氏によると、LNGはスポットや短期契約の増加で「ここ数年で急速にコモディティー化した」という。運搬を容易にするためにマイナス162度まで冷却して液化するという物理的な制約があるため石油のようなコモディティーには「完全にはならない」ものの、「石油の方に向かっているのは間違いない」との認識を示した。

  新規のLNG輸入国などの間で短期契約を求める志向が高まっており、同氏は将来的にはスポット取引や短期契約の割合が世界の取引量の半分程度まで増加すると予想している。

(第10段落を追加します.)
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