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中小企業「婚活」助ける日本M&A、後継者不足に商機-株価12倍

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起業から四半世紀、竹内正夫さん(63)が手塩にかけた自社の譲渡を決意したのは59歳のときだ。定年退職が迫る友人の姿に感慨を深めた上、自身のセカンドライフや会社の将来を熟慮した結果、企業の合併・買収(M&A)仲介サービスを行う日本M&Aセンターの扉をたたく。

  竹内氏は35歳で日立製作所を辞め、四畳半のアパートで社員3人、中古のスチール机からソフトウエアの受託開発会社を始めた。約25年の時を経て社員は100人弱、売上高は9億円まで成長したが、後継者の不在に加え、従業員が億単位の自社株を購入することは難しかった。日本M&Aから4社の紹介を受け、40代の社長で顧客が重ならない大阪府の企業への譲渡を決断。契約調印時は「肩の荷が降りるとともに、社員に会えない悲しみも沸き上がった」と言う。

  中小企業の経営者年齢で最も多いのは2015年時点で66歳、20年前の47歳から高齢化が進む。一方で後継者不在や将来的な経営不安など内部的課題、税負担や借入金・債務保証の引き継ぎなど財務的課題から事業承継も難しくなっている。後継者の不在率は売り上げ規模が小さいほど高く、信用調査会社の帝国データバンクの調べで1億円未満は78.2%、1ー10億円未満は68.5%、10ー100億円未満は57.5%。また、東京商工リサーチによると、企業の15年の休廃業・解散件数は2万6699件。09年以降は2万5000件を超す高水準で推移し、倒産件数の3倍に及ぶ。

masao takeuchi

竹内正夫氏

Source: Nihon M&A Center Inc.

  「ニーズは何万社もあるのに、プレイヤーはゼロに近い。仕事は取り放題だ」と、日本M&Aの三宅卓社長(64)はブルームバーグ・ニュースのインタビューで述べた。日本の創業者はこれまで、自身が育てた会社を売却することに抵抗感があったが、「会社を残し、発展させるにはM&Aは当たり前という意識が浸透し、ポジティブに捉えるようになってきた」と分析。経営から退き、「人生を楽しもうという人も増えてきた」と話す。

  日本M&Aは公認会計士や税理士が中心となって1991年4月に設立。会計事務所にコンピュータを販売していた分林保弘会長が中小企業の後継者不足の悩みを聞き発案、以前の部下だった三宅社長を誘った。全国295の地域金融機関や660の会計事務所と連携し、M&A希望者の情報を入手、全国各地でセミナーを開いている。

Suguru Miyake, President of Nihon M&A Center

三宅卓社長

Source: Nihon M&A Center Inc.

  三宅社長は、「われわれの仕事はお見合い業のようなもの。中堅・中小企業のM&Aは事業シナジー効果だけではだめ。企業文化、社会的な価値観が合うかどうかが大事」と言う。鍵となるのは約190人を抱えるコンサルタントの存在で、「頭が良く、MBAを取っていたらできるというのではなく、『ウォームハート』『クールヘッド』が必要」とし、競合他社との違いについて「M&Aプレイヤーの育成に成功した」点を挙げた。

  日本M&A株は06年10月に東証マザーズに上場、07年12月に東証1部銘柄となり、株価はおよそ10年で12倍に成長した。16年3月期の成約件数は420件と前の期から24%増え、17年3月期も連結営業利益で前期比14%高の80億円と7期連続の最高益更新を計画する。4ー6月期の営業利益は前年同期比21%増の22億7700万円と、四半期ベースで上場来最高だった。大和証券は、受注残高は570件と過去最高を更新、第2四半期以降もパイプラインは充実しており、業績の上振れ期待が高まっているとみている。

Nihon M&A Center chart

  英運用会社ベイリー・ギフォードのプラビーン・クマール氏は、「日本の人口問題は大きなネガティブ材料とみられていることを逆手に取り、ビジネス機会として利用した最も良い例」と日本M&Aについて指摘する。これに対し、東海東京調査センターの摩嶋竜生アナリストは「割高感が解消されないとさらなる株価上昇は難しい。人員を増やしており、人件費の圧迫が始まっている」との認識を示した。

  日本企業の海外進出などに伴う案件に対応するため、ことし4月にはシンガポールに初の海外オフィスを開設した。「大手銀行や証券会社が大型の海外M&Aを支援しているが、現場では最初から500ー1000億円の会社を買うというのはごく一部で、まずは10億円ほどで進出したいという希望が多い。そこは誰もやっていない」と三宅社長は抱負を語った。

(7段落に決算に対するアナリスト評価を追記.)
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