【インサイト】シティが保有を増やすCDS「大量破壊兵器」の不安も
Lisa Abramowicz米銀シティグループは、2008年の金融危機で米連邦当局が最も多額の資金を投入して救済した銀行だが、その歴史を考えると、信じ難いニッチ分野の開拓に動いているように思われる。
シティは米主要行の中でデリバティブ(金融派生商品)の保有がすでに最も多いが、リスク資産の持ち高を速やかに減らす圧力にさらされる欧州のライバルからクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を買い取っている。
スイス銀行2位のクレディ・スイス・グループは数週間前、想定元本総額3800億ドル(約38兆5000億円)相当のデリバティブポートフォリオを売却したことを明らかにし、これが50億ドル程度のレバレッジエクスポージャー圧縮に貢献した。ブルームバーグ・ニュースは今月5日、シティがこのポートフォリオを落札したと報道。ブルームバーグが3月に伝えたところでは、シティはドイツ銀行からも想定元本約2500億ドル相当のクレジットデリバティブを昨年購入し、さらなる買い入れに向けた協議を行っていたもようだ。

シティバンク支店(ニューヨーク)と歩行者
資産家で著名投資家のウォーレン・バフェット氏が03年にデリバティブを「金融の大量破壊兵器」と呼んだことはよく知られている。スイスとドイツの大手銀行だけでなく、バフェット氏が経営するバークシャー・ハサウェイを含む大手投資会社の一部もCDSの保有圧縮を目指しており、シティと他の金融界の動きは、一見したところジグザグの方向に映る。
新たな規制に伴いトレーディングでそれほど利益が得られなくなったことが大きいが、世界的に見てもクレジットデリバティブの保有を大手金融機関は過去10年で徹底的に減らした。しかし、シティはそこにチャンスを感じ取っているようだ。
デリバティブ保有を増やすことにシティは非常に積極的だが、同行だけではない。JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスもライバルからそうした商品を買い取るために似たような取り組みを行っている。さらに、ウェルズ・ファーゴとスタイフェル・ファイナンシャルは最近になって欧州でクレジットデリバティブのトレーディングを開始した。
シティは激しい中傷の的となったデリバティブビジネスを推進し、そのリーダーを目指す決断に自信を持っているように見える。大きな利益の可能性を秘めた信じられないほど思い切った賭けといえるが、爆発を起こしかねない危険物を大量に抱え込むリスクが存在する。しかも、時としてそうなっている。
(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)
原題:Citigroup Stockpiles ’Weapons of Mass Destruction’: Gadfly(抜粋)