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買収王・日電産永守会長、夢は「会社を大きく」-M&Aに1兆円用意

更新日時
  • 意中の買収候補は6社、車載、モーター事業、AIやIoTにも関心
  • 自身はソフトバンク社外取締役、「孫さんの話に将来のヒントあり」

「これまでのベスト5に入るいい案件だ」-。日本電産の永守重信会長兼社長(71)は上機嫌だった。同社として過去最大の企業合併・買収(M&A)案件を2日に発表。創業者でもある永守会長は会見後、記者たちに自身が主導したM&A案件をこう評価してみせた。

  日電産が買収するのは米エマソン・エレクトリックのモーター・ドライブと発電機事業。買収額は12億ドル(約1200億円)に上る。業績下降に伴い価格も安くなり「絶妙なタイミング」での買い物だったという。だが、永守会長の頭の中には、さらなるM&A戦略がある。

NIDEC Nagamori

永守重信会長

Photographer: Akio Kon/ Bloomberg

  エマソンの買収発表に先立つ7月、永守会長はブルームバーグの取材にM&Aは現在、買い手市場であり「今年は大きな会社を買っていこうとしている。資金的には格付けを大きく落とさない範囲で、1兆円程度を用意している」と述べた。買収先候補は6社あり、全て実現すれば必要資金はその額に上る計算という。

  永守会長は「買収王」の異名を取る。日電産はM&Aを活用して成長してきた。2010年3月期に5900億円だった連結売上高を6年間で1兆1800億円に倍増させた。同社ウェブサイトによると、今回の案件以前に内外48件の企業・事業を買収。現在の中期経営計画でもM&Aによる売上高の底上げを織り込んでいる。

  いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、永守会長を「M&Aは日本で一番うまい」と高評価。「安く買う、本業から遠い分野には手を出さない、といった信念でぶれない。投資家としては安心感がある」と述べた。それだけに同社の一番のリスクは「後継者問題。永守プレミアム剥落の可能性だ」と指摘する。

  日電産の株価は08年秋のリーマンショック以降、上昇傾向を維持。同ショック後に一時1600円台まで下落したが、現在はその6倍近くの9000円台で推移している。

TOPIXを大幅に上回る

AIやIoTにマイナー出資も

  永守会長はインタビューで、今後の買収先は車載事業や発電機など、モーターと関連性の深い成長分野が中心になるとした上で「少し早いが、広く車載関連という意味ではAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の分野も売ってもらえるなら買っていく。この分野はマイナー出資も選択肢だ」と述べた。

  2日の会見では「買収で失敗したことは一度もない」と発言。秘訣(ひけつ)はと問われ「高いものは買わないことだ」と断言した。先月のインタビューでは、買収候補先は昨年段階で8社あったが、適正価格に下がるのを待つ間に2社は売れてしまったと明かしていた。

  買収王と言えば、ソフトバンクグループの孫正義社長もそうだ。永守会長は14年から同社の社外取締役を務める。自分と同じ「奇人変人」と感じる孫氏には、一貫して「投資家でなく、実業家として名を残してほしい」と言い続けているという。

ソフトバンク

  ソフトバンクが買収した米スプリントの経営がうまくいかず、孫氏が売りたいと言った時は「うまくいかないから売るのは単なる投資家だ」と止めた。また、現役社長の身で他社の役員も務めることについては「その時間を使って10倍価値があるならやるべきだ。孫さんの話には将来へのヒントがある」とメリットを述べた。

  15年度のソフトバンク取締役会への出席率は55.6%と低い。それでも議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ (ISS)は6月の同社の株主総会前、出席率が75%未満の取締役の選任議案に反対する原則を曲げて、永守会長の手腕を買い再任への賛成を推奨した。

  日電産は1973年、京都市内のプレハブ小屋で産声を上げた。4人で始めた会社は今では世界に9万6600人の従業員を抱える。永守氏は「最近の若い人は夢が小さくなった。将来の目標は社長でなく課長と言う。寂しいなぁ」。「私の一番の幸せは会社が大きくなること、その会社が残ることだ」と大声で笑った。

(第5段落に外部コメントを追加しました.)
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