東京ガスは海上輸送日数の短縮と調達コストを削減するため、複数の欧州企業との間で購入した液化天然ガス(LNG)の受取地を交換するスワップ取引の契約締結に向けた交渉をしている。2017年4月の都市ガス小売りの自由化を控て需要を見通すのが難しくなる中、余剰発生のリスクを回避するためのLNGの転売についても検討している。

  東京ガスの木本憲太郎原料部長が7月27日、ブルームバーグの取材で話した。自由化で競争が激化するため「これまでと同じペースでガス需要が増えていくのは考えがたい」とし、米国などからのLNG輸出の開始で調達に過剰感が出るかどうか「いま見極めているところ」と話した。ただ余剰となった場合でも、売り手との契約で認められている引き取り量の調整や転売で「十分吸収できる規模」との見方を示した。

  同社は現在、年約1400万トンのLNGを調達。神戸製鋼が19年後半に運転を開始する真岡発電所(栃木県真岡市、出力120万キロワット)向けに供給するため、需要はさらに100万トン増える見通し。一方で、都市ガス小売りの自由化で新規参入企業に顧客を奪われる可能性もある。供給面では、米国やオーストラリアの新規LNG事業からの供給が計画通りに始まるかという不確実性も存在している。

  余剰となった米国産LNGを欧州市場に転売する場合、米国の天然ガス価格指標にガスの液化と欧州までの輸送費用などを加えた価格が、欧州の価格を下回っている必要がある。

  7月29日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)のヘンリーハブ先物価格は100万Btu(英国熱量単位)当たり2.876ドル。一方で、インターコンチネンタル取引所(ICE)のナショナル・バランシング・ポイント(NBP)天然ガス先物価格は同4.844ドルと従来に比べて市場間格差は小さくなっている。木本氏は「現在のように欧州価格が低いと、そのまま転売はできない」と指摘する。

  このため、東京ガスは17年に輸出が始まる予定の米メリーランド州のコーブポイント・プロジェクトから出てくるLNGについて、欧州企業が保有するアジア域内のLNGと交換する契約を結び、輸送にかかる日数を短縮してコストを削減することを計画している。

  東京電力フュエル&パワーと中部電力が共同で出資する火力発電用燃料調達会社JERA(ジェラ)がフランス電力公社(EDF)の子会社との間で締結したような、販売数量を自由に調整できる契約で需給を調整するのも「一つのやり方だ」と述べた。

  こうしたLNGの転売やスワップについては、転売を禁じる仕向け地制限条項が足かせとなってきた。国内では公正取引委員会が自由競争が阻害されていないかという観点から予備的な調査を進めており、買い手側も取引条件の柔軟化に向けた交渉を続けている。

  木本氏は、輸出国の港で受け渡すために海上運賃や輸送時の保険料などを含まないFOB契約で調達するLNGについては、「仕向け地自由が当たり前になっていく」と述べ、今後は買い手に課せられた足かせが徐々に外れていくとの見通しを示した。

  東京ガスは安定した国内ガス需要があるため、これまでは主に長期契約でLNGを調達してきた。今後は、柔軟性確保のほか「市場価格とのかい離をなくしていくために、ある一定の数量のスポットなり短期契約なりを入れていくべきだ」との考えを示した。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE