今週の債券市場で長期金利は上昇すると予想されている。日本銀行が前週末に発表したリスク資産の買い入れ増額などの追加緩和に失望して相場が急落した影響が残ることに加えて、10年債入札を控えて売り圧力が強まりやすいとの見方が背景にある。

  長期金利の指標となる新発10年物国債利回りについて、ブルームバーグが前週末に市場参加者4人から聞いた今週の予想レンジは、全体でマイナス0.25%~マイナス0.05%となった。前週末は日銀が決定会合で追加緩和を決めたが、市場で期待されていたマイナス金利幅拡大や長期国債買い入れ増額が見送りとなったことを受けて売りが優勢となり、一時マイナス0.17%と6月24日以来の高水準を付けた。

  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「マイナス金利の深掘り観測は残るが、緩和の枠組みも含めて買い入れ額が変化する憶測は生じやすい。上値が重いのは間違いない。10年債入札は利回りが上昇したのでそこそこ需要が出てくるかもしれないが、物価連動債の入札もあり需給的には重い」と話した。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「日銀が追加緩和したにもかかわらず債券は下落した。期待のはく落のほか、緩和策の限界も意識される。声明を見ると次回に効果について検証すると記されている」と指摘。「このまま突き進むのではなく政策方針の転換への思惑も出やすく、ボラティリティが上昇しやすい」との見方を示した。

10年債入札に注目

  財務省が今週実施する国債入札は10年物と10年物価連動債の2本。2日実施の10年債入札は343回債のリオープン発行となり、表面利率は0.1%に据え置かれる見込み。発行予定額は前回と同額の2兆4000億円程度となる。4日の物価連動債入札では発行額が4000億円程度。21回債のリオープン発行となり、表面利率は0.1%となる見込み。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「日銀会合後の相場の急落を受けて、相応にポジションが傷んでいるプレーヤーも多いとみられ、しばらくは立ち直り期間で動きづらい状況になる可能性もある」と指摘。業者サイドもポジションが傷んでいる面もあるとみられ、読みづらい入札になりそう」と話した。

  政府は2日に経済対策を閣議決定する。安倍晋三首相は前週の福岡市での講演で、「財政措置の規模で13兆円、事業規模で28兆円を上回る総合的かつ大胆な経済対策を来週取りまとめたい」と表明した。

  5日には7月の米雇用統計が発表される。ブルームバーグの調査によると、米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比17万5000人増が見込まれている。6月は28万7000人増だった。

予想レンジと相場見通し

  市場参加者の今週の先物中心限月、新発10年物国債利回りの予想レンジと債券相場見通しのコメントは以下の通り。

*T
◎パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長
先物9月物=152円10銭-153円10銭
10年物国債利回り=マイナス0.25%~マイナス0.15%
  「日銀決定はマイナス金利の深掘りは難しいというメッセージになった。今週にかけては外部環境的には債券市場にとって悪くない状況だ。米第2四半期国内総生産(GDP)が1%台成長に鈍化し、9月利上げが困難という見方からドル安・円高が進みやすい。週末の米雇用統計に向けた経済指標についても景気のピークアウト感がみられる結果になる公算が大きい。そういう意味で債券相場は下支えされやすい。売られて安くなったのが買われるかどうかが鍵になる」

◎メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジスト
先物9月物=151円30銭-153円30銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.25%~マイナス0.05%
  「経済対策規模が28兆円から振れるかどうか市中発行額などを見極めたい。真水はあまり出ないと思う。複数年度にわたるのでしょぼくなるのではないか。10年債入札は、日銀の追加緩和期待が続くのであれば普通に通過できる。日銀がこれ以上緩和できないとみられた場合は難しいかもしれない。物価連動債入札は商品市況が戻すのであれば中長期的には買っても良い。日銀は買い入れを増やす余地があり、財務省も買い入れ消却などの政策の選択肢も残っている」

◎岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト
先物9月物=152円20銭-153円00銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.21%~マイナス0.15%
  「実質的には下値模索に近い展開かもしれない。マイナス金利の深掘り観測はなくならないと思うが懐疑的な見方が広がったのは事実。問題は日銀としてもイールドカーブをスティープニングさせたいところがあるかもしれないので、次回会合に向けた検討について、根本的な枠組み変更を検討するのか、先行きの不透明感が強まって上値を買いづらいだろう。米雇用統計も控えている。一方、世界経済は減速。各国の金融緩和姿勢が必要な状況で大幅な金利上昇もない」

◎大和証券の山本徹チーフストラテジスト
先物9月物=152円30銭-153円00銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.22%~マイナス0.15%
  「単純に解釈すれば今回ETFのカードを使ったことで、次回緩和策のメニューはマイナス金利の深堀り、国債買入れの増額が有力。付利金利がマイナス0.2%へと下げられるのであれば、2年債のマイナス0.25%は買える水準。イールドカーブ全体の観点でも買える水準に近づいた。しかし、現行の量・質・金利の3次元の延長線上では捉えない方が良い可能性もある。レジームチェンジが示唆されるからだ。日銀はコンセンサス作りへとシフトしているようであり、今後の情報発信が待たれる」
*T

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE