「ヘリコプターマネー」に財政法の縛り-国債直接引き受けは原則禁止

  • 黒田総裁も繰り返し否定、日銀サイトは悪性インフレの危険性を指摘
  • 法改正の壁は高いがすでに同様の実態先行との見方も

ヘリコプターマネー-。どう解釈するはともかく、日本銀行が物価目標達成のためにより急進的な行動に出るのではないかとの見方もある中で、この言葉に対する市場の感応度が非常に高くなっている。

  ベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が今春に訪米した当時の内閣官房参与、本田悦朗氏と永久国債発行のアイデアを議論。この中で、デフレ克服の最も強力な手段として比喩的に「ヘリコプターマネー」に言及したことが7月中旬に分かると、円相場が急落した。

  一方、日銀の黒田東彦総裁が6月に収録された英BBCラジオの番組で述べた「ヘリコプターマネーは必要性も可能性もない」との発言が7月21日に放送されると、今度は円相場が急上昇した。

どう動くか日銀

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  一般的には、中央銀行が紙幣を刷って政府の財政支出に充てることを指すヘリコプターマネー。実際には歴史的な経緯から法律上の強い縛りがかかっている。日本が米軍の占領下にあった1947年に公布された財政法は第5条で、「 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、また、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」と原則禁止を定めている。

ただし書き

  同5条にはただし書きで、「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」として、例外規定も設けている。現在、日銀がこの規定に基づいて直接引き受けているのは、償還期限が来た国債の借り換えの場合だけ。財務省によると、2016年度は8兆円を引き受ける計画で、前年度の10.4兆円を下回っている。

  黒田総裁は国会答弁などで、ヘリコプターマネーの可能性を一貫して否定。BBCラジオの番組では、「先進国では、基本的に財政政策は政府や議会が決め、金融政策は政府から独立した中央銀行が決定して実行している」と指摘、こうした制度的な枠組みは先進国における中央銀行と財政の関係の歴史から学んだもので、「現段階でこうした枠組みを撤廃するすべきだと思わない」と述べた。

  日銀もウェブサイト「教えて日銀」のQ&Aのコーナーで、国債の引き受けについて「政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがある」と説明。そうなると「国の通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も失われてしまう」と、先進国で禁止されている理由を説明している。

  クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは、日銀はすでに引き受けに似たようなことをやっているので法改正が必要とは思わないと話す。法改正の壁は非常に高く、多くの時間と議論が必要になるし、日本経済がそこまで悪いとは思わないとも指摘している。
 

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