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見え隠れするマイナス金利の底、日銀が「金利低下志向しない」可能性

  • 総括的検証は実質的にテーパリングに近いのかもしれないとの指摘
  • 新発2年債利回りは過去最低水準から半分以上マイナス幅を縮小

マイナス圏に沈んだ利回りがどこまで深掘りするか分からなかった日本の国債市場。それが日本銀行によるドル供給の拡大と金融政策の総括的な検証の方針が明らかになった7月末の金融政策決定会合以降、金利の下限が徐々に見え隠れし始めている。

  2年物の新発国債利回りは現在、マイナス0.17%前後。日銀会合前に付けた過去最低のマイナス0.37%から半分以上もマイナス幅を縮小している。一方、ドルを保有する外国金融機関は、マイナス利回りの日本国債を購入してもドル・円ベーシススワップ取引などを通じて利益を確保することが可能だ。

  ただ、日銀のドル供給拡大の発表があった7月29日午後はドル・円ベーシススワップの3カ月物スプレッドが急縮小し、ドルを貸す代わりに円資金を借りて債券を購入する海外の金融機関には不利になった。ブルームバーグのデータによると、同スプレッドの縮小幅は前日終値比で10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を超えて今年最大を記録した。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda News Conference

日銀の黒田総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジストは、ドル・円ベーシススワップの動きは「日銀の資金供給が手厚くなったことへの警戒感かもしれない」と指摘。同取引を使って日本国債で運用する外国人投資家にとっては「若干魅力後退に働く。今の外国人のフローは非常に大きいが、ストックベースではそんなに増えていない。ベーシスが縮小すると利回りが下がるので、益出しニーズも多少出るかもしれない」と言う。

  長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時マイナス0.30%まで低下したが、7月末の日銀会合以降、マイナス幅を急速に縮小。会合の翌週となる2日にはマイナス0.025%とゼロ%に接近する場面があった。市場が警戒したのは、ドル供給拡大などの金融政策と同時に明らかになった9月の会合での総括的な検証だ。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ債券ストラテジストは、「わざわざ金融政策の検証を表明したことで、債券市場では政策の枠組みの柔軟化、実質的にテーパリングに近いのかもしれないが、金利上昇方向を見込んでいる人が多いのではないか」とみている。

  日銀が8日に公表した先月末の日銀会合の「主な意見」では、超長期金利の過度な低下が与える悪影響についてや、ボラティリティの高まりが日銀の国債買い入れを困難にするとの懸念が示された。SMBC日興の竹山氏は、「日銀が超長期国債金利の低下を志向しない可能性が高まっている」とみる。

ベーシススワップ

  日銀は成長支援として独自のドルを供給する枠を倍増し、毎週実施するドル供給オペについては応札するための担保国債の貸付制度も新設。日本の企業や金融機関がドル資金を調達しやすい環境を整える方針だ。

  これはスワップ取引で破格の低金利で円資金を調達してきた海外勢には逆風。ただ、ブルームバーグの分析データによれば、外国人投資家がドル・円ベーシススワップ取引などを通じて超低金利の円を調達し、2年物の日本国債を購入した場合、固定利回り1.72%に相当する運用が可能になる計算だ。ドル・円ベーシススワップの3カ月物スプレッドは現在、67bpと7月の日銀会合の日に付けた50bp台後半から戻している。

  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「国内勢の海外投資の流れは変わらず、米国の金融規制やMMF(マネー・マネージメント・ファンド)改革もあり、ドルのファンディングコストを押し上げる。ベーシスのワイド化の傾向は変わらない」としながらも、日銀の措置を受けて「緊急事態が起きたときにドルファンディングが枯渇するような事態は避けられる。つまり極端なワイド化は避けられるというインプリケーションはある」と話した。

  日銀が保有する国債の規模は発行残高の3割以上に達している。今年1月にマイナス金利政策を導入してからは、残高の9割程度がゼロ%を下回る事態も起きた。その背景には、日銀による国債買い入れを見込んだ金融機関からの買いがある。しかし、「金融政策の見通しが不透明になるとマイナス金利の国債が買いづらくなる」と、大崎氏は指摘する。  

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