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「山の日」に集まる期待-さらなる頂上目指すアウトドア市場

更新日時
  • 8000億円超の経済効果、全国で関連イベントが多数開催
  • 火山の噴火相次ぎ登山者に陰り-教育にアウトドアも

8月11日に迫った新しい国民の祝日「山の日」。登山やキャンプの人気の高まりとともに山の日の導入に合わせたイベントも多く開かれており、子供から高齢者まですそ野の広がりが大きいアウトドア市場のさらなる規模拡大が期待されている。

  オートキャンプ用品をメーンに展開するスノーピーク。2014年に東証マザーズ、15年に東証1部に上場し、16年12月期の売上高予想は95億円と過去最高となる見通しだが、現在は会社予想を上回る勢いで売り上げを伸ばしている。

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スノーピーク本社に併設されたキャンプ場でキャンプを楽しむ人々

Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg

  山井太社長はブルームバーグの取材で、現在のアウトドア人気について「先進国では社会情勢が複雑化、デジタル化しており、リアルなものに対するニーズが非常に増えてきている」と分析した。国内では1990年前後のキャンプブームを体験した団塊ジュニア世代が親になり、子供とともにキャンプを始めていることも影響しているという。

  5万坪の丘陵地を使ったキャンプ場に囲まれた新潟県三条市のスノーピーク本社。現場の利用者の声を素早く商品開発に反映する仕組みを構築している。キャンプ場を訪れていた会社員の渡部彰さん(50)はサーフィンや登山などのアウトドア好きが高じ、子供が生まれてから「息子も一緒に楽しめるキャンプをやろう」と考え始めたという。今回のキャンプのために妻と3歳の長男や友人らと泊まれる同社の大型テントを購入し、車も大きいサイズに買い換えた。

自動車業界との連携視野

  日本オートキャンプ協会によると、年1回以上キャンプに参加する人の数は08年のリーマンショックを底に回復基調にあるが、それでも15年で810万人と日本の人口の6%程度にとどまる。山井社長は残る94%へのアプローチを目指し、衣服や住宅、職場、防災、地方活性化などにアウトドアの要素を取り入れる新事業に力を入れている。今後は自動車業界との連携も検討しており、山の日制定によって「アウトドアに興味を持つ人が増える」ことに期待を寄せている。

  そもそも「山の日」とは何か。国民の祝日に関する法律(祝日法)には「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」と記されている。第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは、祝日が増えたことで長期休暇が取りやすくなり、観光レジャー需要の増加が見込めるほか、山の日関連のイベントが登山関連需要も喚起し、8200億円程度の経済効果を見込めると試算する。「人が外に出ることで経済が潤う、これが消費の基本だ」と指摘する。

高尾山でもイベント

  全国山の日協議会のまとめによると、今年は山にちなんだイベントが全国で40以上企画されている。ミシュランガイドで観光地として3つ星を獲得した高尾山の周辺では11ー12日、登山技術講座や音楽ライブ、トークショーなどで構成されるイベントが開催される。また高尾登山電鉄の運営するビアガーデンに加え、昨年には高尾山登山の最寄り駅となる京王電鉄高尾線高尾山口駅前に京王高尾山温泉もできた。同駅の1日平均乗降客数は15年度に1万1110人と、少なくとも過去10年間で最大を記録した。

  日本生産性本部のレジャー白書によると、15年の登山・キャンプ関連商品の売上高は前年比3%増の2000億円と過去最高となった。これに対し、年1回以上登山する人の数は09年の1230万人をピークに右肩下がりとなっており、15年は前年比13%減の730万人だった。犠牲者を多く出した14年の御嶽山の噴火に始まり、15年には箱根山、阿蘇山、霧島山と火山活動が活発化したことから軽登山数が減少したためと白書は分析している。

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  アルペンゼビオホールディングスヒマラヤなどのスポーツ用品専門店では、火山の影響で登山用品の販売が落ち込んだ一方、キャンプ用品に加え、「ザ・ノース・フェイス」や「コロンビア」といったアウトドアブランドの衣料が街着用として売り上げを伸ばしているという。ゼビオHDは16年3月期のアウトドア関連の売上高は前年比4.4%増となった。

山から街へ

  ゴールドウインのザ・ノース・フェイス広報担当は電子メールで、数年前に始まった山ガールブームで女性の登山が定着し、若い男性の間でも人気が高まっていると指摘。消費者の間でアウトドア用の衣料や道具が「日常生活で本当に便利な物だ」ということが広まったことから、その素材や製造技術を街着用に生かした商品を積極的に展開している。

  全国山の日協議会の手塚友恵事務局長は、今後5年の活動計画の一つの柱として、山や自然を利用した児童や青少年の教育を掲げる。「便利な生活に慣れてしまったがゆえに失ってしまった本来の感性を、アウトドアを通じて呼び覚ます」とし、携帯電話やゲームなどでは伸ばしにくい危機管理能力の向上を目指している。今後は文部科学省などに対し、学校教育にアウトドアプログラムも導入するよう働きかける方針だ。

  数年前に登山を始め、今年は日本で2番目に高い北岳(標高3193メートル)に挑戦した小学校教諭の小林礼子さん(33)は、「山頂に立った時の達成感は言葉にならない。自分の自信にもつながる」と述べ、自分の教える児童たちにも登山を勧めたいと考えている。大自然の中ですべて自分の力でやりとげるテント泊に憧れ、今回は寝袋とマットをそろえた。テントや大きなリュックまで購入すると高額になるためハードルが上がると感じている。

ユニクラー

  学生など若い世代にとっては登山用品の値段が高さがネックとなっている。日本人最年少で世界7大陸最高峰を制覇した大学生の南谷真鈴(19)さんは、エベレストや南極点でもファーストリテイリングの衣料ブランド「ユニクロ」の下着やフリース、ダウンジャケットを着用する「ユニクラー」の一人で、同社のサポートを受けている。

  同社の中筋雅彦グループ執行役員はブルームバーグの取材に対し、南谷さんが「ヒートテック」や「ウルトラライトダウン」といった同社の商品が高山でも十分に活躍する機能を備えていることを証明してくれたと文書でコメントした。

marin minamiya

南谷真鈴さん

Source: Uniqlo Co.

  南谷さんは「例えばエベレストを登るとき、ネパールのシェルパたちからユニクロって何と聞かれるだろうけど、ユニクロは手頃だし間違いなく機能的」と話す。手軽に買えるユニクロの商品でも登山できることから、若い人たちの間にも登山が身近になることを期待している。

  南谷さんは、トライアスロンや自然の中を走るトレイルランニングが流行するなどアウトドアの楽しみ方が多様化する一方で、大学の友人などは異性との出会いやゲームに没頭しており若い人が山に少ないとも感じている。「精神的、あるいは物事の考え方という観点からも登山を勧めたい」とし、「より多くの人が外に出て、登山などアウトドアのアクティビティーを楽しんでほしい」と呼び掛けた。

(Fリテイリ中筋氏のコメントを第14段落に入れて更新します.)
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