28兆円の経済対策で日本経済を再生させようという安倍晋三首相の「大胆な」計画には、先人たちがたどった道筋が待ち受ける。1990年のバブル崩壊以来、日本が財政出動で経済対策を打つのはこれで26回目。その効果には疑問符が付く。

  日本は少なくとも1993年以来、毎年補正予算を組んでいる。だが、この追加的な歳出をもってしても6回にわたるリセッション(景気後退)と慢性的なデフレ、債務の膨張と急速な高齢化に見舞われた。日本経済はこれらをいまだ脱却できずにいる。

安倍晋三首相
安倍晋三首相
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg *** Local Caption *** Shinzo Abe

  今回の経済対策について、アナリストの一部からは時間稼ぎにはなるかもしれないとの声が上がっているものの、景気動向を劇的に変えるのに十分だと確信するアナリストはほとんどいない。

  過去の例に倣うなら、当初の発表は市場をにぎわすが、追加的な財政出動が日本経済の根本的な問題解決にほとんど役立たないことが実感されるにつれて成長は急速にしぼんでいく。ゴールドマン・サックスによると、1990年以降25回の経済対策を調査したところ、このうち18回で政府の承認後1カ月以内に金融市場は当初の上げを消していた。

  安倍首相の経済対策に異論を唱える向きは少なくない。元財務官で昨年まで国際通貨基金(IMF)副専務理事を務めた篠原尚之氏は、すでに国内総生産(GDP)の2倍以上に上っている債務をさらに膨らませるのではなく、減少する労働力や保護産業など難しい構造問題への対処により注力するべきだと主張する。

  篠原氏は、日本経済の歴史を見ればこれまで多くの経済対策が繰り返されてきたが、最終的な結果として潜在成長率に大きな影響を与えることはなかったと指摘した。

  今回の経済対策を疑う別の理由もある。発表されたうちのどれだけが経済に伝わる新たな支出、いわゆる「真水」なのかをエコノミストらは知りたがっている。

  元日本銀行理事の早川英男氏によると、今回の経済対策のうち純粋に新たな支出は28兆円という数字が示すよりもはるかに少ない公算が大きい。

  早川氏は日本に財政出動による経済対策は全く必要ないとの見方で、必要なのは生産性の向上と、それによる潜在成長率の引き上げだと指摘する。

  安倍首相は2012年末、経済改革によるデフレ脱却を掲げて政権の座に就いた。そこで日本が安定した経済基盤の回復を成し遂げる象徴として、新たに2%のインフレ目標が設定された。それ以降、日本経済は5四半期でマイナス成長となり、4-6月は急減速したと見込まれる。物価の上昇は止まり、再び下がり始めた。

  7月の参院選圧勝で波に乗る安倍首相は、13年に開始した戦略、つまり極端な金融緩和と財政出動に大きく打って出る構えだ。少なくとも発表当初は、この計画は機能しているようだ。円は下落し、輸出企業の利益は増加、株価は上昇した。だがその後、輝きは失われている。

  バンク・オブ・シンガポールのチーフエコノミスト、リチャード・ジェラム氏は「日本は2010年代の問題に1990年代の処方箋で対処しているように思われる」と述べ、「短期的な需要刺激策で経済に恩恵があるとは実際思わない」と語った。 

原題:Abe’s Fiscal Plan Follows a Long Road of Packages That Failed(抜粋)

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