日銀:ETF購入6兆円に拡大、国債購入やマイナス金利据え置き

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  • 金融政策を「虚心坦懐(たんかい)」に総括的に検証-黒田総裁
  • 2%物価目標は変えず、マイナス金利は深掘り可能-黒田総裁

日本銀行は金融政策決定会合で、マイナス金利の導入を決定した1月以来半年ぶりの追加緩和を決め、指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ額を年間6兆円に拡大した。長期国債保有残高の買い入れ増加ペ-スや、0.1%のマイナス金利は据え置いた。

  マネタリーベースが年約80兆円に相当するペースで増えるよう金融市場調節を行う方針や、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も維持した。ETFの買入額は従来年3.3兆円だった。発表を受けて円相場は急上昇し、一時1ドル=102円台を付けた。

  日銀の発表文によると、「次回会合で量的・質的金融緩和とマイナス金利付き量的・質的金融緩和の下での経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行う」こととし、黒田東彦総裁がその準備を執行部に指示した。

  黒田総裁は会合後の記者会見で、2%の物価安定目標実現の約束を変更する考えはないと強調し、政策の総括的検証はその早期実現のために何が必要かという観点から「虚心坦懐(たんかい)」に検討すると述べた。検証の結果に応じて金融政策についても考え、「必要なら措置を取る」と語った。

「限界来ていない」

  同時に量的緩和やマイナス金利が「限界に来たことは全くない」と指摘。マイナス金利の効果は大きく今後より顕著になるとの見方を示し、「まだまだ深掘りしていく余地はあり得る」と語った。政策検証に当たって量的緩和も「非常に重要」で、「軽視するようになるとは思わない」と述べた。ETFに関しても必要があれば買い入れ増額も検討すると語った。

   日銀の金融政策決定会合の結果を受けて金融市場が大きく変動するケースが多いことに関して黒田総裁は、「コミュニケーションに問題があるとは全く思っていない」と述べた。

  この日の会合でETF買い入れ増額に反対したのは、1月会合でマイナス金利に反対票を投じた木内登英、佐藤健裕の両審議委員。1月会合で反対した白井さゆり前審議委員と石田浩二前審議委員の後任の桜井真審議委員と政井貴子審議委員は賛成に回った。

  エコノミスト41人を対象にブルームバーグが15-22日に実施した調査で、今会合で追加緩和を行うとの予想は32人(78%)と圧倒的多数を占め、直前予想としては量的・質的金融緩和が導入された2013年4月会合(100%=対象13人)以降で最も高かった。

早くも次回会合で追加緩和観測

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「日銀としては、政府との政策協調という意味では、できる範囲で誠意を見せた」としながらも、「国債買い入れの拡大は見送りで、緩和度合いとしては物足りない。マーケットは失望するだろう」と指摘した。「日銀はマイナス金利と量的・質的金融緩和の組み合わせの効果に自信がもてないのだろう」とした上で、「次回会合で、さらなる追加緩和をする可能性は高い」とみている。

  麻生太郎財務相は日銀の追加緩和を歓迎する談話を発表。同時に日銀には引き続き、経済・物価情勢を踏まえつつ物価安定の目標実現に向けた努力への期待を表明し、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて日銀と一体となって取り組んでいく姿勢を示した。

  会合では前回に続き量的・質的緩和に対しては木内登英審議委員が反対、マイナス金利には同委員に加え佐藤健裕審議委員が反対した。日銀はETF買い増しのほか、企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置を発表した。企業の海外展開を支援するため、最長4年の米ドル資金を金融機関経由で供給する成長支援資金供給・米ドル特則の総額を240億ドル(約2.5兆円)に倍増するほか、米ドル資金供給オペの担保となる国債の貸付制度を新設する。

「2017年度中」は据え置き

  日銀は同時に発表した展望リポートで、16年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)を4月は0.5%上昇から0.1%上昇に大きく下方修正したが、17年度は1.7%上昇、18年度は1.9%上昇にいずれも据え置いた。「17年度中」としていた物価目標2%達成時期も維持した。

  展望リポートの政策委員大勢の見通し(カッコ内は4月時点の見通し)

CPI実質GDP
16年度0.1%(0.5%)1.0%(1.2%)
17年度1.7%(1.7%)1.3%(0.1%)
18年度1.9%(1.9%)0.9%(1.0%)

 

政府は2%物価目標の実現を期待

  安倍晋三首相は27日、福岡市での講演で、経済対策の規模について財政措置13兆円、事業規模28兆円超とする意向を表明した。政府が与党に示した経済対策案は「日銀とも連携しつつ、金融政策、財政政策、構造改革を総動員してアベノミクスを一層加速する」として、日銀に対して2%の物価目標実現への期待を明記している。

  複数の関係者によると、日銀内で巨額の長期国債を買い続ける現在の量的・質的金融緩和の持続可能性に懸念を示す向きが増えつつあり、政策運営はより慎重に効果とコストを見極めるべき局面に来ているとの見方が広がっていた。

  前日銀理事の門間一夫みずほ総合研究所エグゼグティブエコノミストは11日のインタビューで、マイナス金利拡大も量の拡大も慎重な判断が必要で、もはやバズーカ砲第3弾の「余地はない」と指摘。量は次第に限界に近づいており、そう遠くない時期に長期国債の買い入れペースを落としていくことが「常識的な将来の見通し」だと語った。

木内氏は引き続きテーパリング提案

  木内審議委員は決定会合で引き続き、「マネタリーベースおよび長期国債保有残高が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節および資産買い入れを行う」などの議案を提出したが、反対多数で否決。「資産買い入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続する」との議案も提出したが、1対8で否決された。

  決定会合の「主な意見」は8月8日、「議事要旨」は9月27日に公表する。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。

(黒田総裁の発言を4、5、6段落に追加します.)
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